試験時間:120(医学部医学科・総合人間学部のみ140)分 大問数:3(医学部医学科・総合人間学部のみ4)題
京大の英語入試は,大学入学以降の高度な学問を十分に遂行できるための基礎知識や,思考力,論理的な推論力が求められている。複雑な文章で書かれた高度な内容を理解するために,語彙力を高め,確実な構文把握力を身につけておくことが必要である。
英文和訳と英作文(和文英訳)の両方において,逐語訳だけでは自然な文章にならず,意味も正確に伝わらない出題になっている。高度な英語の運用力は言うまでもないが,それに加えて,英作文では問題文の内容を自分の頭の中で正確に解釈し,英文として表現しやすいように再構築できる,日本語の高い理解力が必要である。また,英文和訳の場合は,難解な英文の意味を正確に理解したうえで,英語と日本語の構造の違いを踏まえ,自然な日本語で表現する力が必要である。
| 大問 | 出題領域 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 読解(部分和訳) | 論説:歴史研究における一次資料の重要性(約580語) | 論説:意思決定とあいまいな認識(約530語) | 論説:脳と心の関係(約380語) | 伝記:リンカーンにとっての「書くこと」の意味(約580語) | 論説:社会の共通認識を子に教える重要性(約550語) |
| 第2問 | 読解(部分和訳) | 論説:理系的素養の必要性(約540語) | 論説:教育機会の不平等性(約490語) | 随想:つまようじ―機能と形の融合例(約390語) | 随想:未知の学問領域を研究する喜び(約600語) | 論説:科学・技術教育と社会の関わり(約510語) |
| 第3問 | 英作文(全文英訳) | (1)海外旅行でトラブルに遭遇したら(約160字)(2)いちばんのお気に入りを選ぶ煩わしさ(約180字) | (1)列車と駅での光景(約170字)(2)知能の尺度(約170字) | (1) ユーモアのセンスについて(約160字)(2) 古いピアノの再生(約150字) | (1) 子ども時代の読書体験とその有用性(約140字)(2) うるおいを求めて都会生活から田舎の生活へ(約190字) | (1) 教育における教師の影響力(約180字)(2) 見る者の心が反映された風景(約160字) |
| 第4問 | リスニング | S1. エッセイ:若き外科医師がインドで学んだこと(約330語)S2. レポート:乳幼児の早期教育の問題点(約380語) ※医(医)・総合人間のみ | S1. レポート:生物学研究者の資格制度について(約330語)S2. レポート:中国の発展と水資源問題(約330語)※医(医)・総合人間のみ | S1. レポート:イタリアの石炭火力発電(約290語)S2. レポート:遺伝子治療の現状(約320語) ※医(医)・総合人間のみ | S1. 医師の説明:エアコン無しの酷暑への対処法(約320語)S2. レポート:乳児の2か国語認識(約340語) ※医(医)・総合人間のみ | S1. 議事録:ある町議会の内容(約320語)S2. テレビ放送:スペイン風邪と鳥インフルエンザ(約310語) ※医(医)・総合人間のみ |
読解(部分和訳)と英作文(全文英訳)で構成され,出題形式はここ10年以上ほとんど変化がない。
近年第1問と第2問において,英文の文章量が1000語を超え,訳出量も300語前後になる傾向にある。2011年度は,文章量が約1100語,訳出量が約280語と,ほぼ例年通りの傾向であった。問題文の難易度は,第1問は受験生になじみが薄いテーマだったが抽象度はそれほど高くなく「標準」,第2問は,話の流れはわかりやすかったが,専門用語や英語表現にやや難しいところや,日本語で表現する際に工夫が必要な箇所があるので「やや難」(ただし(3)は易)。2問とも問題文にじっくりと取り組み,下線部だけではなく文の前後の内容を正確に把握したうえで,日本語としてわかりやすい答案を作成する必要があった。
英訳する日本文の量は2010年度とほぼ同じ。(1)は 日本語そのままでは訳しづらく工夫が必要な箇所もあるが,授業などで学習した定型表現を応用できるところできちんと点を取っておきたい。(2)は身近な場面がテーマで取り組みやすいが,日本語の意味を理解するのに悩む箇所もあったかもしれない。(1)(2)とも逐語訳では表現が難しいものがあり,日本語の意味をしっかり読みとり,わかりやすく言い換えて英語で表現する力が必要なのは例年通りであった。
| 大問 | 出題領域 | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 読解(部分和訳) |
標準 |
歴史資料の価値に関する抽象的な英文を,文脈を正確に理解しながら最後まで読み通す力下線部和訳3問。歴史研究における一次資料の価値について述べた論説文。受験生にはなじみが薄い抽象的な内容だが,具体例が多く含まれており,読解のヒントになっただろう。全体の英文の長さは2010年度より50語程度微増したが,訳出量はほぼ変わらなかった。和訳箇所は3箇所とも約30~60語の長い文章で,文構造は例年ほど複雑ではないが日本語に訳しにくい箇所が選ばれており,文の骨組みを見失わず,落ち着いて正確に訳す力が求められていた。また,文脈に合った日本語を用いて多義語を訳すことができるか,という日本語の表現力も必要であった。(1)のfirst-hand reportsは歴史でいう「一次資料(史料)」のたぐいだが,first-handを「直接の」と訳しても構わない。contemporary recordsは「現代の記録」ではなく,第2段落の文脈から「同時代の記録」が正しい。if not impossibleがhave a very hard time「非常に苦労する」に挿入されている文構造に気づけたかどうかがポイント。(2)の冒頭it is impossible not to …は「…しないことはありえない」→「…しないわけにはいかない」という意味。最後のThe consciousness that … は直前のIt is a quite different experience from …の理由を説明しているところで,無生物主語構文に注意して「…ということに気づくと大きな違いが出てくる」などとすると意味がわかりやすい。(3)の第1文the same applies to …「同じことが…にも当てはまる」はしっかり訳したい。第2文のa pack of liesは「うその塊」などとすればよい。their authors might not really have been where they claimed to have beenの部分はmight not have been … で「…にいなかったかもしれない」や,claimの意味など,文脈が理解できていないと訳しにくかっただろう。 |
| 第2問 | 読解(部分和訳) |
やや難 |
単語の辞書的な意味にとらわれずに,文脈に合った柔軟な日本語で表現する力下線部和訳は2010年度に4問に増加したが,2011年度は3問に戻った。内容は,人々の理系科目嫌いや不当な評価についてエピソードを交えながら,理系的素養の現代での必要性を説いているエッセイ的な論説文。訳出量は,2010年度とほぼ変わらなかったが,(1)は74語と多め。和訳箇所の文構造はどれもそれほど難しくないが,専門用語が含まれていたり,random encountersやjoyful contemptなど英語でなんとなく意味が理解できても,日本語で表現するのが難しいものが含まれていたりした。一つひとつの英単語にとらわれず,文脈を理解してそれに合わせた柔軟な日本語で表現する力を身につけておきたい。(1)はまずspend + O + -ingの構文。apparentlyは「明らかに」という意味ではなく,ここでは文脈から「どうも…らしい」という意味。第2文はThese random encounters …の無生物主語構文を自然な日本語に訳せたか。第3文in an almost boastful tone はin a way that …と同格。in a way that … never would のnever の扱いに注意。(2)のas we see it は挿入句。be put forwardは文脈に合わせた訳出に注意。at the expense of …は必修語句。第2文with technical focuses … scienceはfolksの後置修飾。engineering and computer scienceはthe practical side, the really fun stuffはthe interesting sideに対応していることを理解したい。typicallyは「一般的に」,get past … to ~ は「…を通り越して~に到達する」の意。mechanics,electromagnetismは文系受験生にはやや難しい単語かもしれない。(3)は比較的易しい箇所。with high school students performingは付帯状況を表す副詞句。well below …は「…のはるか下」という意味でwellはperformingではなくbelowを強調しているので注意。 |
| 第3問 | 英作文(全文英訳) |
標準 |
基本的な表現の理解と,問題文の内容を解釈し自分の言葉で再構築する力全文英訳2問。英訳する日本文の量は2010年度とほぼ同じ。ポイントは以下の通り。(1)「トラブルはつきものだ」→「何らかのトラブルは避けられない」などと考えるとよい。第2文の「たとえば,悪天候や…珍しいことではない。」は,授業などで学習した定型表現を活用できる部分だろう。「珍しいことではない」はnot unusualやnot uncommonでよい。最後の「いかなる場合でも重要なのは…」は特に一文が長く,そのままでは訳出しにくい。与えられた日本語の意味を考えて,例えば「当該地域についての知識や情報,さらに外国語運用能力を駆使しながら」は「外国語を使って,あなたが今いるところで何が起こっているのか正しく知ろうとする」などと読み換えれば平易な英語で表すことができる。(2)は身近な場面がテーマで取り組みやすいが「悩ましい」「いやしくも」など訳語に悩む箇所や,一文が長いため,日本語の意味を理解して英語の構造を考えるのに悩む箇所もあったかもしれない。 |
| 第4問 | リスニング ※医(医)・総合人間のみ |
やや難 |
長く,高度な内容の放送を最後まで集中して聞き取り,その内容を正確に理解する力Section 1, Section 2 でそれぞれ1つずつ英文が読まれる。どちらのセクションでも内容把握問題が出題され,例年通りSection 1は選択式5問,Section 2は記述式5問であった。Section 1, 2とも350語前後の英文が読まれる,長い放送であった。内容は「若き外科医師がインドで学んだこと」と「乳幼児の早期教育の問題点」。内容を正確に理解するためには,高いリスニング力に加えて,広い分野の知識と単語力が必要。Section1では,設問文も選択肢も問題冊子に印刷されていないので,聞き落としがないよう特に注意が必要。設問の順番は原則本文の展開に沿っているが,Question2や5のように問題文全体から考えるものも含まれていた。 Section 2では,問題用紙に設問文が印刷されていた。英語の完全な文で答える必要はないので,本文の内容を正確に理解すればそれほど難しくないはずだが,(1)(3)のように質問に対して短く答えるのでは不十分で,答え方に苦労する設問もあり,やや難しかった。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと京大特講編集部が推測したものを「標準」とした。
2011年度第1問の「歴史資料の価値」をテーマとした文章や,2010年度第1問の人間の心理をテーマとしたものは,普段あまり目にしない分野であるために,英文へのアプローチが少し難しいと感じるかもしれない。また,第2問はエッセイ的な要素を含む文章で,筆者の言いたいことを理解して,独特の英語表現を読みとる柔軟な読み方が必要で,第1問とは文章の展開が異なっていた。このように,多岐にわたる出題分野や高度な内容に対応できるようになるためには,高1・高2の早いうちから様々な出版社から発行されている「新書」を数多く読み,多分野の基本知識を得るのも有効な手段である。広い視野を持つ学生を京大は求めていると考えられる。
語彙・文法・構文の知識だけではなく,それらの知識を自在に使いこなして英文和訳する力を身につけよう。複雑な文構造を含む長文読解問題に時間をかけて取り組み,文章の意味を一文一文確かめていくことで全体の論旨の理解に到達する,といった丁寧な読み方に徹することが大事である。そして,読解の中で重要だと思った部分や理解しにくかった部分は,頭の中で考えるだけでなく紙に書き,正確かつ自然な日本語に訳せるようになるまで和訳演習を繰り返そう。文構造が複雑な英文を和訳する際には,記号を効果的に使うなど,英文の骨組みを確実に押さえる工夫をするとよい。
まずは基本的な表現力を身につけておくことが肝心である。京大の英作文は,授業で学習するような基本的な語彙,構文,表現の知識で書ける箇所もたくさんある。授業で学習した知識を何度も繰り返し書いて,自分のものにしておくとよい。また,京大の英作文では日本語を逐語訳するのではなく,日本語と英語の構造や発想の違いを認識して,英語にする必要もある。『京大特講「問題文リライト」で攻略する京大英作文』などを利用して問題文の日本語を,英語にしやすい日本語に読み換えてから,英訳する習慣をつけよう。書いた英文を他者に添削してもらうのもよい方法だ。
2分~3分程度の長さのまとまった内容の英文を,意味を追いながら聞く習慣をつけよう。また,自然科学的な内容(特に医学的な内容)が毎年出題されているため,同様のテーマの長文を読むことで,背景知識や関連語句を身につけておくとよい。英語を音で聞いたときに理解するためには,自分でそれらの語を発音できるようになることが一番である。普段から英文や語句を音読するように心がけよう。また,音読することによって単語や語句が自然と身につき,英作文に役立てることもできる。今年は出題されなかったが,数字の聞き取りには注意を払うようにしよう。
※2012年度入試において医学部(医学科)のリスニング問題は行われない
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