試験時間:90分 大問数:4題
京大地理では,豊富な知識と論述力が要求される。知識量が得点に反映するため,教科書レベルの知識・基本統計は正確に覚えておく必要がある。ただし,もちろん論述では,資料の読み取りや事象の仕組み等の説明が必要となる。単なる暗記ではなく,用語は個々の事象の仕組みをしっかり理解したうえで,統計は上位国全体の特徴や,その国が上位となっている要因を把握しながら覚えていく必要がある。
資料を多用しながらそれに関連した説明・論述を求める設問や,事象の仕組みなどを問うものが多い。難問は少ないが,物事を正確かつ多角的に把握していなければ高得点は望めない。また,字数は少ないものが多いため,解答の要点を外さずに字数以内に要約する力が求められる。
| テーマ | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|
| 交通・通信 |
|
○ |
|
|
|
| 国家・国家群 |
|
|
|
|
|
| 地図・地理学史 |
|
|
○ |
|
|
| 地域調査 |
○ |
|
|
|
|
| 自然環境 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
| 環境・エネルギー問題 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
| 人種・民族 |
○ |
○ |
|
○ |
|
| 人口 |
○ |
|
|
○ |
○ |
| 産業の立地・発達 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 産業の国際化,国際分業 |
○ |
|
|
|
○ |
| 村落・都市 |
|
|
○ |
|
|
| 行動空間の拡大 |
○ |
|
|
|
|
| 地域区分と地誌 |
|
|
○ |
|
○ |
| 雑題 |
○ |
○ |
|
○ |
|
| テーマ | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ |
| アジア | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ |
| アフリカ | ○ | ○ | |||
| ヨーロッパ | ○ | ○ | |||
| ロシア連邦と近隣諸国 | ○ | ○ | |||
| アングロアメリカ | ○ | ○ | ○ | ||
| ラテンアメリカ | ○ | ○ | ○ | ||
| オセアニア | ○ | ||||
| 両極地方 | |||||
| 総合 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
※○は1題,◎は2題以上の大問でその分野・地域が問われたことを示す。
直近の3年間は,各大問に必ず図表が出題されており,文章のみによる大問が姿を消した。本年度も,第1問/地形図,第2問/地図とグラフ,第3問/地図とグラフ,第4問/表が用いられており,この傾向は今後も継続すると考えられる。また,図表を読み取るだけでなく,第2問/宿泊旅行と日本の観光では,相違点や類型化についての論述問題があり,分析力も求められている。一方,河岸段丘の特徴,グリーンツーリズムの意義,一人っ子政策の問題点,経済特区の定義,マレーシアの民族,ヒスパニックの分布,オーストラリアの多文化主義など地理用語や基本的知識についての論述も,例年通り重視している。
2006年度・2009年度に続いて,新旧地形図の比較が出題された。本年度は,オーソドックスな河岸段丘の地形的特徴,土地利用とその変化が問われたため,受験生に戸惑いは少なかったと思われる。全体としての難易は昨年並み。京大地理では,地形図の読図が出題されるという前提で準備をする必要がある。その一方で,断面図を作図する問題も見られ,昨年とは違った解答方式の問題が出題されている。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 地形図の読図 |
標準 |
地形図の読図力と論述力が問われた。河岸段丘の新旧地形図の読図にもとづく地形的特徴や土地利用の論述。(1)X側に2つ,Y側に3つの段丘面を示すことと,段丘面の標高を示せるかどうかがポイント。標準。 (2)河岸段丘の特徴を説明する論述問題。(1)の断面図作図が誘導となっているので書きやすい。地理用語(河岸段丘)と特徴(階段状の地形)に触れること。標準。 (3)段丘崖(森林)と上位段丘面(桑畑),下位段丘面(水田)の土地利用を分けて記述する。標準。 (4)変化前(桑畑)と変化後(果樹園や住宅地の拡大)の両方について述べねばならない。標準。 (5)桑畑を養蚕業に結びつけることができるかどうかがカギ。易。 |
| 第2問 | 日本の宿泊旅行と観光 |
やや難 |
統計資料の判読とその特徴を分析する力が問われた。都道府県別の観光統計の判読。グリーンツーリズムの論述。(1)宿泊者の送出地,延べ宿泊者総数と温泉地宿泊者数の図より都道府県名を判定する。延べ宿泊者数で東京,東京に次ぐ外国人宿泊者比率で京都,都道府県内からの宿泊者比率で北海道,温泉地における延べ宿泊者数で静岡,都道府県外からの宿泊者比率で沖縄,までを考えていくことは可能だが,大分・島根・福島の判別が難しい。難。 (2)面積の大小は答えられるが,2つめの要因を答えるのは難しい。難。 (3)(1)で東京・京都を特定することは,さほど困難ではないので,それぞれの都市(首都・古都)の特徴を答えればよい。標準。 (4)グリーンツーリズムは近年の,観光のありようの変化を代表するキーワードであり頻出。標準。グリーンツーリズムが普及してきたのは,観光地と観光客双方にとってメリットのある観光形態であることを示している。地理用語は意味だけではなく,その本質を捉えることができているかどうかがポイント。やや難。 |
| 第3問 | 中国の地誌 |
標準 |
中国地誌に関する幅広い知識が問われた。中国の自然・文化・近年の動向に関する短答・論述問題。(1)畑作地域と稲作地域を分けるチンリン・ホワイ川線は頻出である。易。 (2)ケッペンの気候区の分布がイメージできるかどうか。Cfbは大陸の西岸で,Afは赤道周辺で見られる。易。 (3)5つの自治区を構成する少数民族は,頻出である。チベット族は易。チョワン(壮)族は標準。 (4)乾燥地域(上中流)における一般的な環境問題と,取水量の増加による流量の減少(下流)という黄河固有例の両方を理解できているか。標準。 (5)一人っ子政策の問題点は頻出である。急速な高齢化への懸念についても触れる。標準。 (6)経済特区の都市・地域やその定義については頻出である。標準。 (7)近年の動向についての問題であるが,日系企業の進出など日中関係を理解していれば解答は可能である。やや難。 |
| 第4問 | 世界の生物と人種・民族 |
やや難 |
統計資料の判断力と民族に関する論述力が問われた。言語数と固有種数,国土面積資料の判読と民族に関する論述問題。(1)面積で判断せざるを得ない。面積上位国は7位のインドまで覚えておくこと。やや難。 (2)表中からマレーシアを特定したうえで,その民族構成や民族間の関係について論述せねばならない。100字の論述なのでブミプトラ政策にも言及する。難。 (3)いずれの設問も時事的内容を含んでいるが,京大受験生には必要な知識である。やや難。 (4)ア)ヒスパニックがアフリカ系人口を上回ったこと。問題文から類推が可能である。標準。イ)ヒスパニックの居住地に関する問題。メキシコからの移民が最大であり,南西部に集中していることは書けねばならないが,フロリダやニューヨークでの比率が高いことへの記述は難しい。難。 (5)ア)は解答のポイントが絞りにくく,難しい。難。イ)は白豪主義を廃止し,移民の受け入れとともに多文化主義へと移行したことについて論述する。標準。 |
※「難易度」は,合格者の正答率が5割程度だと京大特講編集部が推測したものを「標準」とした。
京大地理では,まれに難解な知識が出題されることもあるが,基本は教科書レベルの知識。地名・都市名・自然地名・地理用語などは確実におさえておく必要がある。ただし,単なる用語の暗記ではなく,(1)教科書に書いてある理由や仕組みなどは読み飛ばさずに精読し理解する,(2)地図帳と統計集も併用し,位置や順位などを同時に確認しながら学習し,多角的な理解をこころがけることで,論述問題に対応できる力をつけていくことが大事だ。
統計資料問題においても,他の問題同様に知識力と分析力がバランスよく要求される。主要穀物の生産と輸出など,主要な統計は順位を覚えておこう。また,世界のGDP上位10か国を知っていなくては答えられない設問などもあり,世界や日本の全体像も幅広く把握しておく必要がある。分析力をつけるためにも,機械的に順位を暗記するのではなく,上位である理由を,地域の位置や気候,産出する鉱物など,その地域の特徴と関連づけて総合的に理解していくことが重要だ。
京大地理では,数年に一度は地形図が出題される。地形や土地利用,集落立地の関係を中心に読図の練習を積んでおく必要がある。教科書・資料集等に掲載される地形図は必ず精読し,特徴的な地形図については図を見ただけで土地利用がわかるようにしておこう。また,新旧の地形図を見比べて,その変化を読み取る練習をしておくとよい。
京大地理では,最新の時事問題はほとんど問われないものの,人口問題や都市問題,日本と国際社会との関係,民族問題など,社会情勢や社会問題について問われることがある。解答するにあたり社会変化や情勢への関心が有利に働くことは多い。教科書,資料集に掲載されている社会問題の事例については常に注意を払い,新聞やテレビのニュース,ドキュメンタリーなどにも関心をもって,該当地域や内容,影響などについて確認するようにしよう。
京大地理の論述問題は,20字~100字程度まで幅広いものの,多くは40字~60字程度である。字数が少ないだけに,的確な解答を作成する力をつけておきたい。必ず,過去問や 『予想問演習/京大文系』を活用して,要点把握の仕方を会得しておこう。まれに題意がつかみにくい設問もあるが,設問文のほかリード文や前後の設問などにも注意すれば解答を導くことが可能である。また,解答用紙に書く前に,一度簡単に盛り込むべき要素を整理してから解答用紙に記入するとよい。
進研ゼミ東大特講・京大特講による、東京大・京都大をめざす高校生のための情報サイト。合格した先輩の学習法・体験談・メッセージや大学の情報などを掲載中。