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2011年度
入試速報
京都大学
入試問題の分析と対策

前期理系国語

■概要

試験時間:90分 大問数:3題

■京都大学の国語(前期理系)で求められる力

○現代文では、文章の意味を細かい部分まで精確にとらえ、ポイントを押さえた解答を作る力が求められる。

比較的読み取りやすい文章が出題されているが、その大意だけをつかめても点数にはつながりづらい。文章の細かい部分まで精確に読み取り、その問題で求められているポイントを見抜いたうえで、解答を作り出さなくてはならない。解答を作るにあたっては、問題文中の表現をそのままつなぎ合わせるのではなく、文脈を踏まえたうえで、別の表現に言い換えたり自分の言葉で補ったりして、わかりやすい解答を作る必要がある。

○古文では、文法や古語などの基礎的な知識事項が求められる。

理系の古文では、難度の高い補足や言い換えはあまり要求されず、逐語訳に近い現代語訳をする力や文章の状況を説明する力が求められている。そのため、基礎的な古文文法や古今異義語・古文特有語などを確実に覚え、それを解答に的確に盛り込む必要がある。

■最近5年間の出題状況
大問番号 観点 2011 2010 2009 2008 2007
出典名

長田弘『失われた時代』

津島佑子「物語る声を求めて」

柳沼重剛「書き言葉について」

安田雅弘「《演劇的知》について」

清水哲郎「死に直面した状況において希望はどこにあるか」

ジャンル

随筆(現代文)

随筆(現代文)

評論(現代文)

評論(現代文)

評論(現代文)

文字量

2501~3000字

2501~3000字

2001~2500字

1501~2000字

2001~2500字

出典名

林達夫「文章について」

木下是雄「日本語の思考法」

「玩具のシンボル価値」

青柳瑞穂「真偽のむずかしさ」

橋本治『浮上せよと活字は言う』

ジャンル

随筆(現代文)

評論(現代文)

随筆(現代文)

随筆(現代文)

随筆(現代文)

文字量

1501~2000字

1501~2000字

約1500字

1501~2000字

1501~2000字

出典名

村田春海『織錦舎随筆』

『女郎花物語』

『源家長日記』

『唐物語』

『長谷雄草子』

ジャンル

近世作品(擬古文)

仮名草子(古文)

日記(古文)

説話(古文)

物語(古文)

文字量

501~800字

501~800字

251~500字

251~500字

501~800字


■2011年度入試の特徴

○例年通り文理別の出題。大問三で古漢融合文が出題された。

2011年度も文理別の出題であり、現代文2問・古文1問の3大問であった。大問一では、独立した主体が、自由に人生を切り開いていくという近代の論調とは異なる「受け身」の生き方を勧める随筆が出題され、昨年度と同様、文学的な随筆であった。大問二では過去問と同じ出典から出題され、京大頻出の言語論であった。なお、昨年に引き続き漢字は出題されなかった。大問三は近世擬古文からの出題であり、古漢融合文であった。また、和歌の出題はなかった。

■大問別 分析
大問 問題文ジャンル 小問 難易度(※) 内容と求められた力
随筆(現代文) 問題文

標準

京大頻出のテーマで論旨はとらえやすいが、古典的な現代文を読み取る力が求められた。

独立した主体が自由に人生を切り開いていくという近代の意志的な生き方を否定し、「生きなければならないように生きる」というような「受け身」の生き方を勧める文章。宿命的な生を受け入れ、そこに自由を見出すという考えは、京大に頻出の近代文明批判の範疇にある文章と言ってよいだろう。論旨はとらえやすく読みやすい問題文だった。しかし、「自恃」「怯懦」「迂遠」など、新しい出典からの文章ではあまり見かけない語が用いられており、古典的な現代文を読解する豊富な語彙力が必要である。
問一


随筆的な文章から、論理的に解答を構成し直す力が求められた。

設問形式は、全て内容説明であった。漢字の書き取りは出題されなかった。各設問の解答欄は3行~6行となり、2010年度に比べ解答文字量は増えた。例年通り比喩的な表現や具体事例をふまえ、論理的に再構成して解答を組み立てることが求められた。また、それぞれの設問で要求される問題文の範囲を、字数や設問相互の関係も考慮しながら見極めなければならない。設問ごとに解答の「重点」をどこに置くかの判断が必要となる。問一は最初の設問だが、問題文全体の読みが求められた。「手」に身に付いた仕事が自己の存在と深く結びつくことで、「生」を実感するということが表現できていればよい。問二では、「自恃」と「孤独」を言い換えることが求められた。このような言い換えの説明では安易な言葉の置き換えはせず、問題文の内容に沿った的確な表現で解答せねばならない。問三では、「伊東静雄」の「庶民」観をまとめることが求められた。それほど難しくはない設問だが、「販ぐ」を「権力者の思想に迎合する」だけでなく「自ら権力者の思想に加担する」という説明までできていたかで差がついた。問四では、「希望」と「事実」の対比を説明することが求められた。理想主義と現実主義の対立ではなく、自分の個性だけを信じる西洋近代文明の意志的な生き方と日本の伝統的な有限の存在としての諦念に基づく人間の受け身的な生き方の対比として説明する必要があった。




問二

標準

問三

標準

問四

標準

随筆(現代文) 問題文

やや易

対比関係を的確におさえ、どんなテーマの文章でも対応できる力が求められた。

文章について述べた随筆。「書かれた言葉」と「話された言葉」の相違点から、散文における理想について論じている。1600字程度の文章でやや短いが、哲学的な文章で抽象的な表現が多く、対比関係をしっかりと押さえた精確な読解が求められる。理系の受験生にとっては読みづらいテーマだったが、大問一でも頻出のテーマなので対策が必要。また、この問題文は1988年の大問一で出題されたことがある。
問一

標準

過不足なく解答要素を盛り込み、筋の通った解答を作成する力が求められた。

理系第二問は2010年度と同様、設問が3題課せられたが、慣用句は出題されなかった。やや難解な表現をわかりやすく説明する設問や、単なる抜き出しでは対応できない理由説明があり、理系の出題としては容易なものとは言えない。設問の意図をしっかりと読み取ったうえで解答要素を過不足なく盛り込み、日本語として筋の通った表現で解答することが求められる。問一では、傍線部の同段落内から「身体的なもの」を説明することが必要。「わかりやすく」という指示に従って、自分の普段の語彙で具体的に説明することが求められた。問二では、散文が理想的だという内容から、未完成である原稿がその理想にかなっていないことを導くことが求められた。根拠となる問題文の範囲が広く、問三とも読解範囲が重複しており、解答すべき要素をしっかりと見極める必要があった。問三では、問題文全体から「浄化の仕事」とは何であるか、「書かれる言葉」と「話される言葉」の対比関係から「区別させている」という表現の説明をすることが求められた。「書かれる言葉」は、「話される言葉」を前提としながらも、黙読されることを目的とし、抽象的で均一的な文字だけで示される芸術であるという特質を持つことを踏まえて解答できたかで差がついた。



問二

やや難

問三

標準

古文 問題文

やや難

漢文を含む近世擬古文からの出題。地の文(古文)と引用文(漢文)を関係づけて筆者の意見を読み取る力が必要。

2011年度は近世擬古文の随筆『織錦舎随筆』からの出題。2007年度に文系・理系が別の入試問題となって以来、初めて漢文を含む文章が出題された。漢文を含むうえに、近年頻出だった物語・説話系の文章とはジャンルも異なり、やや読みづらい面があったものの、漢文の読解自体は、多く付された注を参照すれば内容をとらえやすいものであった。全体としては、地の文である古文の筆者の意見と、引用された漢文の内容との共通点を整理し、筆者が最も主張したかった点を明らかにすることが求められた。今回のような古漢融合文を読み解くには、地の文である古文をまず正確に読み取り、筆者の論を補完するために引用された漢文を、地の文との関係性を意識しながら解釈する必要がある。なお、漢文はセンター試験で必出なだけでなく、今後も京大入試で出題される可能性があるため、重要語・句法などといった基本事項はしっかりと対策しておきたい。
問一

やや易

知識をもとに問題文を正確に読み取り、解答要素を漏らさず適切に盛り込む精緻な解答力が求められた。

全3問のうち、問一・二が京大頻出の古文の現代語訳の設問、問三が漢文の読解を踏まえて問題文の趣旨を要約する設問であった。例年出題される古文の現代語訳の設問では、2011年度も文法事項や古語がきちんと理解できているかが問われた。ただし、文法事項については、問一での助動詞「べし」(可能)の正確な訳出など基本的なものであったため、さほど苦戦はしなかったはずである。古語については、問一の「よろづ何さま」、問二の「はかなき心やりぐさ」など、やや訳しにくい表現が含まれていた。複数の意味を持つ語や訳しにくい語を適切に訳出するためにも、古語は単純に一問一答式で意味を暗記するだけでなく、その語の持つ中心的な概念をつかんだうえで、文脈に合わせて適切な意味に訳せるようになっておきたい。また、京大古文の現代語訳の特徴として、「ことばを補いながら」という設問条件がある。今回の問二でも、傍線部に書かれた筆者の見解が何についてのものであるかを明らかにするために、「文章を書くことを」などのことばを補う必要があった。日頃から、この文の主語は誰か、どんな語をどこに補えば文の意味がわかりやすくなるかを常に考えながら問題文を読む習慣をつけておこう。今回最も難度が高かったのが、問三の問題文趣旨の要約問題。設問条件にあるように、問題文中に引用された漢文の内容(「伊藤の翁」の意見)を含めて解答する必要があったが、それを筆者の意見とどう結びつけて表現するかがポイント。まずは漢文で書かれた「伊藤の翁」の意見の概要とそれに対する筆者の賛同の意を押さえたうえで、「伊藤の翁」の意見と共通点を持つ筆者の意見を、問題文後半から探してまとめることが求められた。今回の古漢融合文のような引用文を含む問題文の趣旨要約では、地の文と引用部分との関係性、つながりを明らかにして解答をまとめる必要がある。



問二

標準

問三

やや難

※【問題文】過去5年間の同形式問題文の平均と編集部が考えたものを「標準」とした。【設問】編集部が考える模範解答に対して、合格レベルの人であれば半分程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とした。

■合格に向けての対策

○精確な論展開の把握と、明確な解答を作る表現力を身につける。

近年は問題文の内容把握が比較的容易だが、それだけに精確で丁寧な論展開の把握が不可欠となっている。読解力は一朝一夕に身につくものではないため、地道な努力が必要である。さらに、読み取った内容を解答に反映させる練習も必須。問題文全体を視野に入れた上で、どの要素が必要なのか、しっかり選び取り、問題文の構成や対比関係などを解答として表現する力を『京大特講「複眼的思考」で攻略する京大現代文』で養っていこう。

○出題傾向を押さえ、京大頻出のテーマに対する考え方や知識を身につける。

対策を進めるにあたって非常に有効になるのが京大頻出の出題テーマに対する理解だ。過去問の傾向から言えば、「身体論」「芸術・文化論」「哲学・科学論」「知性・教養論」「読書・言語論」などが出題されている。日頃からこれらの文章に多く触れて、その考え方や内容に親しんでおきたい。用語などの基礎知識をつけることもでき、そこで問題提起されていることへの理解もスムーズになり、問題文での説明の省略を補う力も身につく。また、古文であれば、中世の日記や説話、物語などに触れておこう。近世の擬古文も、もちろん対策の必要がある。文章からその当時の常識や、典型的な話のパターンが身につくはずだ。

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