試験時間:1科目の場合90分(教育学部の理系のみ),2科目の場合180分 大問数:3題
例年,長文の問題が出される。何よりもまず,注意深く問題の状況を読みとり,それをイメージすることができるようになることが大切。不十分なら,与えられた図以外に自分で図やグラフを描くことも必要だろう。前の方で出てきた内容がずっと後の方で必要になったり,問題文の後の方に出てくる記述が前の問題のヒントになったりすることがあるので,問題文をしっかりと読破し,前後の関連性を的確に把握することが重要である。
京大の問題は,標準問題から一歩踏み込んだ初見の問題で,長文でその説明がされていることも多い。しかし,長文であることは悪いことではない。丁寧な問題文の中に,解答への道が隠されている。題意に素直に従って,誘導に乗ることが大切だ。また,問題文中に与えられる文字が多いうえ,着実で粘り強い計算力が必要とされることもある。例年よく出題される微小量の計算をはじめとして,近似計算では要点を押さえた式の整理力も必要である。
2007年度以降,試験時間の延長にともなって論述問題や記述問題が増加した。今後も,描図やグラフ作図,論述,導出過程の記述などの比重が大きくなることが考えられる。現象を図やグラフで示したり,論点を押さえた簡潔で的確な論証・表現ができるようにしよう。
| 科目 | 分野 | 小分野 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 物理I | 電気 | 電気と生活 |
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| モーターと発電機 |
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| 交流と電波 |
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| 波 | 波の性質 |
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3 |
3 |
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| 音の伝わり方・音の干渉と共鳴 |
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3 |
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3 |
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| 光の伝わり方・光の回折と干渉 |
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| 物体の運動 | 日常に起こる物体の運動 |
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| 運動の表し方 |
1 |
1,2 |
1 |
1 |
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| 運動の法則 |
1,3 |
1,2 |
1 |
1 |
1 |
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| エネルギー | エネルギーの測り方 |
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| 力学的エネルギー |
1 |
1 |
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1,3 |
1 |
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| 熱と温度 |
3 |
3 |
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|
3 |
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| 電気とエネルギー |
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2 |
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| エネルギーの変換と保存 |
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| 物理II | 力と運動 | 平面上の運動 |
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| 運動量と力積 |
1 |
1 |
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3 |
1 |
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| 円運動と単振動 |
3 |
1,2 |
1 |
1 |
1 |
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| 万有引力による運動 |
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1 |
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| 電気と磁気 | 電荷と電界 |
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2 |
2 |
2 |
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| 電流と磁界 |
2 |
2 |
2 |
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| 電磁誘導 |
2 |
|
2 |
|
2 |
||
| 電磁波 |
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| 物質と原子 | 物質の三態 |
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| 分子の運動と圧力 |
3 |
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3 |
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| 原子と電子 |
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||
| 固体の性質と電子 |
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| 原子と原子核 | 粒子性と波動性 |
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|
3 |
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| 量子論と原子の構造 |
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|
3 |
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| 原子核 |
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| 素粒子と宇宙 |
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※複数の分野を融合させた問題が多い。
| 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 図表の数 |
4 |
8 |
10 |
9 |
5 |
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| 設問 | 穴埋め(語句) |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
| 穴埋め(文字式) |
25 |
28 |
30 |
16 |
25 |
|
| 穴埋め(数値) |
0 |
1 |
0 |
5 |
0 |
|
| 記号選択 |
1 |
2 |
3 |
5 |
5 |
|
| 論述 |
1 |
1 |
0 |
5 |
4 |
|
| 計算問題(記述式) |
4 |
2 |
5 |
1 |
2 |
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| 図示 |
1 |
5 |
2 |
1 |
0 |
※1大問に1~2小問は,記述問題,計算問題,描図問題が出される。
例年通り大問3題で,空所補充に加えて,論述やグラフの描図,式の導出(記述式)などの小問の構成となっており,この出題形式が定着したといえる。また,例年と比較すると空所補充がどの大問でも8小問程度と減少している。また,2011年度は描図が1小問のみとなり,一方で,記述式が増加した。2011年度の題材は,現象をイメージしやすいものが多く,演習問題などでも似た題材を見たことがあるかもしれない。ただ,計算では例年通りの微小量の近似や,煩雑な計算がある。求めた式を,その後の解答でも利用して答えるケースが多く,計算ミスが後へ大きく影響することになる。現象をグラフや図を使って把握し,論理的かつ的確な表現で現象を説明する力と,正確で迅速な計算力が求められた。
例年,高校では学ばない概念や現象を中心に据えた問題で,誘導に従い考察するパターンが多く出されているが,2011年度は2010年度に引き続き,高校で学ぶ現象と関連深く,高校生が現象をイメージしやすいものが出題された。また,現象のイメージはしやすくとも,それをモデル化したうえでこれまで通り深い考察と計算力を必要とするものとなっており,問題文の誘導に従った正確な式の変形を行う必要がある。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 問題I | 力学 (雨水を取るワイパーの運動, 運動の法則,摩擦力, 仕事とエネルギー, 運動量と力積) |
標準 |
フロントガラスのワイパーの動きをモデル化して,それに加わる力と運動を考察する。その際,様々なv-tグラフより,それに必要な力や摩擦力の大きさを分析する。また,水の層がない場合とある場合の違いを考える。水の層がある場合では,集めた水がすべてワイパーの質量の増加となるなど,現実の状況では想像しにくい設定もあるので,問題文での設定を正確に把握し,式へと反映する力が必要である。各問で利用する法則や考え方については,誘導の中でヒントが与えられており,日々の演習でこれらの法則の使い方をマスターしておけば,考え方に戸惑うことはないだろう。学校で学んだ範囲で考察できる内容となっているので,適切に現象や法則を説明する力や,それを使っての正確な計算力が要求されている。 |
| 問題II | 電磁気 (電流が作る磁界と電磁誘導, 電流が受ける力) |
標準 |
直線電流が作る磁界と磁束密度,そして近くにある正方形のコイルの電磁誘導がテーマとなっている。考え方は誘導されており,解答の筋道ははっきりしている。しかし,多くの文字を用いた煩雑な答えとなるので,正確な計算力が要求されている。数学的手法として,微小量の式の近似があるが,その近似を用いると1次関数になることが誘導で与えられているので,考え方として迷うことはないだろう。コイルが移動する設定では,それまでに導出した位置を時間の関数で示すことで解答を得るのだが,逆に,そこまでの途中の計算ミスが最後まで影響してしまうともいえる。教科書で扱う内容を発展させた題材なので,法則や現象を説明できる力を養い,演習で正確な計算力を身につけておきたい。 |
| 問題III | 熱力学 (断熱容器での気体の状態変化, 熱サイクル,ピストンの単振動) |
標準 |
円筒形の断熱容器に閉じこめた気体を,温度制御装置の利用やピストンの移動で定圧変化,定積変化,断熱変化をさせる過程を考察する。また他方に取りつけられた栓には摩擦力がはたらいていると考え,栓が動く条件も考える。これらの組み合わせでできる熱サイクルのp-V図を描いてその熱効率を求めたり,微小量の近似を使い,断熱変化をする過程でのピストンの単振動を導かせる記述形式の問題が出された。問題文の中でははじめの体積が与えられておらず,単に8倍にするなどの表現がとられている。自分で必要な文字を設定して考察を進める必要がある。また,断熱変化でのポアソンの関係式が与えられている。この圧力と体積の関係式を,体積と温度の関係式に変形して利用するなど,日頃からいろいろな演習を通してこの式の使い方や変形に慣れておくことも重要だろう。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと京大特講編集部が推測したものを“標準”とした。
教科書を疎かにしてはいけない。例年,教科書で扱われる現象を基にした発展問題が多く出されている。複雑な設定であっても誘導に従って考察すれば,高校で学んだ法則を適用することで解答にたどり着くことができる。物理量の定義や基本公式を正確に覚え,教科書に書かれている派生的な公式は教科書を見なくても自分で導くことができるようになっておこう。教科書に参考として載っている図や現象についても,自分なりに説明ができるようにしておくことが大切だ。教科書の章末問題や,他の参考書,問題集でつまずいたときは,教科書に戻ろう。基本を深く正確に理解していることが,問題を解くのに最も大切なことだ。基礎が盤石でなければ複雑な問題は解けない。また,微小量などの近似計算にも慣れておこう。
教科書の例題,章末問題を終えたら,標準問題集を1冊仕上げることは必須である。一つひとつの問題を丁寧に解き,別解がないかも考える癖をつけよう。様々な思考法ができることが,京大に特徴的な誘導問題についていく力を養う。また,別解は時間が余ったときの検算にも役立つ。さらに,問題が解けたらそれで終わりにするのではなく,解答結果の意味を考える習慣もつけよう。このことは思考力を身につけ,論述問題の対策にもつながることになる。
2010年度,2011年度は,高校で学ぶ内容と関連深い現象でイメージしやすい問題が出されたが,今後もこの傾向が続くと保証はできない。京大物理の問題に対処するには,長文の題意を正確に読みとり,問題状況を把握する力,そして,粘り強い思考力,計算力がどうしても必要である。標準問題を終えたら,過去問やそれと同等の問題にじっくり取り組んでみよう。『京大特講「現象簡約」で攻略する京大物理』で問題を読み解く「視点」を身につければ,これらの難解な問題を解きほぐす思考力を養うことができる。はじめはかなり時間がかかるかもしれないが,考え抜くことが大切だ。
問題文を読んで,状況を頭の中にイメージするだけでは,まだわかりにくく,間違っていることもある。できるだけ図を描いて考える癖をつけよう。例えば,2011年度の問題IIIの熱サイクルでのp-V図を使った考察はその典型であろう。また,2009年度に出題されたベータトロンの条件式と,磁力線のようすについてなど,関係式と実際のイメージを結びつけることも重要だ。2007年度問題II(イ)などは,コイルと磁石の時刻tでの図を描いてみないとわかりにくいのではないだろうか。関係式を図やグラフに表すことや,逆にグラフから関係式を読みとることにも慣れよう。図やグラフで問題を視覚化することは,グラフ問題の対策だけでなく,問題状況の理解を容易にする。
先にも述べたように,2007年度から試験時間が延び,本格的な論述問題やグラフなどの描図の出題が増加した。どんな問題を解いたときも,答えの意味を考え,なぜそうなるのかを,言葉で表現してみるようにしよう。論述問題や記述問題の模範解答と自分の解答を比べるときは,必要なキーワードや式が入り,筋道の通ったわかりやすい表現になっているか確認しよう。模擬試験を受けたときには,どのようなところで減点されているかチェックするとよい。
京大物理の問題では,数学的には2次方程式を解く問題に帰着することが多く,しかも数学と違って,文字が多いために,複雑な計算になることがある。これはいたしかたない。何が定数として扱われ,何が変数かを見極めて解いていこう。2011年度は微小量の近似を使った問題が出された。2010年度では,Δを使った微小な変化量の計算が出題されている。これら微小量の扱いは物理の理解には必須である。微積を知っていれば現象をイメージしたり見通しを立てるのに有利になることもある。ただし,微小量を使った近似計算を行う場合は,題意に従っていけば式の変形ができるように問題が作られているので,過去問を通してその扱いに慣れておけばよい。なお,記述問題などで微積を駆使した解答をしても,適用に誤りがなければ,もちろんそのことによって減点されることはない。
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