試験時間:(2科目で)180分 大問数:4題
今年度の問題IIは,油層と共存する水層中の弱酸の電離平衡の問題で,あまり見かけない。戸惑いを覚えた者もいるであろう。しかし,問題を丁寧に読むと,空欄I~IIIは化学IIの教科書レベルの典型的な電離平衡の問題であることに気づく。また,空欄ア~エなども問題を注意深く読み,その論理に従って考えれば,簡単に正答できる。すなわち,問題文を注意深く読み,何が問われているのかをつかむ力が求められている。
毎年のように出題されている有機化合物の構造決定の問題では,問題に与えられている情報を整理し,解答を得るためにそれらを論理的に再構築する力が求められる。
化学は類推が効果を発揮する学問である。新しい物質を合成するときにもこの類推が使われる。京都大学の入試問題は,教科書では扱わないものが題材とされることが多いので,この類推・推測する力が必要である。
| 科目 | 分野 | 小分野 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 |
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3,4 |
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※例年,大問は4問で,「有機化合物の構造決定」,「糖類・タンパク質」,「化学平衡」,「その他」という構成で出題されることが多い。
※有機化合物以外は,化学IIからの出題がほとんどである。
※無機化合物の結晶格子・錯イオンの形,有機化合物の異性体など,立体を扱う問題が多い。
| 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | ||
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4180 |
3610 |
2820 |
2920 |
2480 |
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8 |
4 |
6 |
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7 |
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28 |
31 |
32 |
31 |
22 |
※ほぼ毎年,リード文中に空欄があり,問題の論理に従ってその空所を埋めた上で,後の問に答えるという形式である。今年度は,論述問題が増加した。
問題IIIや問題IVは,基本的な知識と問題を読み取る力があれば正答できる基本問題である。しかし,問題Iの格子面に並ぶイオン数を求めるものや問題IIの分配率を考慮しなければならないものなど,十分な注意力を必要とするものも出題された。
ここ数年,合成高分子化合物からの出題はほとんどなく,天然高分子化合物からの出題が目立つが,今年度もその分野から出題された。有機化合物の構造決定も例年通りである。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
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標準 |
アルカリ金属のハロゲン化物を題材に,イオン結晶の結晶格子,へき開面,ハロゲン化水素の発生反応,フッ化水素の水素結合,熱化学方程式とヘスの法則,乱雑さと反応の進行方向,沸点上昇などが総合的に問われている。格子面に位置するイオンの数を求める問題で,立体的な位置関係をイメージできるか否か,単位面積の頂点や辺に位置するイオンの一部が単位面積に含まれることに気づくか否かで,差がついたであろう。 |
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やや難 |
弱酸水溶液のpH,緩衝液のpH,分配率,分配率とpHのグラフ,触媒と反応速度,平衡の移動とルシャトリエの法則についての問題である。京大で例年見られる,問題文の論理に従って考えれば簡単に空所を埋められる設問もあり,弱酸水溶液のpHを求めるなど典型的な設問もあるが,分配率と水溶液の電離平衡を組み合わせた形式には戸惑いもあっただろうと思われる。 |
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標準 |
例年出題されている有機化合物の構造決定の問題である。(a)は分子式がC4H8Oで表される不飽和アルコール,不飽和エーテル,アルデヒド,ケトンの違いの問題で,二重結合への臭素や水素の付加,アルコールの酸化反応,ナトリウムとの反応が問われている。(b)は芳香族エステルの問題で,C8H10がキシレンで, |
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標準 |
タンパク質の変性と塩析,透析,等電点の違いを利用したイオン交換樹脂によるタンパク質の分離についての問題である。変性と塩析の違いを問う問題は,全くの基本問題である。透析は緩衝液を使っているのでやや紛らわしさがあるが,コロイドで学習する内容とほとんど変わらない。タンパク質の分離の問題もタンパク質をアミノ酸に置き換えれば,演習問題でよく見かけるものであり,いずれも基本的なものである。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと京大特講編集部が推測したものを” 標準”とした。
見慣れない題材が扱われることが多いが,教科書の範囲の学習で問題の意図が理解できるように,丁寧な論理展開でリード文が書かれている。したがって,作問者の論理に乗っかって,素直に考えていけば,正答に到達できる。すなわち,相手の話を聞くときも何かの文章を読むときも,常日頃から相手の立場に立って考える習慣をつけることが大切である。
作問者の論理に乗っかるというのは,特に数式の変形では重要である。やみくもに変形しても正答に到達しない。何が要求されているのか,何を求めたいのかを理解したうえで,作問者の論理に従って,数式を変形する必要がある。本年度の問題IIの空欄ウ・エの式の変形はこの力が求められている。式を変形した上で次の問いを解くという形式が多いので,ペースに乗るためにも,式の変形はポイントになる。
教科書の範囲をこえたもの,あまり見かけないものが題材として出題されることが多いので,覚えるだけの学習,暗記に頼った学習では太刀打ちできない。いつも「なぜ?」という疑問を持つようにし,概念を一般化して,知っていることから知らないことが類推できる力を身につけるようにしたい。
見慣れないものが題材として使われることがあっても,問われている内容は教科書の範囲を逸脱するものではない。「求められる力」の項でも述べたように,今年度の問題IIの空欄I~IIIは,典型的な弱酸の電離平衡の問題である。教科書レベルの基本的な概念・法則を確実にマスターしておくことが重要である。
知識量が豊富なほど,より正しく物事が考えられる。例えば,本年度の問題III(a)で,C4H8Oという分子式を見たとき,CnH2nOという一般式で表される化合物が,不飽和のアルコール,エーテル,アルデヒド,ケトンなどであることに気づくかどうかで,正答の可能性がずいぶん違ってくる。まず覚えることを重視したい。
問われている内容は教科書の範囲を逸脱していないとはいえ,見慣れない題材を前にして落ち着きをなくしてしまうことがある。問題の本質が見えてくれば,落ち着いて問題に当たることができる。そのためには,京都大学特有の形式の問題をできるだけ多く演習して,読解力が一段と発揮できるようにしておこう。
今年度の問題I(a)は,立体的な位置関係を頭に描けるかどうかがポイントになる。事前に訓練をしておけば,本番でも,すぐに立体構造をイメージすることができるであろう。結晶格子や有機化合物の異性体の立体配置の問題は例年のように出題されているので,特に対策が必要である。
計算問題は,計算結果のみを解答欄に記入させる形式のものが多い。考え方が正しくて,正しい式がつくれたとしても,計算ミスをすれば部分点すら与えられない。それに,今年度の問題I問2のように,かなり面倒な計算を必要とするものもある。ミスをしない計算力を身につけるようにしよう。
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