試験時間:120分 大問数:3題
比較的読み取りやすい文章が出題されているが、その大意だけをつかめても点数にはつながりづらい。文章の細かい部分まで精確に読み取り、その問題で求められているポイントを見抜いたうえで、解答を作り出さなくてはならない。解答を作るにあたっては、問題文中の表現をそのままつなぎ合わせるのではなく、文脈を踏まえたうえで、別の表現に言い換えたり自分の言葉で補ったりして、わかりやすい解答を作る必要がある。
古文では、基礎的な文法事項や古語などの理解が中心に問われており、そういった部分は確実に正解しなくてはならない。また、問題文の主題やあらすじが読み取れているかも問われる。限られた時間の中で省略された内容や指示語の示す内容などを正確に読み取り、人物関係などを正しく把握したうえで、ポイントを押さえた解答を作り出す必要がある。
| 大問番号 | 観点 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一 | 出典名 |
津島佑子「物語る声を求めて」 |
柳沼重剛「書き言葉について」 |
安田雅弘「《演劇的知》について」 |
清水哲郎「死に直面した状況において希望はどこにあるか」 |
茂木健一郎「「曖昧さ」の芸術」 |
| ジャンル |
随筆(現代文) |
評論(現代文) |
評論(現代文) |
評論(現代文) |
評論(現代文) |
|
| 文字量 |
2501~3000字 |
2001~2500字 |
1501~2000字 |
2001~2500字 |
1501~2000字 |
|
| 二 | 出典名 |
上田閑照「宗教とは何か」 |
南木佳士「天地有情」 |
中島敦「文字禍」 |
中野好夫「多すぎる自己没入型」 |
高見順「わが胸の底のここには」 |
| ジャンル |
随筆(現代文) |
随筆(現代文) |
小説(現代文) |
随筆(現代文) |
小説(現代文) |
|
| 文字量 |
2501~3000字 |
1501~2000字 |
1501~2000字 |
1001~1500字 |
1501~2000字 |
|
| 三 | 出典名 |
『増鏡』 |
鴨長明『発心集』 |
『石清水物語』 |
『冷泉家和歌秘々口伝』 |
正親町町子『松蔭日記』 |
| ジャンル |
歴史物語 |
説話(古文) |
物語(古文) |
評論・歌論(古文) |
近世作品(擬古文除く) |
|
| 文字量 |
501~800字 |
約1000字 |
501~800字 |
501~800字 |
501~800字 |
例年通り、文理別の出題であり、現代文2問・古文1問の3大問であった。第1問では、「口承の物語」の意義と復権を、「近代の文学」との比較の中で主張している随筆が出題され、2009年度の第1問とテーマの共通性が見られた。第2問は京都学派を代表する哲学者の随筆からの出題。設問は5題から4題に減少し、解答行数も3行減少した。なお、現代文において、2009年度まで出題されていた漢字の問題が出題されなかった。第3問は歴史物語からの出題。和歌の現代語訳が出題された。
| 大問 | 問題文ジャンル | 小問 | 難易度(※) | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|---|
| 一 | 随筆(現代文) | 問題文 | 標準 |
平易な内容の問題文だが、筆者の感覚的な表現を的確に読み取る力が求められる。「口承の物語」の意義と復権を、「近代の文学」との比較の中で主張している文章。京都大頻出の言語・表現論であった。筆者の実体験が多く語られ、感覚的な言葉が用いられている点から随筆ともいえるが、内容的には「音読に耐える文章」について言及されていた2009年度の第1問と相通じるものがある。比較的平易な内容の文章なので、何となく分かったような気になりがちであるが、比喩表現や筆者独自の意味を付与し用いられている語句を、的確かつ実感的に理解する力が必要となる。 |
| 問一 | 標準 |
設問要求と説明すべき問題文の範囲を的確につかみ、解答を論理的に構築する力が求められる。設問形式は、すべて内容説明。漢字の書き取りは出題されなかった。説明問題は増えたが、各設問の解答欄は3行~5行となり、例年に比べ解答文字量が減った。設問では「何が問われているのか」を的確につかみ、設問要求に対して解答要素をもれなく書けるかで差がついた。説明問題が増えた分、「問題文の論理展開の、どの範囲までの内容について解答を要求されているのか」を設問を見比べながら、的確に判断することが必要となった。さらに、今年度のような問題文では筆者の感覚的な言葉を論理的にまとめ直す力も求められた。問一、問二では、それぞれ「ヤマンバの話」と「『赤い鳥』系の話」の具体例をまとめるのではなく、それらを一般化して、設問で求められている「口承の文学」や「近代性」を説明する必要があった。さらに「口承の文学」の「声」の豊饒さを称揚し、「論理できれいに整理され」てはいるが「つまらな」い「近代性」を批判している筆者のスタンスを踏まえなければならない。問三では、「口承の文学」は「即興の物語の世界なのだ」ということまでを、「近代の文学」における性質も含めて説明できたかがポイントとなった。問四では、問題文が単なる近代批判ではなく、近代がその学問によって古い「口承文学」を復活させた、という肯定的な側面も持っていることを理解しているかが問われた。文系のみの出題であった問五では、「時間」を用いた比喩表現を正確に理解することが求められた。「風土」、「神話」と「論理」を対比的に捉え、「風土」、「神話」の「想像力」に対応する「論理」の性質もしっかり押さえなければならない。問題文全体を踏まえたうえで、問三の解答と書き分ける必要があるので、やや難しかった。 |
||
| 問二 | 標準 | |||
| 問三 | 標準 | |||
| 問四 | 標準 | |||
| 問五 | やや難 | |||
| 二 | 随筆(現代文) | 問題文 | 標準 |
硬質な随筆において、筆者の考えを客観的に読み取る力が求められる。京都学派を代表する哲学者の随筆が出題された。2009年度の随筆、2008年度の小説に比べると、文学的な素材というよりも評論に近いものであった。内容としては、「人間である」とはどのようなことかという問いから始まり、人との出会いを通して互いに教え学び合いながら人間形成をしていくべきだという筆者自身の考えを、現代の世相も踏まえて述べたもの。論の展開をもとにして、筆者の考えを根底にある思想とともに客観的に読み取る力が求められる問題文であった。 |
| 問一 | 標準 |
筆者の考えについて、的確に解答要素を見つけ説明・要約する力が求められる。第2問の設問数は、2009年度まで5題だったものが4題に減少し、設問内容は4題中3題が「筆者の考え」を問うものだった。設問によっては、どこまでを解答要素として盛り込むべきかを見極めるのが難しいものもあった。問一は、「人間として生きている」ことをどのようなこととして筆者がとらえているのかを、「出会い」の要素を盛り込んでまとめるとよい。問一のように問題文前半に傍線部が引かれている場合でも、京都大の入試では問題文全体を読んで論旨を把握したうえで解答要素を吟味する必要がある。問二は、第三段落にまとめて書かれた「自意識」「自覚」について、「自意識は意識の癌」「目覚め」といった表現をわかりやすく言い換えつつ、二項対立的に解答にまとめる必要がある。比喩をわかりやすく言い換えることが求められている点で、京都大らしい出題と言える。解答要素となる箇所は比較的容易に見つけることができるので、確実に得点をしておきたい。問三は、傍線部内の表現を具体的に説明したり言い換えたりしながら解答をまとめる必要がある。特に、次の3つの要素がポイントとなる。1「外に求める」とは、どこに何を求めるのかを説明する。2「……という問に自分がなっている」を具体的に説明する。3「真に求めていることのリアリティ」をわかりやすく言い換える。問三のように解答欄が広い(=要求字数が多い)設問では、具体的な説明やわかりやすい言い換えを加味しつつ、全体が整合性のとれた内容になるようにまとめ上げる力が必要だ。問四は、傍線部内の指示語(「そのこと」)が指す内容(傍線部直前)に着目してそれをわかりやすく説明する必要がある。さらに、傍線部の後に述べられた筆者の考えまで含めて解答にまとめることが求められており、京都大の最終設問らしい出題と言える。特に、傍線部の後に書かれた「訓練」「基礎的なこと」「現代の生活文明」といった解答要素をもれなく盛り込みつつ、解答欄に収まるように要約・圧縮してまとめられるかで差がつく。 |
||
| 問二 | やや易 | |||
| 問三 | 標準 | |||
| 問四 | やや難 | |||
| 三 | 歴史物語(古文) | 問題文 | 標準 |
読みやすい歴史物語からの出題。前書きや注を生かした読解が必要。今年度は『増鏡』からの出題。歴史物語からの出題は、2002年度前期『大鏡』以来の出題である。和歌が2首含まれているが、前書きや注を参照すれば筋を追いやすい文章である。今回のように人物名が次々と出てくる問題文では、注を参照することが必須である。注で説明されている人物は、重要人物である可能性が高い。また、人間関係が複雑な場合は、相関図を書いて整理しながら読み進めるなどの工夫も必要である。京都大では主語や目的語の省略が多い問題文が出題されるので、必ずそれらを補いながら正確に読み進めよう。わからない箇所を曖昧なまま放置するのでは、正確な読解はできない。 |
| 問一 | 標準 |
文章を正確に読み取り、適語を補った精緻な解答を作る表現力が求められる。全体的に古語や文法など基本事項がきちんと定着しているかがポイントとなってくる出題であったと言える。また、2007年度に文理別の問題に分かれて以降、初めて和歌の現代語訳が出題された。問一の和歌は、倒置以外に修辞が使われておらず、現代語訳もそれほど苦戦はしなかったであろう。ただし、今年度は文理ともに和歌の現代語訳が出題されており、今後も対策はしておきたい。古語は単純に一問一答で意味を覚えるだけではなく、問一の「ふるさと」を状況から「旧都」と訳出できるような、文脈に合わせて適当な意味を選び出す力までつけておきたい。また、問五の「身も流れ出で」から「涙」を連想できるように、古文特有の表現についても知識を蓄えておきたい。京都大古文の現代語訳の特徴として、「適宜ことばを補いながら」などの設問条件が課される。問一のように「『君』は後醍醐天皇を指す」と断っていることも珍しいが、リード文や注などに解答に必要な要素があることもあるので、注意したい。問二の主体や目的語、問三の指示語「さる」など、補うべき内容を前後の文脈から正確に見つける練習を繰り返し、設問要求に沿った解答を作る練習をしておきたい。精緻な解答力を身につけるためには、過去問のいくつかの全文現代語訳を実際に行う訓練を積むとよいだろう。また、問四は、文章全体の内容を把握できているかが問われた。このように、問題文の最後にある表現は起承転結の「結」の役割を担っているので、問われやすい。問三までに問われている問題文の趣旨を踏まえて、解答を作成しよう。 |
||
| 問二 | 標準 | |||
| 問三 | 標準 | |||
| 問四 | 標準 | |||
| 問五 | やや難 |
※【問題文】過去5年間の同分野の問題文の中で平均レベルと京大特講編集部が考えたものを「標準」とする。 【設問】京大特講編集部が考える模範解答に対して、合格レベルであれば半分程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とする。
現代文の説明問題は、傍線部周辺をまとめるだけでは対応できないことが多い。解答を作成するときに、近視眼的になるのではなく、文章全体を考慮した上で、どの内容が必要なのか取捨選択する必要がある。問題を解く際に、すぐに解答に取りかかるのではなく、文章全体の構成や主旨を把握する訓練をしよう。問題文を一定字数で要約することも、その一助となるはずだ。求められているのは、解答の速さではなく、広さや深さ、精確さである。
対策を進めるにあたって非常に有効になるのが京都大頻出の出題テーマに対する理解だ。過去問題の傾向から言えば、「身体論」、「芸術・文化論」、「哲学・科学論」、「知性・教養論」、「読書・言語論」などが出題されている。日ごろからこれらの文章に多く触れて、その考え方や内容に親しんでおきたい。用語などの基礎知識をつけることもできるし、そこで問題提起されていることへの理解もスムーズになり、問題文での説明の省略を補う力も身につく。また、古文であれば、中世の日記や説話、物語などに触れておこう。文章からその当時の常識や、典型的な話のパターンが読解の前提となる知識として身につくはずだ。
進研ゼミ東大特講・京大特講による、東京大・京都大をめざす高校生のための情報サイト。合格した先輩の学習法・体験談・メッセージや大学の情報などを掲載中。