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2010年度
入試速報
京都大学
入試問題の分析と対策

前期理系物理

■概要

試験時間:1科目の場合90分,2科目の場合180分 大問数:3題

■京都大学の物理(前期理系)で求められる力

○問題の状況を把握する読解力。

例年,長文の問題が出題される。何よりもまず,注意深く問題の状況を読み取り,それをイメージすることができるようになることが大切。不十分なら,与えられた図以外に自分で図やグラフを描くことも必要だろう。前の方で出てきた内容がずっと後の方で必要になったり,問題文の後の方に出てくる記述が前の問題のヒントになったりすることがあるので,問題文をしっかりと読み,前後の関連性を的確に把握することが重要である。

○題意に従い論理を組み立てていく構築力。

京大物理の問題は,標準問題から一歩踏み込んだ問題で,長文でその説明がされていることが多い。しかし,長文であることが難度を上げているわけではない。丁寧な問題文の中に,解答への道が隠されている。題意に素直に従って,誘導に乗ることが大切だ。また,問題文中に与えられる文字が多い上,着実で粘り強い計算力が必要とされることもある。微小量の計算をはじめとする近似計算では,要点を押さえて数式を整理する力が必要である。

○論述問題に対処する表現力。

2007年度以降,試験時間の延長にともなって論述問題が増加している。今後も,グラフ作図や描図,論述などの比重がさらに大きくなることが考えられる。現象を図やグラフで示したり,論点を押さえた簡潔で的確な論証・表現ができるようになろう。

■最近5年間の出題状況 出題分野(数字は大問番号)
科目 分野 小分野 2010 2009 2008 2007 2006
物理I 電気 電気と生活






モーターと発電機






交流と電波






波の性質

3

3




音の伝わり方・音の干渉と共鳴

3


3



光の伝わり方・光の回折と干渉






物体の運動 日常に起こる物体の運動





3
運動の表し方

1,2

1

1


1
運動の法則

1,2

1

1

1

2,3
エネルギー エネルギーの測り方





2
力学的エネルギー

1


1,3

1


熱と温度

3



3


電気とエネルギー



2


2
エネルギーの変換と保存






物理II 力と運動 平面上の運動






運動量と力積

1


3

1

1
円運動と単振動

1,2

1

1

1


万有引力による運動



1



電気と磁気 電荷と電界

2

2

2


2
電流と磁界

2

2




電磁誘導


2


2

2
電磁波






物質と原子 物質の三態






分子の運動と圧力




3

1,3
原子と電子






固体の性質と電子






原子と原子核 粒子性と波動性



3



量子論と原子の構造



3



原子核






素粒子と宇宙






※複数の分野を融合させた問題が多い。

■最近5年間の出題状況 問題形式
2010 2009 2008 2007 2006
図表の数

8

10

9

5

3
設問 穴埋め(語句)

0

0

0

1

0
穴埋め(文字式)

28

30

16

25

30
穴埋め(数値)

1

0

5

0

1
記号選択

2

3

5

5

2
論述

1

0

5

4

0
計算問題(記述式)

2

5

1

2

0
図示

5

2

1

0

0

※1大問に1~2小問は,論述問題,計算問題,描図問題が出題される。

■2010年度入試の特徴

○例年通り,空所補充と若干の論述がある構成。描図が増加。

例年通り大問3題の出題で,空所補充に加えて,論述やグラフ作図,描図,式の導出など記述式の解答形式となっており,この形式が定着したといえる。特に,例年と比較するとグラフ作図や描図が増加した。求めた式をその後の解答でも利用するケースが多く,計算ミスが後へ大きく影響することになる。現象をグラフや図を使って把握し,論理的で的確な表現で説明するとともに,正確で迅速な計算力を養う必要がある。

○今年は目新しさの少ない典型的な現象が扱われ,やや易化傾向に。例年通り問題文の誘導に従って柔軟に考察していく思考力は必要。

例年,高校では学ばない概念や現象を扱った問題が出題され,誘導に従い考察するパターンが多いが,今年は,教科書でなじみ深く受験生がイメージをしやすい典型的な現象が出題された。また,例年出題されている微小量の近似を使った式の変形はなかった。しかし,これまで通り深い考察を必要とする問題なので,問題文の誘導を正しく理解して式の変形を行う必要がある。教科書で扱っている現象や法則を自分で説明・導出できるように学習するとともに,現象を問題文の誘導に従って具体的にイメージし,高校での学習内容との関連を想起して考察していく思考力を養うことが必要である。

■2010年度 大問別出題分析
大問 テーマ 難易度 内容と求められた力
問題I 力学(台車上での振り子の運動と衝突,相対運動,重心運動)

標準

台車上に取り付けられた振り子の運動と,小球と台車の衝突による運動が扱われ,台車が固定されている場合と,摩擦なく運動する場合との比較が問われた。(オ)で,台車が動く場合において,台車上から見た振り子の運動が円軌道となることに気づいて相対速度を利用できたかどうかがポイント。相対変位や相対速度など,観測者の立場を工夫して,見慣れた現象へと関連づける考察力(現象簡約の力)が要求されている。問1では,小球と台車が互いに力を及ぼして運動することから,系の重心が動かないことを説明させる。また,問2ではこのことを利用して台車と小球の位置を計算する。いずれも状況の丁寧な説明があり,高校で学んだ内容との関連が想起できるものだが,適切に現象や法則を説明する力が必要である。
問題II 電磁気(周期的に変化する電場や磁場中での荷電粒子の運動)

標準

電場が一定の大きさで向きが時間とともに逆になる場合と,一定の電場とそれに垂直な一定の磁場が交互に加わる場合の荷電粒子の運動を考察する問題。いずれも荷電粒子が受ける力の大きさが一定なので,電場による運動は等加速度直線運動,磁場による運動は等速円運動となり,教科書などでなじみ深いものとなっている。これらの運動での速度や位置を式やグラフで表し,初速度による運動の違いを考察する。考察の仕方は問題で誘導されており,それに従って立式し,グラフを描いていく必要がある。v-tグラフとy-tグラフの関係など力学の基礎的事項をしっかり理解していれば,描図は比較的容易となったであろう。解法の道すじを立てることは難しくないが,状況把握や計算がやや煩雑であり,時間がかかる問題であった。2009年ではサイクロトロン,ベータトロンが出題されたが,いずれにしても荷電粒子の運動では,受ける力によりどのような軌道を描くか,具体的にイメージする力が重要である。
問題III 波動(クント管中での気柱の共鳴,温度と音速の関係)

やや易

閉管で生じる定常波を,軽い粉の分布で可視化するいわゆるクント管を使った気柱の共鳴が扱われた。この管ではふたの位置が固定端であることからそこに節ができ,粉の分布より,粉が集まる位置が腹になっていることを読み取ることが重要となる。この問題ではなぜ軽い粉が集まるのかは問われておらず,単に腹と節の位置を知るために利用されている。また,空気の密度を変位と関連させてΔを用いて考察するが,微小量の近似計算までは必要とされていない。音の定常波でどの位置が腹や節になるかや,節ではその媒質自身は移動しないが,時間とともに密や疎に交互に変化する位置であることなど,自分でその特徴を説明できるように理解していると対応できただろう。後半では,温度を変化させたときの波長の変化から,音速の温度依存の式を考察する。(か)で断面積を自分で設定して密度比を求めたり,(け)でシャルルの法則を用いたりするなど,それぞれの条件下での現象を正確に把握し,誘導に従って考察を深めていく力が問われている。

※「難易度」は,合格者の正答率が6割程度だと京大特講編集部が推測したものを「標準」とした。

■合格に向けての対策

○何度も教科書に戻り,基本を正確に理解しよう。

教科書を疎かにしてはいけない。2010度のように,教科書で扱われる現象を基にした発展問題も出題されている。物理量の定義や基本公式を正確に覚え,教科書に書かれている派生的な公式は教科書を見なくても自分で導くことができるようになろう。教科書に参考として載っている図や現象についても,自分なりに説明ができるようにしておくことが大切だ。教科書の章末問題や,他の参考書,問題集でつまずいたときは,教科書に戻ろう。基本を深く正確に理解していることが,問題を解くのに最も大切なことだ。基礎が磐石でなければ複雑な問題は解けない。また,微小量などの近似計算にも慣れておこう。

○標準問題に取り組み,様々な解法を身につけよう。

教科書の例題,章末問題を終えたら標準問題集を1冊仕上げることは必須である。一つひとつの問題を丁寧に解き,別解がないかも考える癖をつけよう。様々な思考法ができることが,京大物理に特徴的な誘導問題についていく力を養う。また,別解は時間が余ったときの検算にも役立つ。問題が解けたらそれで終わりにするのではなく,解答結果の意味を考える習慣もつけよう。これは思考力をつけ,論述問題の対策にもなる。

○京都大過去問や他大学の長文問題にも取り組み思考力を鍛えよう。

2010年度は,教科書でもなじみ深くイメージをしやすい現象が扱われたが,今後もこの傾向が続くと保証はできない。京大物理の問題に対処するには,長文の題意を正確に読み取り,問題状況を把握する力,そして,粘り強い思考力,計算力がどうしても必要である。標準問題を終えたら,過去問やそれと同等の問題にじっくり取り組んでみよう。はじめはかなり時間がかかるかもしれないが,考え抜くことが大切だ。

○状況を図示し,関係式をグラフに表す習慣をつけよう。

問題文を読んで,状況を頭の中にイメージするだけでは,間違っていることもある。できるだけ図を描いて考える癖をつけよう。例えば,2010年度の問題IIで,荷電粒子が元に戻ってくる初速度は,v-tグラフから求めることもできる。また,2009年度で出題されたベータトロンの条件式と,磁力線のようすについてなど,関係式と実際のイメージを結びつけることが重要だ。また,2007年度問題II(イ)などは,コイルと磁石の時刻tでの図を描いてみないとわかりにくいのではないだろうか。関係式を図やグラフに表すことや,逆にグラフから関係式を読み取ることにも慣れよう。図やグラフで問題を視覚化することは,グラフ問題の対策だけでなく,問題状況の理解を容易にする。

○論述対策について。

2007年度から試験時間が延びたために,本格的な論述問題やグラフ作図,描図の出題が増加している。どんな問題を解いたときも,答えの意味を考え,なぜそうなるのかを,言葉で表現してみるようにしよう。論述問題の模範解答と自分の解答を比べるときは,必要なキーワードや式が入り,筋道の通ったわかりやすい表現になっているか確認しよう。模擬試験を受けたときには,どのようなところで減点されているかをチェックするとよい。

○数学,特に微小量の扱いや近似計算について。

京大物理の問題では,数学と違って文字が多いために,複雑な計算になることがある。これはいたしかたない。何が定数として扱われ,何が変数かを見極めて解いていこう。また,微小な変化量の理解は物理の理解に必須である。2010年度の問題IIIでも,Δ記号を使った問題が出題された。微積を知っていれば現象をイメージしたり見通しを立てるのに有利になることもある。ただし,微小量を使った近似計算を使う場合は,題意に従っていけば式の変形ができるように問題がつくられているので,過去問を通してその扱いに慣れておけばよい。なお,論述問題などで,微積を駆使した解答をしても,適用に誤りがなければ,もちろんそのことによって減点されることはない。

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