試験時間:90分 大問数:4題
京都大入試では,アジア史・欧米史ともに単答記述式が出題され,扱う時代も古代から現代まで幅広い。一部には細かい内容も問われるが,ほぼ教科書レベルの設問が中心である。また,その中で問われる小論述も,素直に事項や背景を説明するものが多い。教科書をしっかり読んで地域別・時代別に基本事項を整理し,各設問に的確に答えるための知識を身につけておくことが必要である。
京都大入試では,長文論述が必ず出題される。テーマはオーソドックスなものが多いので,問題文の意図を正しく読みとり,指定字数内にいかに得点に結びつく要素を盛り込めるかが勝負となる。また出来事の経緯や長期にわたる歴史の流れが問われる問題などが多い。個々の知識を結びつけ,自分の言葉で説明する答案作成力が求められる。
| 地域 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 |
|---|---|---|---|---|---|
| アジア |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| ヨーロッパ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| アメリカ |
|
○ |
○ |
◎ |
○ |
| アフリカ |
|
○ |
○ |
|
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| オセアニア |
|
|
|
○ |
|
| 地域的総合 |
○ |
○ |
○ |
○ |
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| 分野 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 |
|---|---|---|---|---|---|
| 政治史 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| 国際関係史 |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
◎ |
| 社会経済史 |
◎ |
○ |
◎ |
◎ |
◎ |
| 文化史 |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
|
| 雑題 |
|
○ |
◎ |
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※○は1題,◎は2題以上の大問でその地域と分野が問われたことを示す。
例年通り,大問4題で,300字の論述問題と単答型主体の記述問題が2題ずつ出題された。第1問がアジア史に関する論述,第3問が欧米史に関する論述であったのも例年通りである。2008年度・2009年度の第3問の論述問題で見られた指定語句は,2010年度は使用されていない。例年欧米史を主体に出題される第4問の単答型主体の記述問題で,東南アジア現代史が主要なテーマの一つとされたことは,新たな傾向といえる。
第2問で地図を使用するなど,2009年度同様,もしくはそれ以上に地理的な知識が問われている。また東欧・内陸アジア・東南アジアなど,設問で扱われる地域が例年よりも広くなっているのは新傾向。一方で,明代以前の中国史に関する設問は例年に比べ多くはない。2008年度以前と比較すると,ここ2年は中国史に関する出題が総じて減少傾向にある。
| 大問 | 出題地域/分野 | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | アジア (政治史・国際関係史) |
やや難 |
2つの国共合作の背景・経緯を共産党を中心に論述する問題。中華人民共和国建国までの中国共産党の動向が問われている。「中国国民党との関係を含めて」という要求があるので,2回の国共合作について,その目的,成立の背景と経緯,崩壊とそれに続く内戦の動向,などを説明する必要がある。第一次国共合作に関しては,北伐の進行,上海クーデタと国共分裂などについて問われている。第二次国共合作に関しては,日本の中国侵略,内戦と長征,西安事件から盧溝橋事件を経て合作に至る過程などについて正確な知識が求められる。この問題は,国共合作のいきさつについて,「共産党を中心に」正確に記述できるかどうかがポイントとなっている。西安事件など,共産党と関わりの薄い事項は適宜削除することも必要だ。また,共産党結成,第一次国共合作には,コミンテルンが深く関わっていたことにも着目したい。 |
| 第2問 | Aアジア (政治史・国際関係史) Bアジア・ヨーロッパ (政治史・国際関係史) |
Aやや難 A標準 |
西アジアの地理,清朝とロシアの動向が問われた。Aは地図問題を含め,地理的な知識が非常に多く問われている。ティグリス川とユーフラテス川の区別,各々の流域にある主要な都市や遺跡,ナイル川流域の主要都市(特に歴代の首都)など,普段から歴史地図を十分に活用していないと把握しきれないであろう。Bはモンゴル帝国・ロシア・清朝に関する設問が主体であるが,瀋陽・ウラル山脈など,ここでも地理的な知識が求められている。また,シビル=ハン国・クリム=ハン国・ジュンガル部など,モンゴル帝国を継承する国家民族の動向を把握しておく必要がある。 |
| 第3問 | ヨーロッパ (政治史・社会経済史) |
標準 |
市民皆兵,封建制について理解と説明が求められる。古代ギリシア・ローマから西洋中世の軍事制度がテーマ。古代では,市民皆兵の原則,それに伴う平民の政治的権利の向上,平民層の没落・解体による市民皆兵制の崩壊と傭兵制の普及,などについて述べる。「ギリシア・ローマ」としてまとめて特徴づける必要があり,この2つを比較してしまうとまとめきれなくなってしまうので注意したい。中世では,封建制のなかに見られる軍事制度としての特徴を述べる。中世末期には封建制の解体が進み,傭兵制・常備軍制へ移行する兆しがあらわれることを指摘すれば,中世の軍制の変化を説明できる。封建制が,異民族・異教徒に対する防衛を背景として成立したこと,主君による臣下の保護と臣下による主君への軍務と奉仕という相互の軍事的義務を重視した契約に基づいていること,などに着目して解答を作成したい。 |
| 第4問 | Aヨーロッパ (政治史・国際関係史) Bヨーロッパ (国際関係史・社会経済史・文化史) Cアジア (政治史) |
Bやや難 B標準 Bやや難 |
前近代の東ヨーロッパ,近現代の東南アジアが出題された。Aは中世から近世の東方世界に関する設問が中心。スラヴ人は東スラヴ・西スラヴ・南スラヴに分類されるが,各集団の特徴,改宗したキリスト教の宗派の相違,などについて基本的な知識が問われている。Bは近世・近代の西欧史。『デカメロン』の内容,マルサスの『人口論』など,文化史でやや踏み込んだ出題がみられる。Cは東南アジア現代史。地理を学習している受験生には有利な出題だったと思われる。単答の設問はほとんどが基本事項であるが,マレー半島の「錫」は盲点かもしれない。ジュネーヴ休戦協定については,内容とともにその意義・限界なども理解しておきたい。 |
※「難易度」は,合格者の正答率が5割程度だと京大特講編集部が推測したものを「標準」とした。
設問の大半は教科書レベルで対応できるものばかりなので,教科書をしっかり学習し,基本的な知識を正確に身に付けておくことが重要。ただし地域的・時代的に幅広い出題がなされるので,偏りのない学習が不可欠である。また社会経済史・文化史の学習も怠らないようにしよう。
大問2題を占めるアジア史のうち,必ず1題は中国史であり,もう1題も中国史が関連するケースが多い。したがって,中国史を重点的に学習しておくことが高得点獲得の鍵となる。中国の各王朝の政治的な出来事だけでなく,土地制度や税制度などの制度史,社会経済史,周辺異民族・周辺諸国家との関係史など様々な視点からの学習を重ね,どのようなタイプの問題にも対応できるようにしておこう。また中国史には必然的に漢字が伴う。歴史用語を漢字で正しく書けるよう練習することも必要だ。
地域を横断的にみたり,1つの時代に留まらず,通史的に問う問題が長文論述で出題されることが多いが,こういった問題を攻略するためには,地域・時代をこえて広い視点を身につける必要がある。各地域史を学習しおえたら,特にイベリア半島やバルカン半島などの,多民族が存在したり他地域が相互関連しあった地域について,年表などでタテ・ヨコのつながりをまとめなおしておこう。また近年狙われやすい戦後史についても,地域ごとの流れを整理しなおしておこう。また,時事問題への関心や,現代社会など他科目で学習した内容が,問題を解くヒントとなることもある。
地図を用いた出題はもちろん,そうでなくても地理的な知識が求められることが多い。日頃の学習から歴史地図を積極的に活用し,重要な都市や王朝の位置を都度確認するように習慣づけておきたい。東南アジアやアフリカなど学習が後まわしになりがちな地域は,特に注意しよう。
京都大の論述はある事象の展開過程や変遷など,いわゆる「経緯」が問われるケースが多い。そのため,事項をバラバラに記憶していくのではなく,学習の際に,背景や影響にも留意して知識を整理しておくことが重要だ。特に歴史の大きな転換点となった事件・出来事は,時代背景から影響まで説明できるようにしておきたい。
論述問題は毎年出題され,得点差がつくところでもあるので万全な対策が求められる。論述力を身につけるには,やはり自分で書いてみることが大切。まずは頻出テーマについて,100字程度でまとめてみることからはじめ,徐々に字数を増やしていこう。合格答案の作成には,要求されている論述内容(どの程度の深さまで,何を書くか,いくつの用語を盛り込むか)を読み取り,制限時間内にバランスよく文章化する練習が不可欠。京都大過去問はもちろん,筑波大や早稲田大(法)などの似た出題形式・傾向の論述を課す他大学の過去問や,『京大特講予想問演習/京大文系』などで,答案作成力を鍛えよう。
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