試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題
長いリード文をいかに素早く読み解き,その場で思考し,考えたことを論理立てて表現できるか。つまり,読解力・思考力・表現力の3つの力が求められる。
東大化学の最大の特徴は長いリード文である。そのリード文のテーマも環境・エネルギー・新素材から古典的名著や著名な論文まで教科書に載っていないテーマも多い。見たことのない物質や難解な言葉をおそれない心構えが必要である。一見難解に見えるリード文の中に,高校化学の力で解けるしかけが施してある。これを読み取り,高校化学の正確な知識で思考し,答案として発信する力が求められる。『東大特講「類似点発見」で攻略する東大化学』などの演習により,難解に見える問題文から今までに学んできた知識や解法との類似点を見つける訓練をすることが大切である。
| 科目 | 分野 | 小分野 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 化学I | 物質と人間生活 | 化学とその役割 |
|
|
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|
|
| 物質の探究 |
|
2,3 |
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|
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| 物質の構成粒子 | 原子,分子,イオン |
1 |
|
1,2 |
|
1 |
|
| 物質量 |
|
1,2 |
1,2 |
|
1,2 |
||
| 無機物質 | 単体 |
|
2 |
|
2 |
2 |
|
| 化合物 |
2 |
2 |
1,2 |
1,2 |
2 |
||
| 有機化合物 | 炭化水素 |
3 |
|
1 |
3 |
|
|
| 官能基を含む化合物 |
3 |
3 |
3 |
|
2,3 |
||
| 化学反応 | 反応熱 |
2 |
1 |
1 |
1 |
|
|
| 酸・塩基,中和 |
|
3 |
|
1,2 |
|
||
| 酸化と還元 |
2 |
2 |
|
1 |
2 |
||
| 化学II | 物質の構造 | 化学結合 |
1 |
2 |
|
1 |
2 |
| 気体の法則 |
|
1 |
1 |
2 |
|
||
| 液体と固体 |
2 |
3 |
1 |
1 |
1,2 |
||
| 化学平衡 | 反応速度 |
1 |
1 |
|
|
|
|
| 化学平衡 |
1,3 |
1,3 |
2 |
2 |
1 |
||
| 食品と衣料の化学 | 食品 |
|
|
|
|
3 |
|
| 衣料 |
|
|
|
|
2 |
||
| 材料の化学 | プラスチック |
|
|
2,3 |
|
|
|
| 金属,セラミックス |
|
|
|
|
|
||
| 生命の化学 | 生命体を構成する物質 |
|
|
|
3 |
3 |
|
| 生命を維持する化学反応 |
|
1 |
|
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||
| 薬品の化学 | 医薬品 |
|
|
|
|
|
|
| 肥料 |
|
|
|
|
|
※例年,理論化学・無機化学・有機化学とバランスよく出題されている。2011年度は,標準的な題材を使い,複雑な計算問題は減少した。
※第3問Iの天然物の構造決定は,反応結果から,単純に導けず思考を要した。
| 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| リード文の字数 |
3100 |
3000 |
1590 |
2350 |
3000 |
|
| 図表の数 |
7 |
7 |
11 |
5 |
9 |
|
| 設問 | 論述短文 |
|
|
|
|
1 |
| 論述 ~50字 |
3 |
2 |
2 |
|
3 |
|
| 論述 ~100字 |
2 |
4 |
|
2 |
|
|
| 語句記述 |
4 |
3 |
|
|
1 |
|
| 記号選択 |
|
3 |
|
1 |
|
|
| 計算・その他 |
48 |
30 |
27 |
37 |
31 |
※ほぼ毎年,論述問題が出題されている。計算問題は答に至る過程を書かたせり,式の導出もある。
2011年度は全体的に,見慣れた題材が多く,計算問題も煩雑なものが減った。ただし,問題内容はいずれもそれなりの工夫が見え,問題文中の条件を手がかりに,従来の知識で対応可能な設問を見抜く力が重要なのは,2010年度と変わらない。
第1問の理論化学分野は,Iは「電気陰性度と電気双極子モーメント」が題材となり,目新しいが,リード文を読み込めば,さほど難しくはない。IIは「アンモニアの電離平衡と反応速度」が題材であるが,不慣れな式の導出があり差がつく。第2問I「酸化還元滴定」やIIの「電気分解」は,標準的な問題であり,第3問IIの有機化合物の構造決定とともに確実にとりたい。第3問Iの天然物の構造決定は時間内で発想できたかどうか難しいところである。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | I 電気陰性度と電気双極子モーメント |
標準 |
電気双極子モーメントが入試問題の題材になったことは,他大学でも2010年度にあった。題材の新しさに驚くことなく,マリケンの電気陰性度も電気双極子モーメントもリード文を読み込めば,さほど難しくなく,入試での標準的な知識で解ける。この問題は得点したい1題である。 |
| II 電離平衡と反応速度 |
やや難 |
見慣れたアンモニアの電離平衡を題材に,速度定数を導出させる面白い発想の問題である。グラフの読み取りなどよく出るタイプの問題であるが,式の導出にどこまでついて行けるかがポイントである。 |
|
| 第2問 | I カルシウムイオンの定量と酸化還元滴定 |
標準 |
カルシウムイオンの定量をシュウ酸イオンの定量に置き換えていることを見抜けば,後は典型的な酸化還元滴定の標準的な問題である。沈殿洗浄の意味は,実験慣れしていないと解答しにくい設問である。この問題も得点したい1題である。 |
| II イオン交換膜法と電気分解 |
標準 |
水酸化ナトリウムの工業的な製法が題材で,熱化学も融合している。設問内容も溶解度の計算が若干面倒ではあるが,全体的に標準的である。やはり,この問題も得点したい1題である。 |
|
| 第3問 | I 天然化合物の構造決定 |
やや難 |
構造決定としては,例年より難しい。ヨードホルム反応の実験結果からうまく推定できるかどうかが決め手となる。 |
| II 酸無水物の反応と混合物の分離 |
標準 |
必ず得点したい1題である。まずは,この第3問IIから解くことで,精神的にも楽になるはずである。問題文中にある2-メチルペンタン-1,5-ジアミンがどのような構造の物質であるかが,解くうえで必要であり,IUPACの命名法はしっかり身につけておく必要があった。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと東大特講編集部が推測したものを” 標準”とした。
東大の入試問題の特徴である一見難しそうな長いリード文は,実は見抜けば高校化学の基礎的な知識で解けるようになっている。この基礎的な知識をどのように習得するかは,問題演習にかかっている。すなわち,標準的な良問をまんべんなく反復演習することである。問題集の選定は迷うところであるが,一冊これと決めたらじっくり三回は解いて欲しい。このような平素の学習には『エンカレッジ化学』などが優れている。
東大の第1問は,理論化学分野からの出題が中心であり,「気体の性質」「反応速度」「化学平衡」などが中心に出題されてきた。2009年度は「気体の溶解度」「熱化学」,2010年度は「熱化学」「化学平衡」「気体の性質」「反応速度」,2011年度は,「分子の極性」「反応速度」と続いている。「反応速度」は分野としては,2年連続の出題となった。「熱化学」「溶液の性質」「気体の性質」「反応速度」「化学平衡」などを中心に学習し,計算問題にも迅速に対応できるように,平素から電卓を使わず練習して欲しい。また,問題の題材に使われる環境・エネルギーに関する知識(地球温暖化・オゾンホール・メタンハイドレートなど)を,教科書以外の新聞や書物などから得る努力も必要である。
東大の第2問は,無機化学分野からの出題が中心であるが,「酸・塩基」「電池・電気分解」「結晶格子」など理論化学分野と融合した出題が目立つ。2009年度の「陽イオンの分離」と「硫化物の溶解度積」,2010年度の「リチウムイオン電池」もその一例である。2011年度は「酸化還元滴定」と「電気分解」であり,理論化学分野からの出題がメインで,無機各論との融合は次亜塩素酸ナトリウムのみで少なかった。
東大の第3問は,有機化学分野が中心であり,「構造決定」や「実験問題」が主流であったが,高分子化合物を題材に出題されることも考えられるので注意が必要である。構造式も教科書に掲載されていない立体化学の表記まで求められることもある。ただし,表記の説明は,その場で読み取れるかがポイントとなる。2010年度の第3問Iや,2011年度の第3問IIのように,構造決定は,比較的平易であり,得点源にしたいところ。そのためには,過去に何回か題材になっているC4H10Oの異性体など,過去に出題された異性体を集中的に整理しておくべきである。さらに問題を解くときに必要な道具(tool)は,ぜひ整理しておこう。例えば,アルデヒド基の検出には「銀鏡反応」と「フェーリング反応」などの知識を知らずして,入試に臨むのは無謀である。
東大は,化学IIの選択分野である「生活と物質」「生命と物質」のどちらからも題材を使用することを表明している。2009年度の第1問IIのポリエチレンや,第3問Iに出題された6,6-ナイロンは化学Iの教科書の有機化学分野に掲載されており,化学IIの選択分野とは関係なく出題できる。一方,第2問Iに登場した陽イオン交換樹脂は,教科書では「生活と物質」に掲載されている。「生活と物質」は化学Iの有機化学分野には記述のない合成高分子が含まれている。また,2010年度の第1問IIの酵素反応の速度式は,化学IIの教科書の「生命と物質」に簡単な説明があり,学習してきた受験生は,有利だったのではないだろうか。したがって、自分が選択しなかった分野も教科書の知識程度はまんべんなく押さえておきたい。
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