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2011年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期理系国語

■概要

試験時間:100分 大問数:3題

■東京大学の国語(前期理系)で求められる力

○現代文では文章構造を整理しながら論理的に理解する力。

現代文では、現代的な切り口を保有しつつも、普遍的テーマにつながっている評論が出題される傾向がある。抽象的で難解な文章のため、文章構造や論展開を丁寧に押さえつつ具体例などをヒントにしながら、的確に実体をつかむように理解しかみ砕いて表現する力が求められる。

○古典は語彙・文法句法の知識と、文脈把握の基礎力重視。

古文・漢文では、語彙、文法や句法などの知識面での基本事項の正確な理解、訳出は必須。また、主語を整理しながら文脈やあらすじをとらえる力が求められる。決してマニアックな難問ではないが、ただ単に字面を追って逐語訳するだけでは不十分であり、筆者の主張や登場人物の心情に沿って、文脈を考えながら訳す力が求められる。

○設問意図を見抜き、必要なことを端的にまとめる力。

東大では、全体的に「どういうことか」「なぜか」という簡潔な形で問う設問が多い。傍線の範囲を手がかりに「どこを掘り下げて説明することが求められているのか」という出題意図を読み取り、その意図に沿って答案をまとめる必要がある。「わかりやすく説明せよ。」という設問指示は、「この設問に対する解答のポイントを明確にして解答に書き表せ」という意味での「わかりやすく」であり、短くすれば良いというものではない。余分な内容をそぎ落とし、必要な骨格の部分だけを残す力が求められる。そのためには、簡潔にまとめるための語彙力・表現力も必要。

■最近5年間の出題状況
大問番号 観点 2011 2010 2009 2008 2007
第一問 出典名

『風景のなかの環境哲学』
桑子敏雄

『ポスト・プライバシー』
阪本俊生

『白』
原研哉

『反歴史論』
宇野邦一

『読書について』
浅沼圭司

ジャンル

評論

評論

評論

評論

評論

文字量

2501~3000字

2501~3000字

2501~3000字

2501~3000字

3001~3500字

第二問 出典名

『十訓抄』

『古今著聞集』

『うつほ物語』

『古本説話集』

『続古事談』

ジャンル

説話

説話

物語

説話

説話

文字量

501~800字

801~1000字

801~1000字

約1000字

501~800字

第三問 出典名

「放旅雁」
白居易

『玉壺清話』

『梅花無尽蔵』
万里集九

『右台仙館筆記』

『輟耕録』
陶宗儀

ジャンル

漢詩

説話

文章(漢詩含む)

随筆

文章

文字量

141~150字

171~180字

141~150字

281~290字

181~190字


■2011年度入試の特徴

○例年通りの大問構成。第三問で漢詩が出題された。

現代文(評論)/古文/漢文の3大問構成。文理共通の第1問の現代文は、例年通り抽象度の高い硬質な評論であるが、文章の流れはスムーズで理解しやすかった。第1問の(五)では、例年通り100字~120字で記述する設問が出題された。第2問の古文は、有名出典から「説話」「物語」のどちらかが出題される傾向があり、昨年度に引き続き「説話」からの出題となった。ただし、説話そのものではなく、序文からの出題であり、論説文の読解に近い。第3問は、漢詩のみの出題。内容は明快で読み取りやすい。解答欄は例年通り設問に対して狭く、必要なことを端的に答える力を問う東大らしいものとなっていた。

■今年度 大問別出題分析
大問 問題文ジャンル 小問 難易度 内容と求められた力
第一問 評論 問題文

標準

抽象度の高い問題文から、情景・状況・筆者の考えを正確にとらえる力。

東京工業大大学院教授である桑子敏雄氏の著書『風景のなかの環境哲学』からの出題。東大第一問の問題文は例年、“人間の行為そのもののあり方や行為にまつわる営みについて述べられているもの”と“人間の精神面について考察されているもの”に大別できる。行為については、「文化」や「歴史」と書く行為、「芸術」と創作行為が絡められるなど、様々なテーマと関連させた出題がなされる。2011年度は、人間と風景の空間的・時間的関わりを踏まえて、「河川を活かした都市の再構築」をする際に意識すべき行為について述べられており、入試頻出のテーマである環境論と身体論とを絡めた文章であった。文章の流れはスムーズで理解しやすいが、ある程度の抽象度を有しており、論旨の核となるキーワードである「河川空間」「風景」「概念化」「時間意識」「履歴」が何を表しているのかを正確に押さえ、問題文に述べられた情景や状況、筆者の考えを適切にイメージしてとらえられるかがポイントとなった。
(一)

標準

解答作成時の問題参照範囲を見極め、適切な語彙で解答を構築する力。

(一)~(四)で「どういうことか」が問われる内容説明問題、または「なぜか」が問われる理由説明問題、(五)で100~120字の論旨を踏まえた記述説明問題、(六)で漢字が出題されるという例年通りの出題構成。問題文は比較的読みやすく、着眼すべき箇所も見つけやすいが、解答をまとめようとすると語彙力や要約力といった記述力を要する設問である点でも、近年の傾向と一致している。2011年度は、解答すべき要素の判断に迷うという点で、(二)(四)の難度が高く、戸惑った生徒もいたと思われる。(一)は、第三段落で傍線部の具体的内容が説明されている。(二)は「置換」という表現が何を指しているかを理解できるかがポイントとなる。傍線部の説明だけでなく、それによって第八段落の“創造性を失う”という結果まで解答に含めるかの見極めが難しい。(三)は傍線部付近に解答要素がまとまっているので、指示語の内容がつかめれば、比較的易しかったと思われる。(四)(五)は第十三段落がそれ以前の段落のまとめとなっているため、読み取りの範囲として重複しており、解答の書きわけが難しいが、(四)では第十一・十二段落の“蓄積された固有の履歴を共有することで、風景が形成される”ということを核としてまとめる。(五)は、傍線部を含む段落を中心にまとめながら、(一)~(四)の解答の内容を踏まえて解答を作成するとよい。いずれの設問も、東大特有の狭い解答欄に収めるため、必要な解答要素の吟味や、適切な語彙を用いて端的にまとめる要約力が重要である。






(二)

やや難

(三)

やや易

(四)

やや難

(五)

標準

(六)

標準

第二問 説話 問題文

やや難

論の展開を丁寧に読み取り、筆者の主張をとらえる力。

入試頻出作品である鎌倉時代中期の説話集『十訓抄』からの出題。2010年度も同時代の説話集『古今著聞集』から出題されていたが、今年は説話そのものではなく序文からの出題となった。そのため、あらすじをつかむというよりは論説文の読解に近く、論の展開を正確に読みとり、筆者の主張をとらえることが求められた。主体となる人物がわかりづらい箇所があり、丁寧な読みとりが必要である。例年より序文や注の量は少ないが、読解・解答上の重要な手掛かりになることは変わらないので、注意を払うことが大切である。
(一)ア


問題文の全体像をとらえたうえで各設問で求められる解答要素を的確に補い、解答を簡潔にまとめる力。

設問が現代語訳と説明問題で構成されているのは例年通りである。各設問の要求に応じるためには、細かい古語・文法事項まで漏らさず解答に盛り込み、さらに傍線部前後の文脈から解答要素として必要な内容を補うことが求められる。(一)は、「随ふ」「忠」「機嫌」「はばかる」などを文脈から適切な現代語に訳すことが求められた。イは、人物関係を明確にして主体に気を配りながら訳出できるかどうかで差がつく。(二)は、「ものを(終助詞)」を文法的に正確に訳しつつ、「よく」「思いあはす」などを文脈から適切に訳すことが必要。(三)は、「このこと」の指示内容を正確に読みとり、いかに簡略にまとめるかの表現力が問われた。全体として問われている内容は複雑でないが、必要な解答要素を見抜き適切な語を補い、表現を工夫し簡潔な解答を作るという点で、例年通りの力が試される出題である。





(一)イ

やや難

(一)オ

標準

(二)

標準

(三)

やや易

第三問 漢詩 問題文

標準

意味を類推する語彙力をもとに、場面展開をつかんで、全体の内容を把握する力。

文字数は詩題まで含めて149字で、昨年より27字減少した。2009年度に漢文と漢詩の融合問題の形式の出題があったが、漢詩のみの出題は2006年度以降初めてであった。20句から構成された今回の七言古詩は、詩題が明示され、字数が費やされている分、内容把握に関しては、読みやすく、昨年度並みのレベルであった。例年通り、基本的な語彙の知識や重要な句法の知識を前提として、漢字一字の意味を身近な熟語の知識から類推し、文章全体の内容をつかむ力を試される、東大らしい出題であった。
(一)

標準

語彙・句法の知識力、文脈に適した現代語で表現する解答力。

(一)では「之」、(三)(四)では「汝」の内容を正確につかんだうえで、文脈から適切に訳す力が求められた。(二)の「客」は「お客」の意味ではなく「旅人」の意味。「旅雁」の「旅」からも判断できる。(三)の「贖」は「あがなヒ」という読み仮名から「購う=購入=買い取る」という意味を導き出したい。漢字の意味を熟語などから推測して意味をとらえる力が必要である。また(二)では、異郷の地にある「旅雁」と左遷させられた「我が身」が、「旅人」として同じ境遇であることをふまえ、次の句の「傷ましむ」を白居易の心情として読みとったうえで解答に盛り込むことが重要である。解答要素を簡潔にまとめる力が求められる。(四)では、再読文字「将」の知識を前提として、何が「旅雁」の身に「及ぶ」のかを、前後の句の内容を踏まえて具体的に説明する力が必要であった。いずれの設問も、一句一句の内容、句と句との内容のつながり、場面ごとの内容把握という観点から傍線部の内容を表現させる問題であり、オーソドックスな東大らしい読解問題と言える。




(二)

やや難

(三)

標準

(四)

標準

※【問題文】過去5年間の同形式問題文の平均と編集部が考えたものを「標準」とした。
※【設問】編集部が考える模範解答に対して、合格レベルの人であれば半分程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とした。

■合格に向けての対策

○解答の骨子を見極め、解答欄内にまとめる力の養成を。

東大では、「どういうことか」「なぜか」という問いに対して、設問の意図を見抜き、解答の骨子を見極め、解答欄内に収まるように端的に答えることが求められる。そういった設問の対策には、文章の要約やセンター試験の設問に記述で答える練習が有効である。ただし、漫然とそれらを解くだけでは効果が低い。設問の意図を考え、書くべき要素を洗い出し、そのうえで解答の構成を考え、推敲しながら書くというステップを踏んで解いていくと、効果が高く、力がつく。内容説明問題、理由説明問題ともに、曖昧な点を残さないように繰り返し「どういうことか」「なぜか」と自己発問することが必要だ。解答を推敲する際は、主述のねじれ、因果関係のねじれ、文末の処理の仕方などに注意して、日本語としておかしくないかを確認しよう。

○現代文では、自己発問&構造化で読む訓練を。

現代文では、基本的な読解力、記述力を大前提として、さらに深い読解力・語彙力の有無が最終的な勝敗を分ける。これらの力を深めるには、優れた評論での読解演習を数多く行うことが有益である。そこで重要なのが、文章中に抽象的な語や筆者独特の言い回しや表現が出てくる度に、「これはどういうことか?」と自分の中で問いを立て、考える習慣を身につけること。『東大特講「自己発問」で攻略する東大現代文』に取り組んで、問題文の内容を確実につかむ方法を習得しよう。「概念」や「表象」など、評論に頻出の抽象語を自分の言葉で説明する訓練を重ねることも言葉の意味を考えるうえで効果的だ。これによってその語句や表現を自分のものにし、深く読み取ることができるようになっていく。また、評論を読む際は文章の内容を図式化するなどして、文章構造を整理しながら読み進めよう。

○古典では、大意を読み取る力と徹底的な基礎力の養成を。

古文・漢文では、正確に文脈をつかむ練習をしよう。主語を補い、「誰が」「どうした」のつながりをたどりながら読み進めていくことを習慣づけたい。基礎的なことだが、東大ではまさにこの力が求められている。基本的な文法・句法事項や古語や漢語の知識は重要だが、東大が求める解答をつくるためには、古文単語や漢文句法を丸暗記するのではなく、問題文の中でどのように使われているかを考えながら覚え、文脈に応じて訳出を工夫できるようにしておくことが重要である。

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