試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題
東大では,一見はじめて見るような問題設定が多いが,必要となる知識は典型問題のそれと全く変わらない。よって基本法則や基本的な典型問題の解法の十分な理解が最も大切である。また,問題設定の本質を把握して,自分の知っている典型問題,あるいはその融合問題に置き換えていく力が求められる。
パターン問題の解法をそのまま使うだけでなく,それらをアレンジして解法を組み立てたり,独自に自分の力で論理的な解答を構築する力が必要となる。問題を解くことだけを目標とするより,現象の分析や考察を通して洞察力を身につけていく必要がある。また東大理科では,解答用紙に途中の考え方などを記述するために,論理をわかりやすく,かつ簡潔に表現する記述力も求められる。「論理的な飛躍・抜けがない」ことと「簡潔にまとまっている」ことを満たさなければならないので,普段から「いま考えている自然現象の本質は何か」を常に意識し,客観的に表現していく学習姿勢が求められる。
近年,易化が進んでおり,大問単位で典型問題そのものが出題されるケースも見られるようになった。典型問題は確実に見抜いて,素早く正確に解答するようにしたい。
| 科目 | 分野 | 小分野 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 物理I | 電気 | 電気と生活 |
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| モーターと発電機 |
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| 交流と電波 |
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| 波 | いろいろな波 |
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3 |
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| 音の伝わり方・音の干渉と共鳴 |
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3 |
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| 光の伝わり方・光の回折と干渉 |
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| 物体の運動 | 日常に起こる物体の運動 |
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| 運動の表し方 |
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1 |
1,2 |
1,3 |
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| 運動の法則 |
1,3 |
1 |
1,2,3 |
1 |
1 |
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| エネルギー | エネルギーの測り方 |
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1 |
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| 力学的エネルギー |
1 |
1 |
1,2 |
1 |
1 |
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| 熱と温度 |
3 |
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3 |
3 |
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| 電気とエネルギー |
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| エネルギーの変換と保存 |
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| 物理II | 力と運動 | 平面上の運動 |
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| 運動量と力積 |
1 |
1 |
1 |
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| 円運動と単振動 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
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| 万有引力による運動 |
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| 電気と磁気 | 電荷と電界 |
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2 |
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| 電流による磁界 |
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2 |
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| 電磁誘導 |
2 |
2 |
2 |
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2 |
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| 電磁波 |
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| 物質と原子 | 物質の三態 |
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3 |
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| 分子の運動と圧力 |
3 |
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3 |
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| 原子と電子 |
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| 固体の性質と電子 |
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| 原子と原子核 | 粒子性と波動性 |
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| 量子論と原子の構造 |
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| 原子核 |
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| 素粒子と宇宙 |
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※例年3題で,力学と電磁気は毎年出題されている。旧課程でも原子分野の出題は少なかった。
※複数の分野を融合させた問題が多い。
| 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 図表の数 |
7 |
3 |
6 |
7 |
9 |
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| 設問 | 記号選択,選択 |
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1 |
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2 |
| 論述 |
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1 |
2 |
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2 |
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| 選択+論述 |
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1 |
1 |
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| 計算問題(文字式) |
19 |
12 |
17 |
16 |
12 |
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| 計算問題(数値) |
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4 |
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1 |
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| 図示 |
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2 |
2 |
1 |
昨年は3大問とも典型問題が出題され特異であった。難易度のレベルとしては2009年度までのレベルに戻ったと言える。しかし,2009年度までとは難易の質が変わっていて,受験生にはより難しく見えたかも知れない。過去の東大の物理の問題は,設定は単純であるが,設問の視点に特徴があったり,設問の意味が深かったりするものが多かった。しかし,2011年度の問題は3大問とも設定が複雑であるが,設問の要求は依然として典型的である。
設定は複雑でも,設問に沿って解いていけば,特別な知識や能力は要求されていないことがわかる。物理の知識としては,教科書の内容で十分であり,難しい計算も必要ない。実験装置の複雑さに惑わされずに,物理の問題としての本質を読み取って基本法則を適用すれば,すべての設問の要求に応えることができる。このような問題のつくりは,従来からの東大の問題に共通の特徴である。また,各問題の前半は基本的であるが,最後によく考えさせる設問が用意されている点も東大らしい。
もちろん教科書レベルの知識は前提である。その上で,東大の物理の問題を解くのに必要な能力は,大学レベルの知識や高度な計算力ではなく,問題を精確に読み,状況を分析し,設問の要求に対して論理的に思考を積み上げていく力である。論理的思考力と言うと難しく聞こえるが,要するに,基礎となる前提から順序立てて論じていくという,科学(学問)にとって当然の姿勢である。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 力学 (棒で接続された2物体の運動) |
標準 |
Iにおいて,物体Aが壁から離れるまでは物体Bの円運動について調べればよく,テーマとしては昨年の第1問と重なっている。物体Aが壁から離れる条件を判断するには,棒からの力も含めて,物体Aに作用する力を分析することになる。質量が無視できる棒は,糸と同じように,その延びる方向にしか力を作用しないが,糸と異なり,棒の場合は押すこともできる。これは符号で区別できるので,場合分けなどは必要ない。物体Aが壁から離れた後は,物体Aと物体Bの運動量保存の法則(水平方向)と,力学的エネルギー保存の法則を連立して調べることになる。物体Bと床との衝突においても力学的エネルギーの損失はないので,この衝突を挟んでも力学的エネルギーは保存される。なお,本格的な2体問題は1997年度以来の出題である。IIでは,静止摩擦力の限界について調べることになり,いわば典型問題である。本問では,Iの(6)がクライマックスになる。 |
| 第2問 | 電磁気学 (コンデンサーとダイオードを含む回路, コッククロフト・ウォルトン回路) |
標準 |
聞き慣れない人名のついた回路が登場するが,もちろん,その回路についての知識が要求されるわけではない。また,ダイオードについても,扱い方は問題に書いてあり,その指示に従うだけである。Iは,ダイオードについて冷静に指示通りに扱うことができれば,設問はいずれも基本的であり,問われている内容も本質的には典型的なコンデンサー回路についての処方通りに解決する。IIは,設定が複雑になり,急にレベルが上がっているが,問題文を精読し状況が分析できれば,決して難しくはない。いずれ電荷の移動は止まることが説明されているので,それを前提に論じればよい。そうすると,一番右下のコンデンサーは電圧V0に,他のコンデンサーはすべて2V0に充電されていることがわかる。ダイオードはスイッチが開いた状態にあると電位が連続的につながっていないので,問われている電位は,それぞれ縦に並んだコンデンサーをたどって求めることになる。ダイオードという現行課程入試では珍しい素材ではあるが,内容を理解すれば計算らしい計算をしなくても答えられるのは,東大では珍しい。 |
| 第3問 | 熱力学 (液体を載せたピストンで封入された 気体の状態変化) |
やや易 |
Iは定圧変化をテーマとした基本的な問題である。IIでは,液体の高さが変化することにより気体の変化が定圧変化ではなくなる。このことにノーヒントで気づくのは難しいが,問題文で示唆されている。しかし,どのように圧力が変化するのかを調べるには,さらにハードルがある。力のつりあいで考えると,容器の段差の部分に乗った液体を排除して考える必要があるが,液体の圧力に注目すれば,より明確であろう。液体の上は真空であり液体の蒸気圧も考える必要がないので,液体の最上部の圧力は0である。したがって,液体内部の圧力は液面からの深さに比例し,具体的に求めるには,I(1)で求めた液体の密度を使うことができる。気体の圧力をxの関数として求めることができれば,気体の状態変化については典型的な熱力学の問題である。(4)では,ピストンが一気に上昇する点については,熱量が0になる条件からXを求めることができる。ここでいう熱量とは,その瞬間の微小変化に必要な熱量であるから,変化のはじめから気体が吸収した熱量をxの関数として求めれば,それが極大となる条件を求めることになる。なお,液体を使った問題は最近では2002年度にも出題されている。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと東大特講編集部が推測したものを“標準”とした。
典型的なパターン問題は,そのままの形で出題されることは少ない。多くの典型問題に当たって基本法則に対して十分な理解をすることは大事であるが,過去問や問題集の良問を時間をかけてゆっくり分析することも非常に効果的である。単に問題に解答するだけでなく,問題の前提条件を考えたり,別解を考察したり,別の角度から見直したりすることにより,深い物理的考察力が養われる。消化不良のまま多くの問題に当たるより,少しの問題でもじっくり取り組むことが大切だ。
はじめて見るような問題に対して,数式や公式だけでそれを解決しようとしてもなかなかうまくいかない。まずは「この問題設定・条件ならばこの後どんな現象が起こるだろうか」ということを定性的に正しくシミュレートできるようになっておく必要がある。これによって,解答のおおまかな道筋を自分で立てることができるようになり,また計算ミス等によって論理上ありえない解を導いてしまったときも,そのミスにすばやく気づくことができる。この力を養うには,普段から身のまわりの物理現象を注意深く観察し,またそれらを意識しながら典型問題を多く解くことなどが効果的である。
東大理科では一見とても複雑な問題に見えても,基本となっている法則や解法のパターンは典型問題のそれと変わらないことがほとんどである。典型問題を多く解くことによって個々の典型的な解法のパターンをしっかりと理解・記憶し,使いこなせるようになったら,今度はそれらを複雑な問題を解くために組み立てていく(逆にいえば,複雑な問題を個々の簡単な問題に分解・翻訳していく),すなわち『東大特講「原理帰着」で攻略する東大物理講座』でいうところの「原理帰着」の練習が必要となる。どのような複雑な対象に出合ったときも,まず「この現象の基本となっている法則はなんだろう」と考えてみる癖をつけておきたい。これが物理という学問の本質でもあり,大学入学後もこのような力は必ず役に立つ。
一つひとつの法則やいわゆる”公式”をばらばらに覚えただけでは,東大の問題には対応できない。同じ分野の法則であれば,それらの関係も理解して,複数の法則を有機的に運用できるように学習を深めることが必要である。それが中学までの理科と(大学につながる)高校の物理の大きな違いである。東大の入試で要求されるのは,高校物理の深い理解である。
教科書では,力学,電磁気,波動などと分野ごとに分かれて物理現象を学習するが,実際の問題では,分野横断的な知識を問われることも多い。普段から,自分が何を学習していて,他の分野の何と関連があるのか,頭の整理をしておくことが必要である。時には,各分野の関連性を俯瞰的に眺める機会をつくるのもよい。
他の難関大ほど複雑な計算を要する問題が出題されることは少ないが,正確かつ素早い計算力が必要となる。普段から次元や単位に気をつけるなどのポイントを押さえながら正確な計算をするよう心掛け,少しずつ計算力を積み上げていくことが必要である。
東大の物理では,身のまわりの自然現象を題材にした出題も少なくない。問題を解くという学習だけでなく,生活の中で物理現象を分析し,自分の知識の範囲で考察しておこう。また,新聞やテレビで報道される自然科学や科学技術に関するニュースに興味をもつことは,科学を学ぶ原動力にもなるはずだ。
進研ゼミ東大特講・京大特講による、東京大・京都大をめざす高校生のための情報サイト。合格した先輩の学習法・体験談・メッセージや大学の情報などを掲載中。