試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題
東大入試では,第1問で450~600字程度の長文論述が出題され,複数の時代・地域にまたがったテーマが設定される。それゆえ,世界史をグローバルな視点で鳥瞰的にとらえ,事項の因果関係や相互作用を論理的に結びつけながら論述をまとめることが必要となる。その際,8つ程度ある指定語句が解答のヒントとなる。問われている要素や条件を問題文から読み取り,世界史の知識をテーマに沿って再構築しながら,論理的に説明していく力が求められる。
第2問,第3問の小論述・説明問題・記述問題でも,時代や地域をこえて問われるのが東大入試の特徴。求められる知識は教科書や用語集レベルだが,語句をただ説明するのではなく,地域間の接触・交流や異なる地域における歴史的事象の比較などのテーマが与えられることが多い。いずれの時代,地域についてもまんべんなく知識を習得するとともに,歴史のタテの流れとヨコのつながりを整理しておくことも必要だ。
| 地域 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|
| アジア |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| ヨーロッパ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| アメリカ |
◎ |
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○ |
○ |
|
| アフリカ |
|
|
|
|
○ |
| オセアニア |
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|
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○ |
| 地域的総合 |
|
○ |
○ |
○ |
○ |
| 分野 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
|---|---|---|---|---|---|
| 政治史 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| 国際関係史 |
◎ |
○ |
|
◎ |
○ |
| 社会経済史 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 文化史 |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
○ |
| 雑題 |
|
○ |
○ |
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|
※○は1題,◎は2題以上の大問でその地域と分野が問われたことを示す。
全体の構成は例年通り,長文論述問題,小論述問題,語句問題の大問3題。難易度は,やや易化したと思われる。第1問の字数が20行(600字)から17行(510字)に減少。これは第2問の問1つ分(3行)程度の負担減といえる。出題地域は欧米・アジアの広範囲が対象であったが,時代は近現代よりもそれ以前の時代が多かった。とりわけ19世紀を直接問う出題が少なかった。例年同様,教科書レベルの知識を多角的に,かつ系統的に理解したうえで着実に答える力が求められた。
第1問のテーマが文化史で,第2問・第3問にも文化史に関連する出題が見られた。ただし,第2問は政治史・国際関係史が中心で,第3問では食生活や食文化を切り口にして政治史・社会経済史・文化史など多岐にわたる分野が問われた。第2問はすべて論述問題となり,2010年度と比べて合計字数が1行(30字)減った。第3問では正誤判定問題が1問出された。
| 大問 | 出題地域/分野 | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | アジア・ヨーロッパ (文化史・国際関係史) |
標準 |
アラブ・イスラーム文化圏をめぐる文化の受容・発展と他地域への影響字数が20行(600字)から17行(510字)に減少した。指定語句は2010年度と同様の8つであった。テーマは,アラブ・イスラーム文化圏を中心に他地域との関わりを論じさせるもので,文化史の知識や理解が集中的に問われた。指定語句には,関連性の強い語句同士が並んでいる(例えば,「トレド」と「シチリア島」など)ので,論じるべき内容を想起しやすかったのではないかと思われる。一方,指定語句から直接連想しにくいが,解答に入れるべき内容(「授時暦」や「製紙法」など)もあった。指定語句以外の項目にも触れられると高得点が期待できる。問題文から,論述すべき時代はイスラームの成立する「7世紀以降」から「13世紀まで」と判断できるが,イスラーム文化に影響を与えるギリシアやインドの文化については,背景として7世紀以前の状況に触れてもよいであろう。また,イスラーム文化の内容や12世紀ルネサンスのことを書きすぎると,条件を見失うことになるので注意したい。問題文と指定語句から,必要な解答要素を洗い出し,指定字数内でまとめる力が求められる。 |
| 第2問 | (1) ヨーロッパ(政治史・文化史) (2)アジア(国際関係史) (3) アメリカ(国際関係史) |
(1) やや易 (2) 標準 (3) やや易 |
帝国と呼ばれた国家の盛衰と対外政策出題地域と時代が3問ともそれぞれに異なり,偏りなく構成されている。問(1)は古代ローマ帝国の「公共施設」と「市民権の拡大」について,問(2)は明代から清代前期までの対外貿易と朝貢との関係,問(3)はアメリカ合衆国の対外政策が問われた。19世紀についての出題は,この問(3)と第3問に1つあるだけであった。問(2)の明・清時代の対外貿易は,清代が17世紀末(康熙帝の時代)までなので,「海禁政策に着目」するという条件から鄭和と台湾平定を想起する必要がある。また,問(3)(b)では対中国政策の「特徴」を論じる必要があるので,門戸開放宣言の説明だけではなく,その後の日本などの中国進出に対する反応も含めて答えるようにしたい。第1問同様,指定字数にあわせて解答要素を絞り込むことが大切だ。 |
| 第3問 | アジア・ヨーロッパなど (政治史・社会経済史・文化史など) |
易 |
食生活の安定と生活圏の拡大設問数は10,解答数は14。食生活の安定というテーマから社会経済史が中心かと思われたが,出題分野は政治史・文化史などさまざまであった。正誤問題が珍しく1問出題されたが全体的には難易度は平易であり,問5は簡単すぎて逆に考え込んでしまった受験生も多かったと思われる。問4は,難しい事項の設問ではなかったが,問い方が変わっていたため,自信を持って答えられる受験生は少なかったかもしれない。時代や地域は偏りなく設定されていたが,純粋にアフリカと言える問題はなかった(問3の「ヴァンダル人」はヨーロッパ史の一環であろう)。2011年度も20世紀からの出題は少なく,戦後史は問10の「ドイモイ」だけであった。基本事項が多いので,時代・地域・分野ともに偏りなく学習し,しっかり得点を稼ぐようにしたい。 |
※「難易度」は,合格者の正答率が5割程度だと東大特講編集部が推測したものを「標準」とした。
どの時代,地域,分野についてもまんべんなく知識を身につけるためには,教科書の熟読が必要。その際,教科書の本文だけでなく脚注や地図,写真などには必ず目を通し,巻頭・巻末や各章のトビラ,コラムまで読み込もう。また,事項説明型の説明問題に対応するために,用語集で用語の説明文を確認しておくことも重要だ。
東大入試においては,史実の原因・結果や影響が必ず問われる。単に一つひとつの事項を覚えていくのではなく,常に「なぜ」という視点をもって事項の関連性を意識しながら学習することが必要だ。上記のように教科書を読む際にも,必ず背景や原因から,展開,結果とその影響までを意識しよう。また,論述に欠かせないグローバルな視点を身につけるには,資料集などの地図や年表を活用するとともに,東大の過去問を複数年度にわたって解くことが非常に有効だ。
論述,記述問題ともに,政治史だけでなく社会経済史や文化史も重視されている。各時代の政治史の流れを押さえたのちに,社会や経済,文化の特徴をまとめておくと有益だ。経済史では,「世界商品」と呼ばれる銀,香辛料,茶,綿などが論述のテーマになりやすいので要注意。頻出の文化史では,政治史との関わりや,異なる文化圏相互の関連について問われることが多いので,それらを切り離さず,関連性を意識して学習しよう。
厳しい制限時間の中で第1問のような論述を仕上げるには,書くべきポイントを見抜いて短時間で文章をまとめる力が求められる。指定語句から書くべき内容を連想して要素をグルーピングし,情報の取捨選択を行ったうえで,時間を意識しながら文章を構成していくトレーニングを積んでいこう。このような,東大の論述に対応するためのテクニックは,『東大特講「ベクトル的視点」で攻略する東大世界史講座』で学ぶことができる。また,東大だけでなく,同様に論述を課す京大や一橋大などの過去問にあたることも有効だ。なるべく多くの論述問題を自分で解いて,添削してもらうことが何よりの対策となろう。
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