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2008年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期理系生物

■概要

試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題

■東京大学の生物(前期理系)で求められる力

○基本的知識を土台とした問題の読解力が求められる

東大の生物の問題はリード文が長く,かつ難しい文章がほとんどである。この文章を読みこなすには,生物I・IIの内容が正確に理解できていること,その基本的知識をもとに初めて読む説明を的確に理解し,科学的に解釈できる能力を持っていることが大前提であるが,さらに,限られた時間内に素早く内容を理解する力も要求される。

○多くのデータを解析し,考察する力,計算力が求められる

問題のテーマとして,高校教科書には登場しない題材が扱われ,初めて見るデータが示されることも多い。したがって,データを比較したり計算により解析する能力,データをもとに考察する力が要求される。

○解釈した論点をまとめる論述力

東大の生物では,総計で30行近くの論述問題が出題され,合否の鍵を握る。1~2行の設問であれば,論点を簡潔にまとめ,3行以上の設問では,論点をつなぎ合わせて答案を作成しなくてはならない。素早く解釈した論点をまとめて読み手に伝える力が要求される。

■最近5年間の出題状況 出題分野(数字は大問番号)
科目 分野 小分野 2008 2007 2006 2005 2004

3


1

1

1

1

1,2,3


1


1








3

1,2


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3



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3

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2

2

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2


2

2



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1,2

1

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1

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3



3







1







3


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3


2

1


3



3



2





2








3





※3大問が,「細胞・分子・遺伝子に関する題材」,「動物に関する題材」,「植物に関する題材」で構成されることが多い。「動物」・「植物」については,遺伝子・分子を複合させる場合があるほか,代謝,恒常性,適応と進化,適応と生態など,多様な方向に展開する。
※「生物II」の選択分野については,2007年度が進化,2008年度が生態系と,特別な配慮をせず出題している。

■最近5年間の出題状況 問題形式
2008 2007 2006 2005 2004

5

12

9

4

10

1

2

3

2

9

6

8

11

12

7

3

2

2


6


1



1

1


1



16

19

15

15

19

10

6

10

7

7

4

7

10

10

4

※論述量が,2007年度の28行から2008年度では最大で27行とほぼ同程度であった。
※計算問題は,基本的なものであった。

■2008年度入試の特徴

○図表が少なく,文章に沿った問題が多くなった

昨年に比べて,図や表が半減し,文章内にデータが散りばめられた難解な文章が増え,文章を読みこなし,まとめる能力が要求された(特に,第1問)。この結果,ここ数年,東大の生物は易化の傾向があったが,今年は解きにくい問題が多く,昨年に比べて難化した。

○計算問題が増加した

例年,計算問題が1~2問出題される傾向があったが,今年度は,第2問の大半が計算問題であった。ただ,題材そのものは問題集などで定番のものであり,東大としては平易な計算であった。

○代謝が全面展開された

昨年に引き続き,呼吸や窒素代謝が全面的に扱われた(第3問)。生体内の化学反応とその意味を問う問題,生態系内での位置づけなど総合的な考え方を要求される問題が出題された。

■2008年度 大問別出題分析
大問 テーマ 難易度 内容と求められた力

やや易

【出題内容】
・体細胞分裂に関して述べられている。用語は見慣れないものもあるが内容は基本的であり,正確な知識があればイメージできる。
・体細胞分裂に関する基本的知識を問う問題である。
【求められた力】
空欄補充は基本的知識があれば完答できるが,リード文は文2を理解するために不可欠であり,文章読解力が求められた。

標準

【出題内容】
・体細胞分裂と減数分裂の違いを,動原体や中心体,微小管に着目して問う問題。
・文1と文2の内容を両方理解していないと解けず,記号選択の割には時間がかかる。
【求められた力】
細胞分裂の基本的知識を土台として,文章の内容を絵に描きながら理解していく(例えば染色体の絵を描いてそこに微小管を配置させる)能力が求められた。

やや難

【出題内容】
・染色体の娘細胞への分配と染色体の乗換え,染色体地図との関係が問われている。
・二重乗換えは教科書では扱わないことになっているが,ここでは考え方として不可欠である。
【求められた力】
三点交雑法と染色体の乗換え,遺伝子の組換えの関係を完全に理解し,リード文の内容と照らし合わせて考える力が求められる。特に二重乗換えにとどまらず,乗換えの回数が多くなると組換え頻度が上限に近づくことに気づかないと問題の意味がわからない。


【出題内容】
・恒常性に関する基本的知識と,バソプレシンの分泌の作用機序に関して問われている。
・フィードバックや自律神経系とホルモンの協調に関する基本的知識が問われている。
【求められた力】
文章そのものも基本的であり,恒常性全般,特に脳下垂体後葉やバソプレシンなどに関する基本的知識が求められた。

やや易

【出題内容】
・腎臓での尿生成のしくみと腎細管での物質の再吸収や分泌をデータから考察する。
・ほとんどが糸球体ろ過量や腎細管での再吸収量など,排出に関係する計算問題である。
【求められた力】
単位時間あたりの原尿量や尿量,物質の濃度などを素早く計算し,計算結果が何を意味するか(再吸収される物質か,分泌される物質か)を解析する能力が求められた。

やや易

【出題内容】
・腎細管でのグルコースの再吸収の限界と尿量との関係がグラフで問われている。
・グルコースの腎クリアランスと血糖値との関係をグラフで問われている。
【求められた力】
血糖値と糸球体ろ過量,尿中排出量,腎細管での再吸収量の関係を理解し,クリアランスとは何かを,「ある物質の1分間の排泄量がどれだけの血しょう量に由来するか」というたった1行の文から理解する力が求められた。


【出題内容】
・ミトコンドリアの構造と好気呼吸の関係に関する基本的知識が問われている。
【求められた力】
ミトコンドリアの内膜とマトリックス,電子伝達酵素やクエン酸回路の基本的知識が求められた。

やや難

【出題内容】
・硝化細菌と脱窒素細菌に関する基本的知識を問うと同時に,生育環境と呼吸の関係が問われている。
・脱窒素細菌の硝酸呼吸と環境との関わりをデータから読み取る能力が問われている。
【求められた力】
化学合成細菌と生育場所の関係など,代謝のしくみだけではなく環境の関わりについて理解する力が求められ,さらにデータを解析して考察する最も科学に必要な力,さらに的確に論述する力が求められた。

やや難

【出題内容】
・水田の土壌での硝化や脱窒素が起こるしくみを代謝の面から考える能力が問われている。
・硝酸イオンやアンモニウムイオンとイネの関わりを窒素循環の関係から問われている。
【求められた力】
生態系内での窒素循環と,環境との関わりを,与えられた問題文と問2の内容を総合する力(硝化細菌,脱窒素細菌,イネおよび各種イオンの循環を総合する力) ,さらに的確に論述する力が求められた。

※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと東大特講編集部が推測したものを” 標準”とした。

■合格に向けての対策

○基本的な事項について,正確に理解して覚える

前提として教科書にある内容について,正確に理解し,用語を覚え,科学的に正しい使い方を身につけること。毎年のことであるが,基本的な用語を答える設問や,基本的な内容を論述する設問が,配点で考えると半分近くを占めている。なお,教科書の「発展」の内容が出題される場合があるので,ぜひ熟読しておくとよい。

○遺伝子発現・分子レベルのしくみは必須

今年度は少なかったが,遺伝子発現(バイオテクノロジーを含む)や,生命現象のしくみを分子レベル(タンパク質レベル)で扱う出題が多い。したがって,こうした内容については,教科書に留まらず,発展的な内容も含めて知っておくとよい。

○計算力は必須である

生物入試で求められる計算は,計算そのものとしては容易なものが多く,与えられた生命現象と結びつけて計算を行うことになる。「濃度と量の関係」や反応や伝導などの「速度」,化学反応の「モル計算」はできるようにしておきたい。

○論述力を高めよう

限られた試験時間で,長いリード文を読み,問題の状況を把握するには,まず,「文章そのものを素早く読む力」が重要である。また,知識による論述や考察したうえでの論述が多いことから,「文章を書く力」も必須である。「読む・書く」練習を繰り返していく地道な作業が必要となる。

○科学的思考法を身につけよう

科学的な思考としては,「グラフや図,表を,生命現象と結びつけて矛盾のない誰がみても反論できない解釈ができる」こと,「仮説をつくり検証する」ことで進歩する科学そのものを理解すること,この2つがポイントとなる。特に後者は,東大の生物では最も要求されるものであるので,過去問や問題集などを通じて練習しておくことが大切になる。

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