試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題
長い問題文をいかに素早く読み解き,その場で思考し,考えたことを論理立てて表現できるか。つまり,読解力・思考力・表現力の3つの力を求められる。
東大化学の最大の特徴は長いリード文である。そのリード文のテーマも環境・エネルギー・新素材から古典的名著や著名な論文まで教科書に載っていないテーマも多い。見たことのない物質や難解な言葉をおそれない心構えが必要である。一見難解に見えるリード文の中に、高校化学の力で解けるしかけがほどこしてある。これを読み取り,高校化学の正確な知識で思考し,答案として発信する力を求められる。
| 科目 | 分野 | 小分野 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 |
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2,3 |
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※例年,理論・無機・有機とバランスよく出題されている。2006年度,2007年度と,第1問では古典的な名著や論文などの題材から出題されたが,2008年度は従来の出題形式であった。
※2008年度入試では,酵素の基質特異性と多段階反応が出題されたが,問題文中で理解できるため,化学II選択分野「生命と物質」選択者に有利に働くほどではない。
| 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | ||
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2350 |
3000 |
4140 |
3430 |
3340 |
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5 |
9 |
3 |
3 |
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3 |
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37 |
31 |
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26 |
24 |
※ほぼ毎年,論述問題が出題される。また,計算問題は計算過程を書かせる出題がほとんどである。
今年は過去2年間第1問で見られた長いリード文こそなかったが,昨年同様計算量や記述量が多く,やはり時間的に厳しかったであろう。見慣れない題材でも,問題文中の条件を手がかりに,既存の知識で対応可能な設問を見抜く力が,より重要となった。
理論分野は,実験を伴う「熱化学」を中心とした出題であった。正確な計算力が必要であるが,是非得点したい設問である。「反応速度」「化学平衡」「気体の性質」といった今までよく出ていた理論分野は,頻出問題にひと通り取り組んでおき,知識をおさえ,解法を理解しておく必要がある。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
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やや難 |
氷熱量計の原理である,ガラス管内の水の高さと氷の状態変化による体積変化の関係が求められれば立式できる。あとは正確な計算力が必要で,ケアレスミスは致命的である。オの論述問題は,水の状態変化と体積の関係といった予想可能なテーマであり,このような問題の「ネタ」になる内容は,平素から教科書のような精選された文章を読み込んでおく必要がある。 |
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標準 |
教科書では詳しくは扱われない酸化銀電池に関する出題である。カは,電池の反応で一見難しそうに見えるが,電池の基本原理と周辺からの類推で対応できるはずである。キの計算問題やクの錯イオンの構造など頻出問題での失点は致命的である。 |
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やや難 |
アはヨウ素の昇華に関する実験問題。混合物の分離にも応用される知識であり,図示・論述ともに教科書の内容がきちんと理解できていれば答えられる。イの化学反応式も頻出である。オは複雑な系で,分配平衡と化学平衡の両方から,化学平衡の法則にしたがって,式を立てられるかがポイントである。 |
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標準 |
一酸化窒素と二酸化窒素の性質の違いや,硝酸の製法など標準的な無機化学の知識があれば簡単に解法できる。さらに,尿素の化学式
(NH2)2COがでてくれば,気体Bと気体Cは,アンモニアか二酸化炭素であることは類推でき,クやケの化学反応式も書ける。
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やや難 |
元素分析の実験から分子式を決定し,化学的性質から異性体の構造を決定していく典型的な問題であるが,ケト・エノール互変異性分子の知識も要求され,難しくなったといえる。分子式を求める問題は,結果だけではなく「求める過程」も示すことが要求されており,平素から要領よく答案をまとめる練習が必要である。 |
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難 |
ステロイド骨格や基質など見慣れない言葉や表記法が一見難しさを助長しているが,問題文をしっかり読み込めば,パズル的に正解に到達できる工夫はされている。アセチル化がヒドロキシ基で起こるという基本知識が必要となる。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと東大特講編集部が推測したものを” 標準”とした。
東大の入試問題の特徴である一見難しそうな長いリード文は,実は見抜けば高校化学の基礎的な知識で理解できるようになっている。この基礎的な知識の習得は,問題演習にかかっている。すなわち,標準的な良問をまんべんなく反復演習することである。問題集の選定は迷うところであるが,一冊これと決めたらじっくり三回は解いて欲しい。このような平素の学習には『エンカレッジ化学』などがすぐれている。
東大の第1問は,理論化学分野が中心であり,例年「気体の性質」「反応速度」「化学平衡」などを中心に出題されてきた。ここ2年論文や名著からの出題が続いていたが,2008年度は「熱化学」で従来の出題パターンに戻った。いずれにせよ「熱化学」「溶液の性質」「気体の性質」「反応速度」「化学平衡」などには今後も留意すべきであろう。
東大の第2問は,無機化学分野が中心であるが「酸・塩基」「電池・電気分解」「結晶格子」などとも融合した出題が目立つ。かつてリチウム電池や酸素センサーなど教科書にない題材も出題されているが,2008年度も酸化銀電池が出題された。難しそうに見える設問が多い。 『東大特講「類似点発見」で攻略する東大化学』などの演習により,難解に見える問題文から今までに学んできた知識や解法との類似点を見つける訓練をすることが大切である。
東大の第3問は,有機化学分野が中心であり,「構造決定」や「実験問題」が主流であったが,今後は高分子化合物の出題も増えていくであろう。得点源にしたいところだが,2008年度の第3問のIIは難化した。しかし,有機化学はC4H10Oの異性体など頻出問題が過去に何回か題材になっており,他の頻出の異性体も決まっているので,過去問に出た異性体を集中的に整理しておきたい。さらに問題を解くときに必要な道具(tool)は,是非整理しておこう。例えば、アルデヒド基の検出には「銀鏡反応」と「フェーリング反応」などの知識を知らずして,入試に臨むのは無謀である。
東大は,化学IIの選択分野である「生活と物質」「生命と物質」のどちらからも題材を使用することを表明している。これは例えば医薬品を直接問うことはしないが,医薬品が関連した,「化学平衡」や「反応速度」の問題は出題する可能性があるということである。したがって,受験生の選択の不利は生まれない。これなら「生活と物質」を選択し,医薬品を学習してこなかった受験者が不利になることはない。また高分子化合物の第3問における出題は,おのずと両選択分野に記載されている天然高分子化合物か化学Iで登場するポリエチレンなどの合成高分子化合物に限られるであろう。今回第3問IIで「生命と物質」選択者が一見有利に見える酵素反応の出題は,問題文中の説明に酵素の特異性の説明はあるので心配ないであろう。むしろ,構造式の表記法の方が受験生は驚いたのではないだろうか。
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