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2008年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期理系国語

■概要

試験時間:100分 大問数:3題

■東京大学の国語(前期理系)で求められる力

○現代文は抽象的な評論の論構造を整理する力

現代文では、現代的なテーマを扱った、多層的な軸を持って展開する抽象度の高い評論が出題される傾向がある。抽象的で、一般論とは異なる筆者の主張を、表面的になぞるのではなく、論展開を丁寧に押さえつつ、真に理解する力が求められる。

○古典は語彙・文法・句法の知識と、あらすじ把握の基礎力重視

古文・漢文では、語彙、文法や句法などの知識事項の正確な理解、訳出は必須。また、主語を整理しながらあらすじをとらえる力が求められる。決してマニアックな難問ではないが、ただ単に字面を追って逐語訳するだけではなく、文脈や筆者の主張に沿って、出来事のつながりや全体の展開を考えながら訳す力が求められる。

○設問意図を見抜き、必要なことを端的にまとめる力

東京大では、全体的に「どういうことか」「なぜか」という簡潔な形で問う設問が多い。傍線部を手がかりに「どこを掘り下げて説明することを求めているのか」という出題意図を読み取り、解答の根拠にすべき問題文の範囲を見定め、出題意図に沿った答案をまとめることが求められる。「簡潔に」という設問指示は、「この設問の質問ポイントに対する解答が明確にわかる書き方にせよ」という意味での「簡潔に」であり、短くすればよいというものではない。余分な部分をそぎ落とし、骨格部分を的確に残す力が求められる。そのためには、短くまとめるための語彙力・表現力も必要。

■最近5年間の出題状況
大問番号 観点 2008 2007 2006 2005 2004

『反歴史論』
宇野邦一

『読書について』
浅沼圭司

「死と宗教-来世観の歴史性と不変性」
宇都宮輝夫

『哲学入門』
三木清

『柳宗悦 手としての人間』
伊藤徹

評論

評論

評論

評論

評論

2501~3000字

3001~3500字

3001~3500字

2501~3000字

2501~3000字

『古本説話集』

『続古事談』

『堤中納言物語』

『住吉物語』

『庚子道の記』
武女

説話

説話

物語

擬古物語

紀行文

約1000字

501~800字

501~800字

801~1000字

801~1000字

『右台仙館筆記』
兪樾

『輟耕録』
陶宗儀

『続墨客揮犀』
彭乗

『嘉祐集』
蘇洵

『東坡志林』
蘇軾

説話・小説

文章

文章

文章

文章

281~290字

181~190字

141~150字

181~190字

151~160字


■2008年度入試の特徴

○今年度入試の特徴・経年変化

例年通りの現代文(評論)/古文/漢文の3大問。文理共通の第一問の現代文は、現代的なテーマを扱った抽象度の高い評論からの出題が多く、今年もその傾向通りとなった。第一問の(五)でここ数年出題されている、全体の流れを踏まえて100字~120字で記述する設問も例年通り出題された。第二問の古文は「説話」「紀行」「物語」のどれかが出題される傾向があり、今年は「説話」からの出題となった。第三問の漢文では、2007年にはなかった書き下しが出題された。第二問の古文と第三問の漢文は文理で問題文は共通だが、理系では設問数が少なくなっている。この傾向も例年通りだった。解答欄は例年通り設問に対して狭く、必要なことを端的に答える力を問う東京大らしいものとなっていた。

■2008年度 大問別出題分析
大問 問題文ジャンル 小問 難易度 内容と求められた力

標準

主題の方向性を意識しながら、対比軸の変化を正確に追う力

「歴史とは何か」を主題に、全体と個について述べられた文章。主題は東京大入試には頻出のものの一つ。2005年に同じ文章が北海道大で出題されている。論展開に破綻がなく、整理しながら読み進めれば筆者の論の方向性はかなりわかりやすいが、抽象度が高く難解。筆者が述べる「歴史」の特徴をとらえることが重要となるが、「本来の歴史と筆者の考える歴史」「歴史と記憶」「歴史の決定と歴史からの自由」などの軸が比較的短い文章量の中で次々と展開しているのを、整理していくことが求められた。

標準

設問意図を見極めたうえで、欄内に過不足なく解答をまとめる要約力

(一)~(四)で論の骨子を一つひとつ確認し、その骨子を踏まえて、(五)で問題文全体を対象にした問題が出題されているのは例年通り。(三)は昨年の(一)~(四)のように広範囲な読み取りを必要としたものの、(一)(二)(四)は傍線が引かれた部分と、解答の根拠として踏まえる箇所が前後に接近していたため、比較的解答しやすかった。とはいえ、問題文自体の抽象度が高く、(二)の「相対的」、(四)の「強迫的」など解答を組み立てるうえでのキーワードも多いので、その内容説明のために必要とする解答要素を洗い出していくと、解答欄内に収まりきらず文字量がオーバーしてしまう。単純に削っていくだけでは求められる要素が不足してしまい、解答として成り立たないおそれがある例年の傾向の設問であった。必要な内容を東大特有の狭い解答欄に収めるため、出題意図を正確に把握し、解答要素を見極め、その要素間の因果関係を的確かつ簡潔に説明する、という要約力が必要だ。

標準

やや難

標準

やや易

標準

難解な文章ではないが、人物関係、指示語に注意して読み解く力

『古本説話集』は、入試頻出作品である。話の展開は明瞭で、古語も基本的なものが多く、文法的にも難解な部分は少ない。しかし、人物関係が不明瞭なところもあるので、常に主語を意識しながら読んでいく必要がある。また、指示語の内容を明らかにしながら読んでいくこと、古語の意味を文脈に沿って判断することも大切だ。

標準

差をつけるポイントは「現代語としての表現能力」と「設問意図を意識したまとめ方」

「誰が」「どうした」を明らかにし、古語・文法の知識を前提に、指示語の内容を過不足なく指摘することが要求される。また、例年、傍線部に必ず文法事項が含まれることを考えると、例えば(二)婉曲「ん(=む)」などの文法理解をアピールした解答を心がけることが大切だ。「あやし」「楽し」などの古語の意味は、暗記した意味だけではなく文脈から解釈して訳出することが必要。したがって、読みやすい文章であっても、しっかりと内容読解できていないと設問には答えられない。「たよりなかりける女」が「楽しくてぞありける」に至る過程を正確に読み取ること、「観音-帷-験」の関係が整理できたかどうかで解答に差がつくだろう。解答欄は、昨年に引き続きすべて1行であり、25字程度で各解答をまとめなければならない。要素の取捨選択、言葉の置き換え等が必要である。古文の試験とはいえ、現代文としての表現能力も試されているのだ。これは東京大の入試では完全に定着した傾向と言える。

標準

やや難

標準

文章の起承転結を読み取る力

主人公の行った善行に対して神から褒美が与えられる、というよくあるパターンの話である。字数は昨年より約90字増え、3年ぶりに200字以上の長さとなり、注の数は昨年の7から10に増えた。しかし、内容的には昨年同様読みやすいものであると考えられる。「何可成」という三文字が文章の結末にどのようにかかわっているかという点も含めて、問題文の起承転結を理解しながら読めたかどうかが、合格答案を作成するカギとなった。

標準

漢文における基本的な語彙の知識や重要な句法の知識の活用

内容把握の過程において、昨年以上に基本的な語彙や句法の知識が要求された。(二)では「挙家」「勧慰」という普段なじみのない熟語の意味を、漢字一字の意味に基づいて類推する能力が要求されるなど、漢文読解の総合的な力を問われた年であったと言えるであろう。また、(三)のような設問では、「自分はこの話のポイントを正確に理解しているんだ」ということを狭い解答欄の中で表現する能力が問われる。傍線部の直前・直後だけではなく、問題文の起承転結を把握したうえで必要な解答要素を見抜く必要がある。

標準

やや難

標準

※【問題文】過去5年間の同分野の問題文の中で、平均レベルと編集部が考えたものを「標準」とする。
※【設問】編集部が考える模範解答に対して、合格レベルであれば半分程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とする。

■合格に向けての対策

○現代文では、自己発問&構造化で読む訓練を

現代文では、基本的な力を大前提とした、さらに一歩深い読解力・語彙力の有無が最終的な勝敗を分ける。これらの力を深めるには、優れた評論に数多く触れる機会を積極的に作り、読書経験値を上げていくことが有益である。そこで重要なのが、文章中に抽象的な語や筆者独特の言い回し、表現が出てくる度に、「これはどういうことか?」と自分の中で問いを立て、考える習慣を身につけること。これによってその語句や表現を自分のものにし、深く読み取ることができるようになっていく。理解が問われる抽象的な表現は、それを題材とした例文などを作成し、第三者に判定してもらうことも有効。また、評論を読む際は問題文の内容を図式化するなどして、文章構造を整理しながら読む練習をしよう。

○古典では、大意を読み取る力と徹底的な基礎力の養成を

古文・漢文では、正確に文脈をつかむ練習をしよう。主語を補い、「誰が」「どうした」のつながりをたどりながら読み進めていくことを習慣づけたい。基礎的なことだが、東京大ではまさにこの力が求められている。基本的な文法事項や古語の知識は重要だが、東京大が求める解答をつくるためには、古文単語や漢文句法を丸暗記するのではなく、問題文の中でどのように使われているかを考えながら覚え、文脈に応じて訳出を工夫できるようにしておくことが重要である。

○解答の骨子を見極め、解答欄内にまとめる力の養成を

東京大では、「どういうことか」「なぜか」という問いに対して、設問の意図を見抜き、解答の骨子を見極め、解答欄内に収まるように端的に答えることが求められる。そういった設問の対策には、文章の要約やセンター試験の設問に記述で答える練習が有効である。ただし、漫然とそれらを解くだけでは効果が低い。設問の意図を考え、書くべき要素を洗い出し、そのうえで解答の構成を考え、推敲しながら書くというステップを踏んで解いていくと、効果が高く、力がつく。また、推敲の際は、主-述のねじれ、因果関係のねじれ、文末の処理の仕方などに注意して、日本語としておかしくないかの確認もしよう。東京大入試特有の狭い解答欄に対応するためには、字数節約のための同義語・類義語の語彙を増やすことも普段から心がけよう。

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