試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題
パターン問題の解法を組み合わせて解答するよりも,独自に自分の力で論理的な解答を構築する力が必要となる。普段から身近な自然現象などについて,定性的・定量的に分析・思考できるようになる必要がある。また東大理科では,解答用紙に途中の考え方などを記述することが求められるので,論理をわかりやすく表現する記述力も求められる。「論理的な飛躍・抜けがない」ことと「簡潔にまとまっている」ことが求められるため,普段から「いま考えている自然現象の本質は何か」を常に意識した学習姿勢が求められる。
東大では,一見はじめて見るような問題設定が多いが,基本となる知識は典型問題のそれと全く変わらない。よって基本法則や問題の解法の十分な理解が最も大切である。また,問題文を正確に読解し,自分の知っている典型問題に置き換えていく力が求められる。
| 科目 | 分野 | 小分野 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 |
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※例年3題で,力学と電磁気は毎年出題されている。旧課程でも原子分野の出題は少なかった。
※複数の問題を融合させた問題が多い。
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※変化のようすを記述したりグラフを描いたり,グラフを選びその理由を述べるなどの記述(論述)問題が例年1問ずつ程度出題されている。
問題の解法や思考過程の流れに従って小問が作られている。問題文を正確に理解できれば,決して難しい問題ではなく,基本的な知識から解答できる。基本的な知識の定着と,基本的な知識から論理的に考えられる力を養うことが必要である。
教科書には載っていないグラフや関係式を与えてはいるが,高校物理の基本的な知識だけで解けるように,作問されている。目新しいグラフや関係式に惑わされず,問題文を正確に読み取り,論理的に考える力が付いていれば,正答に到達するのは難しくない。
解答の方針が立っても,計算力が十分でなければ時間内に正答を導くことはできない。あまり複雑なものは出題されないが,十分なトレーニングを積んでいることが必要である。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
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標準 |
問題文を正確に読み進む読解力が求められる。摩擦のない水平面上で,静止していた質量mの物体を時間T後にLだけ離れた地点を通過させるときに,箱にする仕事が最小になる場合を考えさせる問題である。 A:T秒間等加速度直線運動を行う場合,B:最初は等加速度直線運動でその後等速直線運動を行う場合,C:ばねによる単振動を行う場合,の3つの考え方を示し,それぞれの場合の運動のv-tグラフをかかせたり,仕事を求めさせたりして,箱にする仕事が最小になる場合にたどり着けるように,問題の流れがつくられている。物理の基本的な内容を理解していれば,問題文の流れに従って,論理的に考えることによって,確実に解答できるようになっている。 |
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標準 |
与えられた特性曲線の意味と,回路において成り立つ条件を判断する力が求められる。コンデンサーとネオンランプを接続した回路について,ネオンランプの点灯と消灯の条件を与え,ネオンランプの点灯時や消灯時の電源電圧を求めさせ,エネルギーについても考えさせている。 ネオンランプが消灯している場合は,ネオンランプに電流が流れないため,コンデンサーのみの回路として考えられる。このことは,問題文の中にも示されている。また,ネオンランプが点灯する瞬間はコンデンサーAにかかる電圧はVon,ネオンランプが消灯する瞬間はコンデンサーAにかかる電圧はVoffになることに気がつけば,コンデンサーBにかかる電圧も簡単に求められる。後は,Q=CVの式や,キルヒホッフの第2法則,静電エネルギーや電池のする仕事,電荷保存等,基本的な内容を使って問題を解くことができる。計算は少し煩雑な部分もある。 |
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標準 |
与えられた関係式から,論理的に考えられる力が求められる。密閉された容器内の気体は,重力の作用で,容器の上下で密度変化があり,その関係式を与えて,論理的に考えさせる問題である。 気体の密度変化を,単位体積あたりのモル数の変化として関係式を与え,この関係式をもとに,論理的に考えるようにできている。最初は状態方程式から始まり,圧力から面全体を押す力を使って力のつりあいの式をつくるなど,問題として特に難しいことは要求していない。問題IIはIの(5)と関連していないので,Iが最後まで解けなくても,IIの問題が正答できた受験生も多かったと推測される。IIの(1)は基本的な問題であり,途中で解答できなくなったときも,問題は一通り目を通して,解答可能かどうかを判断できるとよい。 |
※「難易度」は,全問題中での相対難易度。合格者の正答率が6割程度だと東大特講編集部が推測したものを” 標準”とした。
典型的なパターン問題は,そのままの形で出題されることは少ない。多くの典型問題に当たって基本法則に関するセンスを磨くことも大事であるが,過去問をはじめ,少ない良問を時間をかけてゆっくり分析することも非常に効果的である。単に問題に解答するだけでなく,問題の前提条件を考えたり,別解を考察したり,別の角度から見直したりすることにより,深い物理的考察力が養われる。
はじめて見るような問題に対して,数式や公式だけでそれを理解しようとしてもなかなかうまくいかない。まずは「この問題設定・条件ならばこの後どんな現象が起こるだろうか」ということを,自分の中である程度直感的に,かつ定性的に正しくシミュレートできるようになっておく必要がある。このような「直感力」を養うことで,解答のおおまかな道筋を自分で立てることができるようになり,また計算ミス等によって論理上ありえない解を導いてしまったときも,そのミスにすばやく気づくことができる。自分の直感を鍛えるために,普段から身のまわりの物理現象を注意深く観察し,またそれを意識しながら典型問題を多く解くことなどが効果的である。
東大理科では一見とても複雑な問題に見えても,基本となっている法則や解法のパターンは典型問題のそれと変わらないことがほとんどである。典型問題を多く解くことによって個々の典型的な解法のパターンをしっかりと理解・記憶し,使いこなせるようになったら,今度はそれらを複雑な問題を解くために組み立てていく(逆にいえば,複雑な問題を個々の簡単な問題に分解・翻訳していく)練習が必要となる。どのような複雑な対象に出会ったときも,まず「この現象の基本となっている法則はなんだろう」と考えてみる癖をつけておきたい。これが物理という学問の本質でもあり,大学入学後もこのような力は必ず役に立つ。
単に公式を覚えて使えるだけでは,深い洞察力を養うことはできない。証明可能な定理や法則は,前提条件に立ちもどって証明できるようにしておく。そうすれば,目新しい条件で出題された問題にも対応することができるようになる。もちろん限られた試験時間内で解答するために,公式を暗記しておくことはある程度必要だが,公式を使う度に,適用条件とそれに立脚してなされた証明の方法などを頭に思い浮かべるようにしておくと,思考の幅が広がる。
教科書では,力学,電磁気,波動などと分野ごとに分かれて物理現象を学習するが,実際の問題では,分野横断的な知識を問われることも多い。普段から,自分が何を学習していて,他の分野の何と関連があるのか,頭の整理をしておくことが必要である。
東大の物理では,身のまわりの自然現象を題材にした出題も少なくない。問題を解くという学習だけでなく,生活の中で物理現象を分析し,自分の知識の範囲で考察しておこう。また,新聞やテレビで報道される自然科学や科学技術に関するニュースに興味をもつことによって,科学的な思考に広がりができることもある。
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