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2010年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期理系生物

■概要

試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題

■東京大学の生物(前期理系)で求められる力

○基本的知識を土台とした問題の読解力が求められる。

東京大の生物の問題はリード文が長く,かつ難しい文章がほとんどである。この文章を読みこなすには,生物I・IIの内容が正確に理解できていること,その基本的知識をもとに初めて読む説明を的確に理解し,科学的に解釈できる能力を持っていることが大前提であるが,さらに,限られた時間内に素早く内容を理解する力も要求される。

○多くのデータを解析し,考察する力,計算力が求められる。

問題のテーマとして,高校教科書には登場しない題材が扱われ,初めて見るデータが示されることも多い。したがって,データを比較したり計算により解析する能力,データをもとに考察する力が要求される。

○解釈した論点をまとめる論述力。

東京大の生物では,総計で20行~30行程度の論述問題が出題され,合否の鍵を握る。1~2行の設問であれば,論点を簡潔にまとめ,3行以上の設問では,論点をつなぎ合わせて答案を作成しなくてはならない。素早く解釈した論点をまとめて読み手に伝える力が要求される。

■最近5年間の出題状況 出題分野(数字は大問番号)
科目 分野 小分野 2010 2009 2008 2007 2006
生物I 細胞 細胞の機能と構造


3

3


1
細胞の増殖と生物体の構造


3

1

1,2,3


生殖と発生 生殖細胞の形成と受精


1

1



発生とその仕組み


1




遺伝 遺伝の法則

2

3


3

3
遺伝子と染色体



1

3

3
環境と動物の反応 体液と恒常性

1


2

1


刺激の受容と反応

3



1


環境と植物の反応 植物の生活と環境




2

2
植物の反応と調節

2

2


2


生物II タンパク質と生物体の機能 生物体内の化学反応と酵素






同化と異化



3

2

2
タンパク質の機能

1





遺伝情報とその発現 遺伝情報とタンパク質の合成

2

1,3

1

3

1
形質発現の調節と形態形成

2

1



3
バイオテクノロジー






生物の分類と系統 生物の分類






生物の系統




3


生物の進化 生物界の変遷




3


進化の仕組み


3


3


個体群の構造と維持 個体群の維持と適応





2
物質生産と植物の生活





2
生物の群集と生態系 生物群集の維持と変化






生態系とその平衡



3



※3大問が,「細胞・分子・遺伝子に関する題材」,「動物に関する題材」,「植物に関する題材」で構成されることが多い。「動物」・「植物」については,遺伝子・分子を複合させる場合があるほか,代謝,恒常性,適応と進化,適応と生態など,多様な方向に展開する。
※「生物II」の選択分野については,2007年度が進化,2008年度が生態系,2009年度が進化と,特別な配慮をせず出題している年もある。

■最近5年間の出題状況 問題形式
2010 2009 2008 2007 2006
図表の数

11

9

5

12

9
設問 論述(1行)


4

1

2

3
論述(2行)

8

5

6

8

11
論述(3行)

5

3

3

2

2
論述(4行)




1


論述(5行)



1


1
語句記述

19

15

16

19

15
記号選択

9

7

10

6

10
計算,その他

2

5

4

7

10

※論述量が,2009年度では23行であったが,2010年度では最大で31行と,大幅に増加した。
※2010年度は,計算問題は出題されなかった。

■2010年度入試の特徴

○図表が増加し,文章読解力が要求された。

2009年度に比べて,図や表が増加した。また,実験の内容が難しいものが多く,文章の内容を理解した上で図表を解釈しなくてはならなかった。この結果,難易度は2009年度よりも難化したと考えられる。

○論述問題が増加し,計算問題が出題されなかった。

2009年度に比べ論述が大幅に増加した。特に,知識問題の論述でも,問題文の内容を踏まえた論述になっているのが特徴的で,単純に自身のもつ知識だけで論述できるものが少なかった。論述行数も,例年では1~2行のものが多いが,2010年度では2~3行と長めの論述が要求された。また,計算問題は,例年1~2問出題される傾向があったが,2010年度では1問も出題されなかった。

○動物,植物,遺伝子・タンパク質に集中し,生物IIの選択分野が出題されなかった。

例年,1大問内で多くの単元から出題され,総合力が試されていたが,2010年度では,1大問内で単元が1~2つ扱われ,範囲が集中していた。また,生物IIの選択分野は,生物の分類と進化,生物の集団と生態系のどちらからも出題されなかった。

■2010年度 大問別出題分析
大問 テーマ 難易度 内容と求められた力
第1問 [文1] 免疫/タンパク質

標準

【出題内容】
・抗体の構造や体液性免疫に関する広範囲な知識が問われている。
・変異マウスと自己・非自己の認識と免疫記憶との関係が問われている。
【求められた力】
免疫に関する基本的知識,文章の内容を整理し,解釈する力が求められた。
[文2] 免疫/タンパク質

標準

【出題内容】
・細胞性免疫に関する知識と,抗体を介したがん細胞の除去の関係が問われている。
【求められた力】
文章の正しい理解をもとに実験内容を解釈する力が求められた。
第2問 [文1] 遺伝子

標準

【出題内容】
・遺伝子の発現に関する基本的知識が問われている。
・花のホメオティック変異と遺伝子の関係について問われている。
【求められた力】
文章の内容を正しく解釈し,実験結果を整理する力が求められた。
[文2] 遺伝子/植物の反応

やや難

【出題内容】
・花成ホルモンと遺伝子の関係について問われている。
【求められた力】
多くのデータを処理する力,さらにデータの解析結果をもとに結論や推論を導き出す力が求められた。
第3問 [文1] 感覚/神経

やや難

【出題内容】
・ニューロンの伝導・伝達,しつがい腱反射に関する基本的知識が問われている。
・眼球運動のしくみと神経回路の関係について問われている。
【求められた力】
自分のもつ知識と文章の内容,図表を照らし合わせ,内容を総合的に解釈していく力が求められた。
[文2] 感覚

やや難

【出題内容】
・大脳の構造と中枢に関する基本的知識と,視覚と大脳での情報処理のしくみの関係が問われている。
【求められた力】
文章の内容を理解して,実験結果を解釈する力が求められた。

※「難易度」は,合格者の正答率が6割程度だと東大特講編集部が推測したものを「標準」とした。

■合格に向けての対策

○基本的な事項について,正確に理解して覚える。

前提として教科書にある内容について,正確に理解し,用語を覚え,科学的に正しい使い方を身につけること。毎年のことであるが,基本的な用語を答える設問や,基本的な内容を論述する設問が,配点で考えると半分近くを占めている。なお,教科書の「発展」の内容が出題される場合があるので,ぜひ熟読しておきたい。

○遺伝子発現・分子レベルのしくみは必須。

2010年度で大きく扱われた遺伝子発現(バイオテクノロジーを含む)や,生命現象のしくみを分子レベル(タンパク質レベル)で扱う出題が多い。したがって,こうした内容については,教科書に留まらず,発展的な内容も含めて知っておくとよい。

○計算力は必須である。

2010年度では出題されなかったが,東京大生物入試では,計算そのものとしては容易なものが多いものの,与えられた生命現象と結びつけて計算を行う力が求められる。「濃度と量の関係」や反応や伝導などの「速度」,化学反応の「モル計算」はできるようにしておきたい。

○論述力を高めよう。

限られた試験時間で,長いリード文を読み,問題の状況を把握するには,まず,「文章そのものを素早く読む力」が重要である。また,知識による論述や考察したうえでの論述が多いことから,「文章を書く力」も必須である。「読む・書く」練習を繰り返していく地道な作業が必要となる。

○科学的思考法を身につけよう。

科学的な思考としては,「グラフや図,表を,生命現象と結びつけて矛盾のない誰が見ても反論できない解釈ができる」こと,「仮説をつくり検証する」ことで進歩する科学そのものを理解すること,この2つがポイントとなる。特に後者は,東京大の生物では最も要求されるものであるので,過去問や問題集などを通じて練習しておくことが大切になる。

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