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2010年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期地理

■概要

試験時間:(2科目で150分)75分 大問数:3題

■東京大学の地理(前期)で求められる力

○問題の解釈から解答まで,的確にスピーディーに行う情報処理能力が求められる。

東京大の地理の特徴は,以下の2つ。(1)設問中にあるヒントを読み解く必要があり,さらに,資料の読み取りに考察力を必要とする。(2)論述問題では,指定語句に象徴される必要な要素を盛り込みながら,問われていることに対して的確に答えなければならない。これらを正確かつスピーディーに行う高度な情報処理能力が求められる。

○現代世界に対する知的好奇心が求められる。

細かな地名や用語が問われることは少なく,むしろ地理的な事象を題材として,現代世界に対する幅広い関心が試される。熱帯地域の土壌について,「ラトソル」「赤色土」「酸性」「肥沃ではない」などの言葉が重要なのではなく,「なぜ赤いのか,なぜ肥沃でないのか」「そこでの暮らしはどんな様子か」といった素朴な疑問を抱く好奇心が重要であり,考えて理解することが重要なのである。時事的な設問がしばしばみられるように,自らが生きる現代の世界に対して知ろうとする姿勢が求められている。

■最近5年間の出題状況(分野別)
テーマ 2010 2009 2008 2007 2006
交通・通信

国家・国家群

地図・地理学史

地域調査

自然環境

環境・エネルギー問題

人種・民族

人口

産業の立地・発達

産業の国際化,国際分業

村落・都市

行動空間の拡大

地域区分と地誌

雑題


■最近5年間の出題状況(地域別)
テーマ 2010 2009 2008 2007 2006
日本

アジア

アフリカ

ヨーロッパ

ロシア連邦と近隣諸国

アングロアメリカ

ラテンアメリカ

オセアニア

両極地方

総合

※○は1題,◎は2題以上の大問でその分野・地域が問われたことを示す。

■2010年度入試の特徴

○記述量が大幅に増加し,全体的にやや難化。

教科書レベル以上の詳細な知識を前提とする設問が複数みられたうえ,論述の合計行数が33行(990字)から40行(1200字)となり,記述量が大幅に増加した。よって難度は上がったといえ,解答時間にも余裕がなかったと思われる。

○出題分野の傾向は変わらず。時事的な話題も問われた。

出題分野は,地形や気候などの「自然環境」,人口や都市を含む近年の日本の社会・経済状況に関わる出題のような頻出分野からの出題の他,例年のように時事的な設問(2009年度の地方圏で進む市町村合併,2010年度の台湾からの入国者に人気の日本の観光地)も出題された。

○単答式の語句記述問題が復活。

客観問題は,例年出題のある統計資料の国名などを判定する選択問題に加え,2010年度は2009年度出題のなかった単答式の語句記述問題が復活した。きっちりと得点しておきたい,基本的な事項が中心であった。

■2010年度 大問別出題分析
大問 テーマ 難易度 内容と求められた力
第1問 世界と日本のダムと環境

やや難

自然環境に対する基本的理解と資料を読み取る力が求められた。

ダムをとりまく環境や問題点,天然のダムの機能など,「ダム」に関する多面的な問題であった。(1)は,カリバダムとクラスノヤルスクダムの建設目的の違いを気候環境の違いから考察する設問。ザンベジ川,エニセイ川を知らないと解答できない。(2)は,中部・四国地方と中国地方のダム流域の侵食速度の違いを論じる設問。地形の起伏量と降水量に着目する。(3)は,ダムの堆砂に伴う問題点を論じる設問。指定語句「水資源」が案外使いにくい。(4)は,森林・水田・裸地を流域とする河川の流出量の違いに注目し,森林の保水性を論じる設問。(5)は,水資源を蓄える氷河(白いダム)の機能を,森林(緑のダム)と対比して論じる設問。指定語句「渇水」がポイントになるか。
第2問 アジアにおける地域間交流と社会経済の変動

やや難

統計資料から国・地域の特徴を読み取る力が求められた。

設問Aはアジア諸国から日本への入国者数に関する問題,設問Bは東アジア主要国・地域に関する問題であった。設問A(1)(2)は,入国者数が比較的少ないインド・フィリピンからの旅行者の目的について問われた。(3)は,台湾からの入国者に人気の観光地とその理由が問われた。台湾の気候環境や一般常識(北海道のリゾート,東京のショッピング)が必要。(4)は,日中間の観光移動量の不均衡の要因を,所得格差と規制の観点から論じる設問。後者が難しい。設問B(1)は,東アジアの4つの都市の雨温図を判定する選択問題。(2)は,一極集中が顕著なソウルにおける抑制政策に関して論ずる設問。指定語句が設けられているが,難問。(3)は,工業化が進展した台湾における賃金水準の上昇と産業構造の高度化について論ずる標準的な設問。
第3問 交通と都市

標準

基本的知識と統計資料の背景分析を結びつける力が求められた。

設問Aでは貨物輸送の近年の変化,設問Bでは日本の貿易港の特徴,設問Cでは日本とドイツの都市に関する問題であった。設問A(1)は,日本の製造業の変化を貨物輸送機関の変化と関連づけて論じる設問。「ジャストインタイム」を的確に用いることができるかで点差が開いたと思われる。(2)は,鉄道による貨物輸送が再評価されている背景を論じる。モーダルシフトに関する標準的な設問。設問B(1)は,名古屋港・横浜港の輸出品目と後背地の特徴(工業)との関係を論じる設問。(2)は,千葉港と苫小牧港の輸入品目と後背地の特徴(工業)との関係を論じる設問。設問C(1)は,高速鉄道路線を題材に,ドイツの主要都市や河川に関する基本的な地名が問われた。(2)は,東海道メガロポリスの形成過程・要因を論じる設問。(3)は,ドイツと日本の都市の機能や階層性の相違について,両国の統治体制の違いから説明することを求める設問。標準的な内容である。

※難易度は,東大特講編集部が考える模範解答に対して,合格レベルであれば5割程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とする。

■合格に向けての対策

○基本知識は大前提。

東京大地理では,応用力や総合力が試されるという印象が強いが,基本知識がその大前提であることはいうまでもない。2009年度の熱帯雨林・タイガの特徴に関する論述問題や本年度のドイツの都市名など,基本知識がストレートに問われることもあり,このような問題での失点は避けなければならない。また,2010年度は新課程の教科書では扱われていない地名(ザンベジ川)を知っていなければ対応できない設問もみられた。よって地理的な基本知識の習得を軽視せず,問題内容に応じて必要な知識を選び出し,それを論理的に組み合わせながら出題者の意図に応えていくという作業が必要である。資料判定などでも役立つので,主な国の人口,面積,経済状態なども常識として知っておきたい。基本知識は資料集レベルで十分だが,地図帳や統計集を併用して理解を深めておきたい。

○資料の扱いは必須。

東京大地理ではほぼ全ての設問が資料を基に作成されている。受験生にとって初見の統計データを用いた表・グラフのほか,さまざまな地理的事象を模式的に示した概念図が用いられることが多い。いずれも単純な「暗記」レベルでの対応を求めているのではなく,「思考」を要求し,本質的な「理解」を問うているといえる。例えば,統計表で「項目A」「項目B」に加えて,「項目A/B」などひとひねりしたデータの分析を求めることも珍しくない。資料の中の「おやっ?」という部分に即座に気がつき,素早く読み取る力が求められる。読み取りの方法に関しては,センター試験の過去問などを利用して考察力を鍛える訓練をするのも手である。

○理由や因果関係を理解する。

東京大地理では,地理的事象の特徴や変化の内容・理由や因果関係など総合的な理解度が試される。ある事項の特徴は,別の事項と対比することによって明確となるという当り前のことを日頃の学習でも意識したい。さらに事象を単に覚えるだけでなく,「なぜそうなっているのか」に気を配り,物事の因果関係を整理して理解するように努めよう。教科書を意識的に読み込めばさまざまな疑問が浮かぶはずであり,資料集などを駆使してその解消を図ることも重要な勉強法である。

○社会問題・情勢に関して普段から関心をもとう。

南北問題,環境問題,市町村合併など現在世の中で話題になっている社会問題や情勢からの設問も少なくなく,2010年度も2009年に続いて水資源に関する出題が行われた。これらは,必ずしも地理の教科書・資料集のみで扱われるテーマではなく,むしろ新聞やテレビのニュース,ドキュメンタリーなどで,より詳細で具体的な解説をされていることも多い。視野を広げておくことが,解答作成にあたって有利になることはいうまでもない。

○過不足ないスマートな解答をつくる訓練をしよう。

東京大地理の論述問題は,ほぼ30字~90字。短いので簡単と思われがちだが,求められる要件をこれだけの字数におさめるのはかえって難しい。何が問われているのかを十分に意識して解答を作成することが必要である。そのため,まず過去問で出題の意図や設問文中のヒントを見抜き,解答となるポイントの洗い出し方やまとめ方を研究しよう。いきなり解答を用紙に書くのではなく,まず必要と思われる要素を書き出すなど絶対に部分点を逃さない訓練を積んでいくとよい。

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