試験時間:(2科目)150分 大問数:4題
東京大では,4大問からなる論述問題が課され,古代,中世,近世,近・現代から1題ずつ出題されるのが通例である。各時代・分野において,教科書の学習に基づいた基本的知識の習得を前提として,時代の特徴や変化を問う傾向が強い。また,歴史的事象について,その内容・背景・原因・結果などを正しく理解していることが求められる。
東京大の論述問題には,資料文,史料,年表,グラフ,絵図などが提示され,その内容を読み取った上で,自分の知識と合わせて論述させる出題が多い。特に,古代や中世の出題にその傾向が強い。問題の要求をふまえ,与えられた素材を,自分の持っている知識を駆使して短時間で読み取り,簡潔かつ的確に論述する力が必要だ。
| テーマ | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 |
|---|---|---|---|---|---|
| 原始・古代 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 中世 |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
| 近世 |
○ |
◎ |
○ |
○ |
○ |
| 近代 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 現代 |
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| 通史(1大問内で3つ以上の時代について問われているもの) |
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| テーマ | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 |
|---|---|---|---|---|---|
| 政治史 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
| 外交史 |
○ |
◎ |
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○ |
○ |
| 社会経済史 |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
| 文化史 |
○ |
○ |
○ |
◎ |
|
※○は1題,◎は2題以上の大問でその時代・分野が問われたことを示す。
2010年度は第4問で欧化主義への反発を政治・文化の両面から説明する出題が見られた。近代の思想・美術に関連する出題は珍しい。しかし,問われていることは教科書に必ず記されている基本的事項であったので,近代の文化について正確な知識を身につけていたかどうかがポイントとなった。
問われているのは,いずれも教科書で必ず勉強してきたであろう基本的なテーマばかりである。しかし,限られた時間と字数で簡潔に,かつ問題の要求を読み取って的確に解答をまとめるのは,例年通りかなり難しかったと思われる。
毎年のことではあるが,基本的知識を前提に資料文を読み取らせ,論述させる出題が見られた。歴史の流れや歴史事象の意義まで含めた基本的知識を持ち合わせていることを前提に,資料文を読み解いて,論述する力が求められた。
| 大問 | 出題時代(テーマ) | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 摂関期の貴族 |
標準 |
資料文の具体的内容を題意に合わせて的確にまとめる力が求められた。摂関期に中下級貴族が上級貴族とどのような関係を結ぶようになったのかについて,背景となる奈良時代からの変化をふまえて論述する問題。10世紀の国司制度の変化は論述問題では頻出のテーマであるが,その理解を前提に資料文を読み取り,問題の要求に合致した解答を作成することが求められている。資料文(1)が奈良時代の貴族のあり方,資料文(2)が10世紀の国司制度の変化,資料文(3)(4)が摂関期の中下級貴族と上級貴族との関係であることをふまえて,解答を構成するうえで必要な要素を考えよう。取り組みやすい問題だが,「中下級貴族と上級貴族との関係」という主題が抽象的なので,的確にまとめるのは見た目ほど易しくなく,点差がつくだろう。 |
| 第2問 | 中世の年貢・商品輸送 |
A標準 Bやや易 Cやや難 |
資料の図表や史料を,自分の知識をもとに読み解いて説明する問題。図表や史料を含む資料をもとに,鎌倉時代から室町時代にかけての年貢・商品輸送のあり方を考察する問題。自分の知識をもとに資料文を読み解いて説明する力が問われている。A資料文(1)の図表をもとに,鎌倉時代の畿内・関東・九州地方における年貢品目の地域的特色を説明する問題。図表の読み取りは容易なので,農業や輸送のあり方をふまえて地域的特色を簡潔に説明すればよい。特に輸送については,「九州は水運を利用し重量のある米を運ぶことができたが,関東からは海上交通が使いづらく遠隔地であるため,陸送でも負荷の低い絹・麻・綿などが中心となった」点についても頭に入れておきたい。(Cの問題を解く上でも,やはり輸送についての観点は大切になるだろう。) B鎌倉時代後期に年貢品目がどのように変化したかを説明する問題。資料文(2)の史料から,年貢の代銭納が行われていることがわかればよい。易しい問題なので落とせない。 C室町時代に資料文(3)に述べられている「大量の商品」が発生した理由を,資料文(1)(2)の内容をふまえて説明する問題。問題の要求を正しく把握できたかどうかがポイントとなる。資料文(1)が年貢の現物納,資料文(2)が年貢の代銭納の史料であるから,なぜ年貢ではなく商品なのか,なぜ大量に需要が発生したのかを答える必要がある。 |
| 第3問 | 近世の鉱山町~院内銀山 |
Aやや難 B標準 |
なじみのないテーマを,自分の知識をもとに考察する力が求められた。院内銀山というなじみのない鉱山町をテーマにした問題。資料文(1)を読んで院内銀山と鉱山町を理解したうえで,近世の社会経済に関する基本的知識をもとに考察する問題である。A資料文(2)に述べられている山師と精錬を行う職人の出身地の特徴を考察する問題。精錬を行う職人は「石見国など中国地方」とあるので,石見銀山などの精錬技術を想起できるだろうが,山師の「畿内,北陸,中国地方」という特徴を考察するのは受験生にとって難しかっただろう。とりわけ,北陸地方出身者が多い理由を想起するのは難しかったと思われるが,江戸時代初期の北陸地方の豪商が鉱山経営によって利益を上げていたことは,2009年度の『東大特講予想問演習/東大文系』日本史の第3問に取り組めば前提となる知識として押さえられており,有利に取り組めただろう。 B鉱山町のような人口の多い都市を領内にもつことが,秋田藩にとってどのような利点があるかを説明する問題。資料文(3)(4)を読んで考えれば,年貢米の売却という利点に気づくのは容易である。17世紀前半,つまり西廻り海運が未整備だった時期であることを意識しつつ,解答をまとめたい。 |
| 第4問 | 欧化主義への反発 |
標準 |
年表の事項を説明する正確な知識力が必要な問題。井上馨の条約改正交渉に伴って進められた政府主導の欧化主義に対する反発について,内容と背景を政治・文化の両面から説明する問題。参考にするよう指示された年表には,民友社と『国民之友』,東京美術学校,三大事件建白運動,政教社と『日本人』の4項目があげられている。ナショナリズムの高揚という背景を述べたうえで,この4項目の内容を具体的に説明すればよい。正確な知識があれば解答できるし,政治・思想上の反発は論述問題ではときどき出されるテーマである。ただし,近代の美術の学習をおろそかにしてきた受験生は,東京美術学校の説明に苦しんだかもしれない。このように東京大における近現代史の問題では,資料の活用が求められる前近代の問題に比べて,ややつっこんだ正確な知識が求められることが多い。 |
※難易度は,合格者の正答率が5割程度だと東大特講編集部が推測したものを「標準」とした。
東京大の入試問題とはいえ,出題される内容は教科書で十分対応できる。論述問題に取り組む前提として,教科書の知識を身につけておくことが必要だ。また,複数の教科書を読み比べて,知識の幅を広げておくと,論述の観点も広がり,東京大の論述対策にも効果的だ。 とりわけ近現代においては,正確な知識を求められることが多いので,重点的に対策しておきたい。
基本的知識を単なる知識ではなく,歴史の中で位置づけ,時代の変化の中でとらえられるようにしておくことが必要だ。東京大の日本史では,大きな時代の特徴・展開などをふまえた歴史的思考力が求められる。教科書に書かれている内容はもちろん,その事象についての,理由や背景となる社会・文化・思想などにも目を向け,東京大の日本史で求められる歴史的思考力を身につけておこう。
東京大の論述問題では,資料文,史料,年表,グラフ,絵図などが提示されることが多い。そこから,解答のポイントを読み取り,自分の持っている知識と合わせて,問題の要求に沿って論述する必要がある。日ごろから論述問題に取り組む際には,教科書などを参考にしながら,問題の要求をふまえて,資料文や史料などに書かれている内容を読み取りながら取り組んで,史・資料読解力を身につけておこう。
東京大の論述問題では,教科書に載っていない知識を求めるのではなく,教科書の知識をベースに,与えられた素材から読み取れる「政治との関連」や「歴史的経緯」をふまえて論述させる,論理的思考力が求められる。特に前近代においては,この傾向が顕著にあらわれている。教科書を精読し,各事象の内容・背景・原因・目的・結果などの理解を心がけよう。論述問題に取り組む際には,条件に合わせて,知識を再構成して論述する訓練をし,論理的思考力を身につけておこう。
東京大の論述問題に慣れるには,東京大の過去問や予想問に取り組むことが必要だ。近年の東京大の論述問題は合計700字程度の解答量を75分(2科目150分)で取り組まなくてはならないので,時間配分にも注意しておきたい。直前期には,過去問はもちろんのこと,『東大特講予想問演習/東大文系』に取り組んでおくことをオススメする。
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