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2010年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期文系国語

■概要

試験時間:150分 大問数:4題

■東京大学の国語(前期文系)で求められる力

○現代文は文章構造を整理しながら論理的に理解する力。

現代文では、第1問においては、現代的な切り口を保有しつつも、普遍的テーマにつながっている評論、第4問においては、筆者独自の表現や主張によって展開される、柔らかめの文章が出題される傾向がある。どちらの文章も文章構造や論展開を丁寧に押さえつつ、具体例などをヒントにしながら、抽象的であったり、一般とは異なる筆者の主張を、かみ砕いて理解する力が求められる。

○古典は語彙・文法句法の知識と、あらすじ把握の基礎力重視。

古文・漢文では、語彙、文法や句法などの知識事項の正確な理解、訳出は必須。また、主語を整理しながらあらすじをとらえる力が求められる。決してマニアックな難問ではないが、ただ単に字面を追って逐語訳できるだけではなく、登場人物の心情や筆者の主張に沿って、文脈を考えながら訳す力が求められる。

○設問意図を見抜き、必要なことを端的にまとめる力。

東京大では、全体的に「どういうことか」「なぜか」という簡潔な形で問う設問が多い。傍線の範囲を手がかりに「どこを掘り下げて説明することが求められているのか」という出題意図を読み取り、その意図に沿った答案をまとめる必要がある。「わかりやすく説明せよ。」という設問指示は、「この設問に対する解答のポイントを明確にして解答に書き表せ」という意味での「わかりやすく」であり、短くすれば良いというものではない。余分な内容をそぎ落とし、必要な骨の部分だけを残す力が求められる。そのためには、短くまとめるための語彙力・表現力も必要。

■最近5年間の出題状況
大問番号 観点 2010 2009 2008 2007 2006
第一問 出典名

『ポスト・プライバシー』
阪本俊生

『白』
原研哉

『反歴史論』
宇野邦一

『読書について』
浅沼圭司

「死と宗教-来世観の歴史性と不変性」
宇都宮輝夫
ジャンル

評論

評論

評論

評論

評論
文字量

2501~3000字

2501~3000字

2501~3000字

3001~3500字

3001~3500字
第二問 出典名

『古今著聞集』

『うつほ物語』

『古本説話集』

『続古事談』

『堤中納言物語』
ジャンル

説話

物語

説話

説話

物語
文字量

801~1000字

801~1000字

約1000字

501~800字

501~800字
第三問 出典名

『玉壺清話』

『梅花無尽蔵』
万里集九

『右台仙館筆記』

『輟耕録』
陶宗儀

『続墨客揮犀』
彭乗
ジャンル

説話

文章(漢詩含む)

説話・小説

文章

文章
文字量

171~180字

141~150字

281~290字

181~190字

141~150字
第四問 出典名

「想像力」
小野十三郎

「山羊小母たちの時間」
馬場あき子

『思想する「からだ」』
竹内敏晴

『手の変幻』
清岡卓行

「学校を糾弾する前に」
宮澤康人
ジャンル

評論

随筆

評論

評論

評論
文字量

約2000字

1501~2000字

2001~2500字

2001~2500字

2001~2500字

■2010 年度入試の特徴

○2010年度入試の特徴

現代文(評論)/古文/漢文/現代文(評論)の4大問構成。文理共通の第1問の現代文は、2009年度に続き比較的読みやすい文章であり、また対立軸が明確で内容も把握しやすかった。第1問の(五)では、例年度どおり100字~120字で記述する設問が出題されたが、設問文に問題文の範囲外の内容の説明が付されており、例年と微妙に変化が見られた。第2問の古文は「説話」「紀行」「物語」のどれかが出題される傾向があり、今年度は「説話」からの出題となった。2009年度、漢文と漢詩の融合問題の形式であった第3問は、2008年度以前のレベルに戻り、展開が明快で読み取りやすい文章が出題された。文系のみの第4問の現代文は、2009年度の随筆からの出題と変わり、詩における想像力のはたらきについて論じた評論が出題された。解答欄は例年通り設問に対して狭く、必要なことを端的に答える力を問う東京大らしいものとなっていた。

■2010年度 大問別出題分析
大問 問題文ジャンル 小問 難易度 内容と求められた力
第一問 評論 問題文

やや易

対立軸を正確に押さえながら、筆者の主張をとらえる力。

南山大教授である阪本俊生氏の著書『ポスト・プライバシー』からの出題。同書の出版年は、2009年で、比較的新しい出版物、かつ現代的な視点を有しつつも、普遍性のある主題の文章が出題されるという点で、例年と同じ傾向であった。ただし、今年度は、2009年度のように筆者の感性や感覚的なニュアンスを読解する必要はなく、今日の情報化社会における個人とプライバシーのあり方という、受験生にとって身近なテーマを扱った文章が出題され、問題文中に“近代のプライバシー”と“現代社会のプライバシー”という対立軸が明確に表れていたため、比較的論展開の整理がしやすかったと思われる。
(一)

設問意図を見極めたうえで、欄内に過不足なく解答をまとめる要約力。

(一)~(四)で「どういうことか」が問われる内容説明問題、または「なぜか」が問われる理由説明問題、(五)で100~120字の記述説明問題、(六)で漢字が出題され、例年通りの出題傾向。今年度は(一)の難易度が高く、読み取り範囲や解答すべき要素の判断にとまどう生徒が多かったと思われる。(三)~(五)は解答要素の重複などがあり、書きわけに苦労することを除けば、標準レベルの設問であった。問題文は比較的読みやすく、傍線部も平易な表現であることから、言わんとすることはイメージしやすかったが、解答をまとめようとすると記述力を要する設問である。
(一)は、傍線部前後の内容だけをもとに記述するのではなく、第一段落から第六段落までで説明されている「内面のプライバシー」の内容を押さえたうえで解答を作成する必要がある。(三)と(四)は読み取りの範囲が重複しており、解答の書きわけが難しいが、(四)を傍線部の前後にある引用部分に着目して解答することで、差別化できる。(五)は、「一〇〇字以上~一二〇字以内」の記述説明問題であることは例年通りだが、今年度は問題文に直接記述がない内容を示したうえで、それを「ふまえて」という形に設問条件が変化していたため、混乱した生徒も多かっただろう。
いずれの設問も東京大特有の狭い解答欄に収めるため、出題意図を正確に把握し、必要な解答要素の説明や因果関係をまとめるための適切な表現を導く、という要約力が必要。
(二)

標準
(三)

標準
(四)

標準
(五)

やや難
(六)

標準
第二問 説話 問題文

やや易

話の設定や登場人物の状況を踏まえ問題文の全体像をとらえる力。

入試頻出作品である鎌倉中期の説話『古今著聞集』からの出題。今回の出題箇所と同内容の問題文(出典は『十訓抄』)が2009年度大阪大(文)でも出題されていた。話のテーマ・展開は明瞭で、人物関係も複雑でないので、あらすじは理解しやすいが、「貧しいために、魚以外口にしない老いた母が食事も取れず弱っていること」や「僧が禁令を破って捕らわれの身であること」「僧は、母が魚を食べたと聞いた後で、どのような処罰でも受けようとしている」といった場面設定や登場人物の状況を丁寧に読み取る必要がある。
(一)エ

標準

問題文の全体像をとらえたうえで各設問で求められる解答要素を的確に補い、解答を簡潔にまとめる力。

現代語訳と説明問題で構成されているのは例年通りである。傍線部は長くなく、難解な表現も少ないため、大意をつかむのはそれほど難しくはない。しかし、各設問の要求に応じるためには、細かい古語・文法事項まで漏らさず解答に盛り込み、さらに傍線部前後の文脈から解答要素として必要な内容を補うことが求められる。
(一)は、主体や人物関係を押さえることや、「力堪へず」「案のうち」「身のいとま/聴りがたく」をいかにこなれた現代語に訳せるかで差がつく。(二)は、傍線部より前の文脈を踏まえて状況を端的に答えることが必要。(三)(五)の現代語訳は、それぞれ「『そのよし』の内容がわかるように」「内容がよくわかるように」という設問の条件を満たすように解答要素を探し出し、限られた解答欄に収まるように表現することが求められる。(四)は、問題文だけでなく、[注]の情報も生かして解答を簡潔に表現することがカギ。また、「僧職であったら殺生は許されない」という仏教に関する古典常識があれば、解答しやすかっただろう。
全体として問われている内容は複雑でないが、その分、古語や文法・敬語の訳出を正確に解答に反映させることが大前提である。そのうえで、必要な解答要素を見抜き適切な語を補い、表現を工夫し簡潔な解答を作るという点で、例年通り力が試される出題である。
(一)オ

標準
(一)カ

やや難
(二)

標準
(三)

標準
(四)

やや易
(五)

やや難
第三問 説話 問題文

やや易

意味を類推する語彙力をもとに場面展開をつかんで、全体内容を把握する力。

問題文は文理共通で、設問は理系が文系より1つ少ないという形式は例年通り。字数は176字で、2009年度より32字増加した。2009年度の漢文と漢詩の融合問題に比べて、文章の筋道を追っていくという点において読みやすく、易化した。例年通り、基本的な語彙の知識や重要な句法の知識は前提として、漢字一字の意味を身近な熟語の知識を利用して類推する能力を試される、東京大らしいオーソドックスな出題であった。
(一)

標準

語彙・句法の知識力、文脈に適した現代語で表現する解答力。

(一)の「惜」、(五)の「道」のように、文章中の漢字の意味を身近な熟語の知識を利用して類推する力が問われたのは例年通り。
また、基本的な句法知識を活用する力は必須。(四)の「もシ」の仮定形は基本中の基本であり、(二)では送り仮名がなくても「~や、否や」の疑問形を見抜く力が求められた。
そして、文脈を踏まえて適切な表現を解答に盛り込むことが求められている。(三)では段がオウムを非常に愛していたことを踏まえて、段がオウムに対して「申し訳なく思った」というところまで踏み込んで書く必要がある。(五)では「憶」を単に「覚えている」と訳すのではなく、4行目の「憶ふ」という表現や傍線部までの文脈を踏まえて「(深く)思っている」と訳すところまで求められている。
さらに、細部の表現にまで気を配った解答作成力によって他の受験生と差がつく。(四)では、段が呉に住んでいた商人であるという注を盛り込んだ解答を作成したい。(五)は、オウムが飼い主である段に思いを伝えている場面なので、「深く思っています」と丁寧な口調にすると、より精緻な解答と言える。
このように、漢文の知識を前提とした現代語の運用能力を試されているという、東京大らしい設問であった。
(二)

標準
(三)

標準
(四)

やや易
(五)

標準
第四問 評論 問題文

標準

修飾句にまどわされず、対比関係を整理し、筆者の考えを読み取る力。

詩における想像力のはたらきについて、作者と読者の関係性を絡めながら論じられている。修飾句が多いため、一読しただけでは、筆者が伝えようとしている核をつかみづらい文章である。読解にあたっては、対比関係を整理しながら修飾句にまどわされす、筆者の想像力に対する考え方を押さえ、全体の論展開をつかむことが必要だ。文学的な表現の意義について論じた文章の出題は、2001・2003年度にもあった。日常の学習で触れる機会が少ない内容ではあるが、東京大の第4問の出題傾向の一つとして十分意識しておく必要がある。
(一)

やや易

問題文全体の内容を踏まえたうえで、各設問に対し解答すべきポイントが何かをつかむ力。

2009年度は、本文全体の内容を踏まえて解答する設問が最後に設定されていたが、今年度は文章の各部分の内容が設問に対応している従来の出題形式に戻った。
(一)で詩人にとっての想像力について、(二)で読者にとっての想像力について整理し、(三)で(一)(二)の要素を踏まえて、想像力が詩を成立させる過程について、(四)で想像力の実体について経験との関係から、解答にまとめることが求められた。
(一)(四)は、解答をまとめるにあたっての参照範囲が狭いため、解答しやすかった。一方、(二)(三)は、ある程度の範囲を参照し、論の展開を丁寧かつ正確に押さえて解答をまとめる設問であり、受験生にとっては、何をどこまで解答に落とし込むのか迷いやすい設問と言える。
いずれの設問も、問題文の論展開を丁寧に追い、筆者の思考・論理から外れないように読み解いたうえで、解答の要素を絞り込んで解答をまとめることができたかが、カギとなった。
(二)

標準
(三)

標準
(四)

やや易

※【問題文】過去5年間の同分野の問題文の中で、平均レベルと東大特講編集部が考えたものを「標準」とする。
※【設問】東大特講編集部が考える模範解答に対して、合格レベルであれば半分程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とする。

■合格に向けての対策

○解答の骨子を見極め、解答欄内にまとめる力の養成を。

東京大では、「どういうことか」「なぜか」という問いに対して、設問の意図を見抜き、解答の骨子を見極め、解答欄内に収まるように端的に答えることが求められる。そういった設問の対策には、文章の要約やセンター試験の設問に記述で答える練習が有効である。ただし、漫然とそれらを解くだけでは効果が低い。設問の意図を考え、書くべき要素を洗い出し、そのうえで解答の構成を考え、推敲しながら書くというステップを踏んで解いていくと、効果が高く、力がつく。内容説明問題、理由説明問題ともに、曖昧な点を残さないように繰り返し「どういうことか」「なぜか」と自己発問することが必要だ。解答を推敲する際は、主-述のねじれ、因果関係のねじれ、文末の処理の仕方などに注意して、日本語としておかしくないかの確認をしよう。

○現代文では、自己発問&構造化で読む訓練を。

現代文では、基本的な力を大前提とした、さらに一歩深い読解力・語彙力の有無が最終的な勝敗を分ける。これらの力を深めるには、優れた評論・随筆/随想に数多く触れる機会を積極的に作り、読書経験値を上げていくことが有益である。そこで重要なのが、文章中に抽象的な語や筆者独特の言い回し、表現が出てくる度に、「これはどういうことか?」と自分の中で問いを立て、考える習慣を身につけること。「概念」や「表象」など、評論に頻出の抽象語を自分の言葉で説明する訓練を重ねることも言葉の意味を考えるうえで効果的だ。これによってその語句や表現を自分のものにし、深く読み取ることができるようになっていく。また、評論を読む際は文章の内容を図式化するなどして、文章構造を整理しながら読み進めよう。

○古典では、大意を読み取る力と徹底的な基礎力の養成を。

古文・漢文では、正確に文脈をつかむ練習をしよう。主語を補い、「誰が」「どうした」のつながりをたどりながら読み進めていくことを習慣づけたい。基礎的なことだが、東京大ではまさにこの力が求められている。基本的な文法・句法事項や古語の知識は重要だが、東京大が求める解答をつくるためには、古文単語や漢文句法を丸暗記するのではなく、問題文の中でどのように使われているかを考えながら覚え、文脈に応じて訳出を工夫できるようにしておくことが重要である。

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