試験時間:150分 大問数:6題
「問題の状況を把握するのに時間がかかる問題」「問題の解釈は比較的容易だがいろいろな解法が考えられる問題」「煩雑な計算にもミスなく対応する確実な計算力を必要とする問題」がすべて出題される。言い換えれば,問題を解釈し,解法を構築し,答案として発信する,そのすべての力を高いレベルで求められるということだ。また,理系においては,数学に関する深い理解と幅広い知識,及び豊富な経験によって培われた代数的処理能力も要求されている。
問題の題材として,空間図形・数列・微積分・数の大小比較・整数・論証・確率などが多く,それらが分野横断的な融合問題として出題される。それに加えて,最近はベクトルや行列も題材として登場する。また,定理・公式の運用だけでなく,その定理・公式の意味をその必要十分性まで踏まえて正しく理解しているかが問われる。
| テーマ | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 |
|---|---|---|---|---|---|
| 方程式・不等式 | |||||
| 2次関数 |
○ |
○ |
|||
| 図形と方程式 |
○ |
◎ |
|||
| 三角比・三角関数 |
○ |
○ |
|||
| 指数関数・対数関数 | |||||
| 極限 |
◎ |
○ |
○ |
||
| 微積分 |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
◎ |
| 場合の数・確率 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 平面図形 | |||||
| 空間図形 |
◎ |
○ |
○ |
||
| 平面ベクトル |
○ |
○ |
|||
| 空間ベクトル |
○ |
||||
| 数列 |
○ |
○ |
◎ |
||
| 行列 |
○ |
○ |
|||
| 2次曲線 | |||||
| 極座標 | |||||
| 論証 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
| 整数問題 |
○ |
○ |
○ |
○ |
※○は1題,◎は2題以上の大問でそのテーマの力が問われたことを示す。(解答で用いられる知識は解法による。ここでは,受験生が試験本番で実際に使えると東大特講編集部が判断した解法をもとに,テーマのカウントを行っている。)
毎年各分野からバランスよく組み合わされた出題になっており,2010年度も微積分,確率,数列,整数問題,ベクトルなど幅広く,深い理解が求められた。ただし,東大の特徴の一つである「論証らしい論証」の出題がなかった。それに対し,直方体,三角形,双曲線の一部,円,四面体など,問題の設定として図形を与えているものが多く,東大が図形の把握力を求めている事が伺える。また,特別なテクニックは必要とせず,本質を理解した上で問題に即して素直に考える力で対応できる問題が集まっている。ここ数年の中では,最も良問がそろったセットであった。
いずれも骨のある問題だが,全く手をつけられないような問題はない。その分,受験生の実力がそのまま得点に跳ね返ってくるはずだ。反面,確実に完答できるという出題も少なかった。入試という限られた時間内なので,自分の実力・得手不得手と冷静に照らし合わせて,ある程度考えて進めなくなったら次の問題,という切り替えをうまくできたかどうかも勝負を分けたであろう。
| 大問 | テーマ | 難易度 | 内容と求められた力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 空間図形 微積分 |
標準 |
立体の体積に関する問題で,多変数関数を処理する高い計算力を求められた。(1)は,3辺の長さがa,b,cの直方体を長さがbの辺を軸に 回転させたときに通過する点全体からできる立体Vの体積を求める問題。(2)は,a+b+c=1という条件のもとに,(1)で求めた立体Vの体積のとりうる値の範囲を考える問題。a+b+c=1から1文字は消去できるが,それでも2変数であるので,どの文字を固定すればよいのかを考えるのがポイントだ。その後,固定していた文字を動かすことによって求める値の範囲を考えていくという定石通りの方法で解いていけばよい。変数の多さや計算の煩雑さからか,(2)を最後まで解き切れた受験生は,意外に少ないようだ。 |
| 第2問 | 微積分 |
やや難 |
定積分の評価に関する問題で,経験に裏打ちされた発見的考察力を求められた。(1)で が と で評価できることを示し,(2)で が , で評価できることを示す問題であった。2009年の第5問や2007年の第6問等,近年の東大頻出のテーマであり,これまでの傾向に沿うものであった。(1)では被積分関数を評価して示すか,定積分を図形的に評価して示すことがポイントとなる。(2)では(1)で示した不等式を上手に利用することがポイントとなるが,(1)の定積分を計算してみれば,何をすればよいか見通せるのではないだろうか。ただし, との評価は問題ないが, との評価で多少の技巧的な処理(※)を必要とする。(1)をこなせるかどうか,(2)の※を超えられるかで差がついた問題。 |
| 第3問 | 場合の数・確率 数列 |
やや難 |
題意を的確に読み取る力とそれを数式化することができる力を求められた。コインの表裏,および箱に入っているボールの個数により次の操作が決まる試行の確率と漸化式の問題。題意を正確にとらえ,ボールの移動の様子をきちんと考える力が要求された。問題文の例になっている
というヒントを,まず実際に体感することが重要である。一方で,問題文の「 に対してうまく を選び」という部分は,あまり見慣れない表現だったので,戸惑ってしまった受験生も多いだろう。(1)では,どちらかの箱に入っているボールが0個になったら,それ以降はボールが動かなくなることや, が15以下と16以上で場合分けすること,さらに, という確率が2回目~ 回目までの 回の試行の確率を表している,ということが考えられたかどうかがポイントだった。(2),(3)については,(1)の結果を利用して,素直に解いていくことができたが,(1)は解けていなくても,(2),(3)のみを解くことも可能であった。 |
| 第4問 | 微積分 |
標準 |
条件の本質を見抜き,素直に解き進めていく力を求められた。曲線 について,(1)では三角形の面積が常に一定であることを示させ,(2)で 上の弧とその両端と原点を結ぶ2線分とで囲まれる部分の面積を求める問題であった。(1)は素直に計算すれば難なく解決できる問題であるが,その結果と意味を(2)で上手に反映させることができたかどうかで内容的にも時間的にも差がついたであろう。(2)では「 , を用いて表せ」とあることから 軸方向の積分で考えることと,(1)を踏まえ図を丁寧に考察することがポイントとなる。曲線 の概形をある程度正確に調べておくことが答案作成上のポイントとなろう。完答できた受験生は多かったようだが,採点基準によっては,「完答できたはずなのにあまり得点できていない」ということが起こるかもしれない。 |
| 第5問 | 三角比・三角関数 整数問題 |
標準 |
幾何的な条件を的確に表現する能力と,整数の性質を使って論理的に答えを求めていく表現力を求められた。円周上を2点P,Qが反時計まわりにそれぞれ速さm,1で動き,点Rは時計回りに速さ2で動くときに,△PQRが直角二等辺三角形になる時間t(0≦t≦2π)と,m(1≦m≦10を満たす整数)の組を求める問題。Q,Rは速さが確定しているので,OQ⊥ORとなる条件からtの候補を絞り,PRは直径の両端となることから整数mを考えればよい。似たような作業を繰り返すので,計算ミスに注意したい。また,OQ⊥ORとなる条件,PRは直径の両端となる条件を立式し,tを消去することによって,mの候補が2通りに絞られ,計算量を減らすことができる。 他方,最初の立式については,ベクトルの内積を用いるなど複数の処理方法が考えられるので,幾何に関する問題は,複数の解答を作成する練習を普段から心がけるとよいだろう。 |
| 第6問 | 空間図形 空間ベクトル |
難 |
等面四面体を題材に空間図形を把握する力が求められた。四面体を平面で切ったときの切り口の面積を求める問題。(1)は,一つの頂点から,対する面を含む平面に下ろした垂線の足を表す位置ベクトルを求める問題。よくある問題なので,正解しておきたい小問であった。 (2)は,線分 に平行な線分 を含み平面 に垂直な平面による四面体の断面積を求める問題。切断面が頂点 を通る前後で断面の形が変化する。東大の切断面や体積を考える問題ではしばしば出題されるパターンである。頂点 を通る前の三角形の面積はさほど難しくはないが,通過後の台形の断面積を求めるのが難題。(3)は(2)で求めた関数の最大値を求める問題。関数は2次関数なので難しくはない。
垂線の足が対する面の外側にあることにより,(2)が考えにくいこともあって,(2)以降に手をつけられた受験生は少ないようだ。 |
※東大特講編集部が考える模範解答に対して,合格レベルの人であれば半分程度の答案を作成できると推測したものを「標準」とする。
分野単独の出題が少ない東大入試においても,基本解法は大切だ。「問題の状況を把握するのに時間がかかる問題」「問題の解釈は比較的容易だがいろいろな解法が考えられる問題」「解法はわかっても計算が大変な問題」などが出題されるが,それらどの問題をとってみても,解答するためには基本解法が根底にある。高3の夏前までにはきちんとマスターしておこう。また,基本解法を身につける際には,「なぜ,その解法を用いるのか」を理解することが大事だ。問題の解釈をして答案を構築していく力を,ここでも身につけることができる。
2010年度も頻出テーマの微積分・整数・確率が出題されている。そこに,伝統的な図形問題の復活の兆しも見えてきた。特に,2010年度は「論証らしい論証」は出題されなかったが,やはり,論理的な答案を書く力は必要だった。東大入試の過去問はもちろん,京大などの微積分・整数・確率や論証,図形問題が頻出である大学の過去問にも取り組んでおくとよい。
とっつきやすい言葉で表現されていて,一見解きやすいように見える問題でも,複雑な場合分けを要求したり,自明と思われるようなことを論理的に表現することを求められたりしている。最後まで問題を解ききってみないと,どこにその問題の山場が来るのかわからない問題が多いのだ。数値計算,微積分の計算の練習という意味もあるが,最後まで解答を書ききるという習慣自体も東大入試数学攻略の対策の1つだ。
東大数学では,解答方針はわかっても答案として発信するのが難しい問題が多くなってきている。答案として発信する力をつけるには,自分の答案を客観視できる力をつける必要がある。といっても最初は難しいので,自分の答案を先生などに添削してもらうとよい。添削を受けているうちに,チェックの観点が身につき,自分でも答案を客観的に見ることができるようになるはずだ。
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