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2010年度
入試速報
東京大学
入試問題の分析と対策

前期文系世界史

■概要

試験時間:(2科目で)150分 大問数:3題

■東京大学の世界史(前期文系)で求められる力

○長文論述では,グローバルな視点で知識を再構築する力が必要。

東大入試では,第1問で600字程度の長文論述が出題され,複数の時代・地域にまたがったテーマが設定される。それゆえ,世界史をグローバルな視点で鳥瞰的にとらえ,事項の因果関係や相互作用を論理的に結び付ながら論述をまとめることが必要となる。その際,8つ程度の指定語句が解法のヒントとなる。問われている要素や条件を問題文から読み取り,世界史の知識をテーマに沿って再構築しながら,論理的に説明していく力が求められる。

○幅広い時代,地域,分野の知識が求められる。

第2問,第3問の小論述・説明問題・記述問題でも,時代や地域をこえて問われるのが東大入試の特徴。求められる知識は教科書や用語集レベルだが,語句をただ説明するのでなく,地域間の接触・交流や異なる地域における歴史的事象の比較などのテーマが与えられていることが多い。いずれの時代,地域についてもまんべんなく知識を習得するとともに,歴史のタテの流れとヨコのつながりを整理しておくことも必要だ。

■最近5年間の出題状況
地域 2010 2009 2008 2007 2006
アジア






ヨーロッパ






アメリカ






アフリカ






オセアニア






地域的総合







■最近5年間の出題状況
分野 2010 2009 2008 2007 2006
政治史






国際関係史






社会経済史






文化史






雑題






※○は1題,◎は2題以上の大問でその地域と分野が問われたことを示す。

■2010年度入試の特徴

○第2問で論述の字数が増加。他科目との調整をふまえ,時間配分が攻略のカギとなった。

論述問題の字数は,第1問が20行(600字)で昨年と変わらなかったが,第2問が全体で12行(360字)から14行(420字)に増加した。また第3問で解答数が6増えて16となったため,昨年よりも解答に時間を要することになった。特に2010年度問題量が増加した地理と世界史を選択していた受験生においては,設問ごとの解答時間の配分が攻略のカギとなった。

○全体的に文化史の比重が高まり,知識の多寡が勝負を分けた。

第1問で長文論述,第2問で2行(60字)~3行(90字)の小論述(単答式1問含む),第3問で単答式の語句記述問題という構成に大きな変化はない。テーマは,第1問がオランダを軸にした中世末から現代までを視野に入れたグローバルな内容であったが,第2問ではアジア,特に中国の出題が3分の2を占めた。第1問の指定語句「グロティウス」も含めて全体的に文化史の出題が大きく増加し,第2問・第3問では半分以上の比率であった。いずれにせよ,教科書レベルの知識を確実に定着させることが重要であろう。

■2010年度 大問別出題分析
大問 出題地域/分野 難易度 内容と求められた力
第1問                 地域的総合                (政治史・国際関係史・社会経済史・文化史)              

標準

オランダおよびオランダ系の人びとの世界史における役割

行数は2009年度の「20行以内」が踏襲され,指定語句は例年の8つに戻った。テーマはオランダを中心とする通史を軸に,オランダと世界各地の関わりを通じてグローバルな視野を要求するものであった。同様の出題傾向としては,イギリスを軸にしたものがあった(2008年度・1996年度)が,中世末からの長期間を射程にしたものではなかった。答案の構成としては,まずオランダの繁栄からヨーロッパ統合までをタテ軸としてとらえる。次にヨコ軸として,17世紀の海外進出の時期と19~20世紀の植民地主義時代(帝国主義時代)の2期に分けて考えるとよい。指定語句には,近世から現代までの長期で,ヨーロッパからアジア・アフリカ・アメリカまでの広範な語句があげられている。個々の事例や内容を,いかに簡潔に要点を押さえて説明できるかがカギとなるであろう。
第2問                (1) アジア               (文化史)               (2)アジア               (文化史)               (3) アジア               (政治史・社会経済史・文化史)              

(1) 標準
                  (2) 標準
                  (3)標準

アジア諸地域における知識・学問や知識人の活動

出題地域はアジアであるが,特に中国史の出題が目立った。第2問全体の行数は昨年より2行(60字)増加して14行(420字)となり,単答式の出題が1問含まれた。文化史が中心で,やや踏みこんだ理解を伴う知識が問われた。例えば,問1(b)の「唐代の復古的な気運」や,問2(b)の「徐光啓の活動」などである。文化史を単純な暗記と割り切って勉強してきた受験生には酷だったかもしれない。今後は,文化史の勉強の際に,その活動や業績の時代背景,政治的・経済的な因果関係などを意識しておくことが必要となる。
第3問                アジア・ヨーロッパ               (政治史・文化史)              

標準

歴史叙述に関わる人物や作品

テーマを反映した文化史に関する出題で,ほとんど人物名が問われた。(9)「チャーチル」や(10)「ネルー」など政治史でなじみ深い政治家も,文化史からのアプローチで問われている。説明問題は1問もなくすべてが単答式で,設問数は10・解答数は16であった。文化史は,人物と作品を単純に暗記するだけのものとして扱われがちである。しかし,リード文にもあるように,「それぞれの時代や人々の生き方と分かち難く結び付いている」ことを意識することが大切だ。平素から政治史や社会史などの学習の中に,文化史の視点を織り交ぜることを心がけたい。文化史についても,ただの暗記学習から一歩踏みこんだ学習が求められている。

※難易度は,合格者の正答率が5割程度だと東大特講編集部が推測したものを「標準」とした。

■合格に向けての対策

○幅広い時代,地域,分野に関する知識を身につける。

どの時代,地域,分野についてもまんべんなく知識を身につけるためには,教科書の熟読が必要。その際,教科書の本文だけでなく脚注や地図,写真などには必ず目を通し,巻頭・巻末や各章のトビラ,コラムまで読み込もう。また,2010年度は出題されなかったが,第3問でよく見られる事項説明型の説明問題に対応するためには,用語集で用語の説明文を確認しておくことも重要だ。

○出来事の流れや因果関係,相互作用を意識して学習する。

東大入試においては,史実の原因・結果や影響が必ず問われる。単にひとつひとつの事項を覚えていくのではなく,常に「なぜ」という視点をもって事項の関連性を意識しながら学習することが必要だ。上記のように教科書を読む際にも,必ず背景や原因から,展開,結果とその影響までを意識しよう。また,論述に欠かせないグローバルな視点を身につけるには,資料集などの地図や年表を活用するとともに,東大の過去問を複数年度にわたって解くことが非常に有効だ。

○文化史・社会経済史にも要注意。

論述,記述問題ともに,政治史だけでなく社会経済史や文化史も重視されている。各時代の政治史の流れを押さえたのちに,社会や経済の特徴をまとめておくと有益だ。また経済史では,「世界商品」と呼ばれる銀,香辛料,茶,綿などが論述のテーマになりやすいので要注意。頻出の文化史では,政治史との関わりや,異なる文化圏相互の関連について問われることが多いので,それらを切り離さず,関連性を意識して学習しよう。

○限られた時間の中で,ポイントを押さえた文章をまとめるトレーニングを。

厳しい制限時間の中で第1問のような論述を仕上げるには,書くべきポイントを見抜いて短時間で文章をまとめていく力が求められる。指定語句から書くべき内容を連想して要素をグルーピングし,情報の取捨選択を行ったうえで,時間を意識しながら文章を構成していくトレーニングを積んでいこう。このような,東京大の論述に対応するためのテクニックは,東大特講『「ベクトル的視点」で攻略する東大世界史』で学ぶことができる。また,東京大だけでなく,同様に論述を課す京都大や一橋大などの過去問にあたることも有効だ。なるべく多くの論述問題を自分で解いて,添削してもらうことが何よりの対策となろう。

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